頂のたかみ
ガラスの透明の器に、荒々しい白と黒の殻。その中にツルツルてかてかのぷりっとした身が乗っている。鈴凛はそれまで食べたことがなかった。
レモンを絞って恐る恐る鼻を近づけると、潮風のような匂いがして、濃厚で、まさに海の味と、濃厚なホワイトソースのようなクリーミーさと甘味が僅かにひろがったことに驚いた。
「おい……しい」
鈴凛はもうそれを十個以上は食べていた。
「こんなに美味しいものがあったなんて」
栄養たっぷりで、みずみずしくて、潮の香りがして……海そのものを味わった気がした。
「牡蠣食べたことなかったの」
「一回やってみたかったんだよな」」
哀が刺身をざっと箸で大量に掴んでから口に放り込んでいた。
「間狸衣ちゃん、食べないの?新鮮だよこれ」
鈴凛たちは拍子抜けするほどの歓待を受けていた。
間狸衣だけは箸が進んでいない。
「なんといいますか食欲が……魚に見張られながら、魚を食べるなんて……」
半魚人のようなものや人魚のようなものが従者だったが彼らは口をきかなかった。
「ああ!蟹でございまする!!」
「みろ!さっきの蟹だ!」
哀が巨大な蟹のあしを握ったまま叫ぶ。
「りいすの仲間さもありなんだな」
「あっしは存在を消して……」
「それに本来の目的はもういいのでしょうか……このような賄賂めいた……」
間狸衣は巨大な海ぶどうみたいなものをかじりながら言った。
「ここにないなら、医務所を襲撃するまでだな」
「諦めてなかった……」
「おいしいのでございまする!どれか青蛾ちゃんにお土産持って帰りたいのでございまする」
「どうなることかと思ったが、やっぱいいひひひひひひじいさまじゃねえか」
「その呼び方なんかやめてくれる?イメージが壊れるって言うか……」
「それにしても不気味なとこよね、展示している生き物をこうやって調理してだすなんて。普通に帰れるなんて思ったら大間違いかもよ」
「う……」
「え……」
「うえ……」
「ん?」
「わたし……お腹が……」
鈴凛はお腹がよじれて、ぎゅるぎゅるいう音がきこえた。
「あたったんじゃないですか」
「それだけ牡蠣たべてりゃね」
「しし新鮮じゃなかったの……」
「新鮮でもあたるときはあたるのよ」
「と……」
「トイレー!!!」
「どこですか?!」
半魚人たちは口をきくことはできなかった。
「んもー!!」
*
やっとみつけたトイレで鈴凛は三十分ちかくも格闘していた。
「はあ……はあ……」
「あれ」
朱色の廊下が複雑に交差していた。
「……どっちからきたっけ?」
鈴凛は見かけたような海藻の中庭を見渡した。
「んー……」
鈴凛はいったりきたりしてようやく迷子になったことに気がついた。
「やばい……」
「さっきの部屋どこ……」
「こっちかな」
鈴凛は竜宮城の中をうろうろと彷徨った。海藻と珊瑚の植物の他にも、庭ごと気泡のドームが包んでいる空気で満たされていた空間もたくさんあった。
「ここは……海藻じゃない」
光がさす丘のような美しい庭だった。真ん中に赤い果実の大きな木が見える。
「林檎……」
見たことのある木々や草花があった。
「とイチヂク……?」
ただそこには不思議な眠った生物たちがいた。巨大な光る芋虫。猫の頭に魚の下半身の浮く猫魚。ツノの生えた紫色のウサギは穴を掘っっている……、羽の生えた馬……に角。
「あれって……ユニコーン?」
「うわあ……」
鈴凛は楽しくなってくる。
足元を何かが這った。
「ひ」
巨大な蛇だった。
「わ、蛇?!」
茶色と緑を混ぜたような色の艶やかな蛇は首をもちあげると、賢そうに、首をななめ後ろ向ける。
「ん……」
くいくいと頭を何度か押して、あっちへ行ってみろと言っているようだった。
その方向には大きなものが聳え立っていた。
赤い塔のような建物だ。
巨大な壁と扉が見える。
「確かに高いところからなら、もとの場所がわかるかも」
近づいてみて、鈴凛はびっくりする。
「え……これはちょっと……大きすぎる」
黄金色の扉は見上げるほどもある。十階だてのビルほどもあった。
「大きいて……この中、何なんだろう」
大きすぎてドアノブがどこかもわからない。表面には龍の模様の細工がびっしりと彫られていた。
「龍……あ、竜宮だからか」
鈴凛がそう言って触れると、複雑な鍵が動く。
「え……」
「開いちゃった……」
中も凄まじく広い。でも何もない。柱がところどころにあって、奥にドラのようなものがみえた。
