亡国のはなし
昔ある所に、滅んだ王国があった。その国ではある王子の暗殺をきっかけに王族同士の暗殺が多発した。争いは一族が絶えるまでつづき、それを王子の呪いと怖れた民は次々と去っていき、その国には誰もいなくなった。やがて、そこに国があったことが人々に忘れ去られるには十分な年月が過ぎた。
あるとき、旅人がある廃棄された城に足を踏み入れると、闇の中から凶器を持った人物に襲われた。それは、遥か昔王族に仕えていた暗殺者の一族の末裔であった。その人物は王族の怨念に苛まれ狂気に落ち、その国に足を踏み入れた人を見境なく襲っていた。
旅人は怨念の言葉を読み解きその真意を悟ると、暗殺者に伝えた。その怨念の正体は暗殺された王子ではなく、王子を殺した暗殺者であった。
昔あるところに聡明で心優しき王子がいた。彼は多くの民に愛され慕われていた。そんな彼はある時、ひとりの町娘と恋に落ちた。そして彼は王子としての地位を捨て、彼女と結婚する決意をした。しかし、それに不満を持った王族の一人が彼に暗殺者を差し向け、彼はその命を落とした。
真実を知らない他のものたちは怒り、嘆き、そして疑心暗鬼に陥り、やがて一族で殺し合った。そして一族は衰退し滅ぶこととなった。
怨念はその事件の発端となった王子の暗殺を行った人物であり、暗殺者一族の罪悪感が彼の姿を歪ませ、おぞましい怨念の姿に見せていたのだ。
その人物は呪詛を振り撒いてなどいなかった。王子の暗殺を後悔し、嘆き、ひたすらに謝罪の言葉を吐き続けていたのだ。
真実がわかったとき、もうひとりの霊が姿を現した。それこそが暗殺された王子であった。彼もまた未練により現世に縛られていたのだ。
彼は確かに悲しんでいたが、恨みを抱いてはいなかった。死んだあと、自身の一族が疑心暗鬼の末に互いに暗殺者を差し向けあったことへの悲しみ、そして罪悪感に苛まれ続けている暗殺者への哀れみによってこの世を去ることが出来ずにいた。
王子の霊に許しを与えられると、怨念は人の姿を取り戻し、感涙に咽びながら消えていった。その様子を見届けた王子もまたこの世から消えていった。
二人の消える様子を目の当たりにした暗殺者の末裔は
正気を取り戻し、旅人に感謝を伝えると姿を消した。
そして旅人は次の町に向かうためにその国を出ることにした。
旅人が国を出てふと振り返ったとき、既にそこに国はなく、廃棄された城が静かに佇むのみであった。
という夢を見たのでかきました。




