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0.行ったっきり

高校何年の時かは忘れたけど、確か11月くらいの、朝起きるのが面倒になった季節だったと思う。

週初めの嫌な気分も、週末の「今日行けば休み」といった気分もなかったから、火曜や水曜といった週の中ごろの朝。だったような記憶がある。


私の家の朝は、母が一番早く5:30くらいに起きて、朝食やお弁当の支度をしている。

その日は何故か母が起きた時に、私も目が覚めた。

母が階段を降りて1階に行き、キッチンで炊事をしている音が、遠くから微かに聞こえた。外では町全体が目覚めるように、少しずつ車が通る音が多くなっている。


私は普段、6:00に携帯のアラームで起きるので、もう少し寝ていようかと思ったが、トイレに行きたかったこともあり、少し早いけど起きることにした。

いつものように、その日のやる事を思いながら、ゆっくりと背伸びをして体を目覚めさせ、布団を畳み押し入れに片付けた。

1階に降りる前に、6:00に鳴る携帯のアラームを切っておこうと思い、携帯の画面を見たら時刻は2:30だった。


「あれ?」と思い隣を見ると、母は布団で眠っていた。

周囲からはキッチンの音も外の音も無くなっていて、部屋はいつものように深夜の独特な静寂に包まれていた。

よくよく見れば部屋は真っ暗で、朝の薄明かりとは全く異なっており、急に真っ暗な部屋全体が恐ろしいものに思えた。


なぜ、こんなにも真っ暗なのに朝だと思ったのか?

なぜ、今でも隣で眠っている母が起きたと思ったのか?

そして、起きて1階に降りて行ったものは何なのか?


私はトイレに行きたかったが、直ぐに布団を母にくっつけて引き直し布団に潜り込んだ。

もうトイレのために1階に降りるなんて、怖くて出来ない。

しかし、怖いとは思いながらも、隣には母が居り、真夜中の暗闇と静寂に包まれて、いつの間にか眠っていた。


朝、いつものアラームで目が覚めても、母が2階に呼びに来るまで布団にいたと思う。

朝ご飯を食べている時、母から「夜中トイレに降りて行ったよね?」と聞かれた時、やはり何かが起きて1階に降りて行ったんだ、と確信した。

そして、降りて行ったものは1階に行ったっきり、2階に戻って来ていないことも。

もし、あの時、私が降りて行ったなら、2階に戻ってこれただろうか?


私は今でも、あの時、1階に降りて行かなくて良かったと思っている。


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