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6.タマ抜き

人形に魂が宿る。とかあるじゃん?

そう!魂が宿って動いたりするやつ!

いや、そんな呪いの人形を知ってるんじゃなくて「魂が宿るの反対」に「魂が消える」のを見たことがある。


昔、親戚の叔母さんが霊に取り憑かれたとかで、変になったんだよね。

それまでの俺が知っている叔母さんは、明るくて元気な人だったんだけど、取り憑かれてから?は、目つきが変わって、やたら攻撃的な人になって、急に家の中で大暴れしたりで手がつけられなくなっていた。

喋ることも可笑しかった。

「お山でみんなが待ってる」とか「一緒に歌をうたいましょう」とか意味不明だった。

マジでヤバかった。


それで病院に行っても異常は無いし、原因も分からないし。で困ってた所にこれまた親戚の伯母さんが「霊の仕業じゃないか?」って言い出して、もう解決策がない叔父さんは、その伯母さんに「霊的なものだとして、解決出来ないか」相談したらしい。


そしたら伯母さんは、どこかの宗教団体関係者の人を連れてきて、妹である叔母さんの浄霊?除霊?を始めたんだよね。


その人はこの地方で昔、ちょっとしたローカルタレントだった女の人で、霊的な力については公にしていないらしく「内緒にしてね」って愛嬌のある顔で言ってた。


でも、霊を取り除くとなると、集中したいからって、叔母さんと2人で奥の部屋に入っていった。


俺は「キエー!」とか「悪霊退散!」とか大声が聞こえると思ってドキドキしていたけど、特に恐ろしい感じも無く、1時間くらいで2人とも奥の部屋から出て来た。


そしたら、すっかり叔母さんは目つきから大人しくなっていて、その女の人から叔父さんに「もう暴れることありません。しかし、今後はこんなことが起こらないように、私が知っている宗教団体が管理している田んぼの水に、3ヶ月に一度は手を浸して下さい。持って来た水ではなく、必ず現地で手を浸して下さい」と、良く分からない言いつけがされた。

でも、言いつけがあっただけで、お祓い料金みたいなのは1円も取られなかった。


叔父さんはあんなに荒れていた叔母さんが、無料で大人しくなったんで喜んでいたけど、俺からしたらあれは、ただ動くだけの生き人形だと思う。


とにかく笑わない、怒らない、感情がない。何というか喜怒哀楽が無い。

会話は出来るんだけど、こっちが楽しませようとして冗談を言っても、笑わずに聞いているし、思い切って「あれ?面白くなかった?」って聞いてもキョトンと、鳥が首を傾げるみたいで、人間と喋ってる感じがしない。


暴れないし、変な事を言わないし、生きているんだけど、何か違う。

もう俺の知っている叔母さんじゃない感じ。

別の人間が入れ替わったんじゃなく、魂だけが無くなった人間になっている。


人形は元々動かない物だから、それにもし魂が入れば動くのも分かるよ。

でも、人間は元々動くから、魂が抜けたとしても動いてはいるけど、叔母さんみたいに「生きてるだけ」になるんだろう、って納得したんだ。


叔父さんはあの言いつけを2年くらい守っているうちに、その田んぼを管理している宗教団体の教義に共感したとかで、叔母さんと一緒にそこにある信者の家で暮らすようになった。


まあ、叔父さんたちのことだし、ウチに影響が無ければいいって両親も話していたし、どうでも良かった。


それに病気になっても、万が一に死んでも、その宗教団体が全部、責任持って面倒見てくれるらしい。

俺も、ちょっと宗教団体を見る目が変わったけど、自分は入ることはないかな、と思ってる。


あれから毎年、叔父さんから暑中見舞いのハガキが届くんだけど、そこには大自然って感じの一面田んぼの中に畑があって、その畑に囲まれてポツンと可愛らしい家が立っている。

「凄くいい写真だね」って返事を書いたら、

今年もらったハガキには「今度、こっちにおいでよ。一緒に歌をうたおう」って書いてあった。

歌って何だよ、って怖くてゾッとした。


それで先週、叔父さんから電話が掛かって来たんだよね。

近況なんかを話している時、ずっと後ろでクラシック調の童謡が流れていて、遠くで叔母さんが歌っている声が聞こえた。

もう本当に怖かったんで、早く切ろうとしてたら後ろの方から少し大きな声で「最初から」って聞こえた。


あの電話があってから、夜中の2:00くらいになると2階から誰かが降りて来る気配がする。

多分、みんな気づいているけど、言葉にしてない。怖いから。


今朝、両親が「あの女の人に相談しようか」とか話し合っていたけど、ウチもお祓いするのかな。

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