「あのー……」
声が反響して空間に響く。
さわさわと風が奥から吹いてくる。
「おじゃましてもいいでしょうか……おじゃましますね……」
鈴凛は足を一歩踏み入れると少しふにゃっとしていた。
「え、やわらか……え、鱗……」
足元も壁も一枚が人の顔ほどのサイズの鱗だらけだった。
「ん?!」
鈴凛は足首に何を感じて床をじっとみる。
「透明の羽だ」
鱗の表面に小さな透明の羽がびっしりと生えている。
それが上からの光にキラキラと反射していた。
「光に反応してる……?」
上はところどころに幾何学的な形の穴が空いており、明かりとりの天窓になっているようだった。
「こんなの……どこかで……」
同じような妙に柔らかい床をどこかで見た気がしたが、それがどこか思い出せなかった。
「目がチカチカする……なにこの部屋」
「なにこれ……大きすぎる電気?」
ドラだと思ったものは、円盤のようなオブジェだった。
それも子供用プールくらいのサイズがある。
「なんだろう……」
鈴凛がそういうと、それが動いた。
「ひ……!」
それが一度閉じて開く。蛇のように細い瞳孔を鈴凛は一瞬見た。
瞬いたのだ。
「え……これ……」
それは巨大な目だった。それにしては大きすぎる。
「え……なに……これ……」
「し……」
誰かに口を抑えられる。
「んむ」
「静かに」
聞いたことがある声にどきりとする。
「ケツアルコアトルを起こさないで」
続けて甘い声で囁いた。
「……!」
「照日ノ君−−」
美しい顔がそこで微笑んでいた。
鈴凛は誘惑の爪が胸に入り込むのと同時に、あの陵王の仮面のことを思い出して体が冷えた気がした。
「し……」
「きなさい」
照日ノ君は鈴凛を抱き上げると、天窓から外へでた。
「どうやって龍の間を開けた?」
「え……触ったら勝手に……」
鈴凛は正直に答えたが、照日ノ君は試すように考える表情をした。
「まあいい」
「あの……あれは……さっきのあれは……なんなんです?!」
「竜だよ。ここは竜宮だからね」
照日ノ君がいたずらっぽく笑う。
「え……」
鈴凛は色々頭が混乱する。あんな巨大な生き物が存在している? いやそもそも竜ってことはドラゴンが存在している? いやなんで高天原の竜宮城にそんなものの目玉が—
「高天原はケツアルコアトルの龍体を使って作ってある。だから浮いているんだよ」
「えええ?!」
驚いた反面、色々なことが思い出される。匠所の牛満が下に掘りすぎて怒られている件、根の国でみた脈打つ壁。
「あやうく起こすところだったね」
「あれを起こしたらどうなるんですか」
「たいへんなことになるよ。恐ろしい龍だからね、体が動けば上の街は地震で壊滅するだろうし……」
そんな恐ろしいものの上に街を建設しないでもらいたいと思いながらも、鈴凛はふとあることを思い出した。
「あ……」
鈴凛は布刀玉の占いを思い出した。
この女が高天原を滅ぼす—
「ああ……」
あれは今あやうく成就するところだった。
「でもどうしてそんなものの上に……」
「大丈夫だよ、龍の王は神の王に従うから」
照日ノ君は説明になっていないことを言ってにっこりと笑っていた。
「ここからの眺めは美しいのだ。少し散歩しよう」
「……」
「ここからは竜宮を一望できる」
一番高い龍のいる塔からは、色が溢れる竜宮城が見渡せた。朱色の宮殿には緑を基調とした色とりどりの植物や海藻たちに、カラフルな生き物たち。時折はじける煙々羅の光。やわらかく浮かび上がる泡たち。水と空気が入り混じり、を光を鈍く歪ませたり、反射したりしている。
広くそれを見渡すと、圧倒される美しさがあった。
「あの……」
「おまえもわかっているだろう」
「わたしたちは話をしておかなければならないことが」
照日ノ君に言われて鈴凛は急に陵王の件をまた思い出してどきりとした。
「素戔嗚と君が仲良くするのがあまり気に食わないというのもあるから来たのもあるけどね」
照日ノ君が冗談めかしてふふっと笑って背をむける。
「歩こう」
色々な感情が渦巻く。
背中が何を考えているのかわからない。ふたりの影がすこし離れて伸びていた。
「あ……の……」
鈴凛は言うべきかどうか迷いながら、心はきかれているのだと思っていた。
「!」
「君は見たんだね」
そう言って照日ノ君の背中が立ち止まる。
「!!」
「黄金の目を」
鈴凛はびくりとする。
「……」
突然に怖くなる。
神々は心の声を聞く。
陵王はあなた?
