7.教祖の独白
夏が居なくなった。どうする気なんだ秋は?
夏が戻らなければ、この教団は滅ぶ。
私の替えが無いということは、教祖がいなくなるということだ。
私は小さい頃から勘が鋭く、相手が何を欲しがっているかの察しも良かったから「霊感がある」とか「予知能力がある」とか持て囃された。
その経験を活かして20才で「照回」教団を設立して、その運営に四苦八苦している頃、堂島冬樹と出会った。
あの男は天才詐欺師だった。
いや、確かに第六感みたいなものも持っていた。
あの男に色んな騙しのテクニックや、法律の抜け道を学んだ。
私の名前:照山紅葉も歌にちなんで覚えやすいからと、堂島が付けてくれた。
私の本名は高山ミヤコという。今となってはもう、そちらの方がしっくり来ない。
互いにいつしか男女の関係になり、其の内に秋が産まれた。
堂島は秋が産まれて1〜2年は教団に出入りしていたが、いつしか顔を見せなくなった。
もっと良い儲け先が見つかったのだろう。
男には不自由しなかったし、子宮のガンで子宮も取ってしまったから、子供ももう望んでなかった。
その産まれた子供。
そう、秋はこれからどうするんだ?
秋を産んでからというもの、とんでもない事ばかりが起こる。
私も霊感があるだの何だの言われて、怪異の類には慣れているが、秋は心霊なんてものではない。そんな生やさしいモノではない。
呪力により願いを叶える能力など、人間にあってはならないし、人間の中身である魂を消したり入れ替えたりするなど、人間の枠から外れている。
秋の存在自体が人に非ざる理なのだ。
呪いや神罰が意思を持って動いているもの。それが秋なのだ。
その秋の力による魂の入れ替えで、私は若さを保ってきた。
いや、保っているのではなく、事実、若い体を手に入れている。だから、いつまでも精力的に教団を運営出来ていた。
だが、移植手術と同じでこれにも適合があるのだ。今回の体もそろそろ私を拒絶し始めている。
時折、頭の中で雑音がするし、信者たちと一緒に歌をうたう衝動に駆られる。
何より「最初から」という忌まわしい声が、聞こえて来る。
夏はどこに行ったんだ!
あんなガキ一匹探し出せないなんて!
しかし、夏を探して、夏の友達の春って子を見張ってたら、堂島の孫が見つかるなんて、何て僥倖だろう!
「歌をうたいましょう」
「お山に行きましょう」
うるさい!うるさい!
あの2人は贄にしよう。贄にして新しい信者を迎えよう。
あの2人には悪いが、因果では片付けられない暗く避けられない不幸がある。
あの2人には、この先を生きる事は諦めてもらおう。
「最初から」
ヤメろ!
夏と友達になったこと、堂島の孫と付き合ったこと、この巡り合わせを踏まえても、あの子は贄になるために生きて来たのだ。
そして、あの子が贄となったなら?
それを夏が知ることになったなら?
それはそれでパズルのピースがはまるように、また次の歯車が回りだすだろう。
そして、夏が出て来たら。あの子の中に私を入れよう。