どうして八岐大蛇を
わたしたちは何と戦っている—
色々な混乱が頭を支配した。
「……」
なんでこんなことをするの−−?
もしそれをこの人に聞いたら自分はどうなるのだろう。
いやこの声も漏れ聞こえている。
もうこの時点で−−
「わたしが怖いか?」
美しい頬に闇がさしてどこか妖艶な邪悪さを纏って微笑んでいるように思えた。
突然に照日ノ君が信じられなくなってくる。
「穢レの中でみた陵王の瞳……」
「照日ノ君と同じ極彩色の……」
鈴凛がそこまで言って、何も言えなくなってしまう。
これを言ってしまったら何もかもが変わってしまう気がした。
「わたしの目だった」
照日ノ君の声が珍しく低くなって続きを言った。
美しい目が爛々と輝いて、怖い。
「君はいつも望まずしてなんでも暴いてしまう」
「……!」
「月読がわたしを愛していないことも」
「高天原が龍の上にあることも」
「神々が全然わたしの手に内に収まっていないことも」
「……!」
ゆっくりと近づいて歩いてくる。その手が首元に伸びてくる。
鈴凛はきゅっと目を閉じた。
「知ってはいけないことを」
神々は体ではなく心をも殺す。
神器を持った照日の君は臨めば、心も体も消滅させることができる。
恐ろしい美しさと妖艶さを帯びて近づいてきた。
「知ってしまう」
怖い—
鈴凛の体を恐怖が包む。
「可愛くて、ついいじめたくなってしまう」
「……?」
鈴凛は脱力した。
照日ノ君の柔らかく美しい顔が見下ろしていた。
「四季楼でもおなじ手をくらっただろう。怖がりすぎだ」
笑って鈴凛の頭を撫でた。
「あれはわたしではない」
極彩色の美しい瞳が緩む。
安心して体がから力ぬけた。
「じゃあ……」
でも同時に納得がいかない。
「え……でも……あの穢レの中でみた照日ノ君と同じ目を持つ人、あれは誰なんです?」
「……」
照日ノ君は少し考えて黙る。
「あれは……死んだはずだった」
「死んだはず……?」
あれと言ったことに鈴凛は人ではないのかと思う。
照日ノ君が下を見下ろしていった。
「美しいだろう」
「ここは生命の庭だ」
「生命の庭?」
「みな生命はここから誕生するのだ」
「ここから……?」
鈴凛はその響きについて考えて、はっとして顔をあげる。
「人間も……?」
「そうだよ」
照日ノ君は先ほどの林檎の場所を指し示す。
鈴凛はどきりとした。
ここで、神々によって最初の人間が作られた?
「生命はみなこの海から誕生する」
神々はここで命をつくっている……?
「人間は我々に似せて作られた。特別に愛しい存在だがね」
「……」
鈴凛は照日ノ君にかっこいい美しいなどという感情を抱いたのが急に愚かに思えた。
目の前の存在はあっけらかんと創造主であると言っている。
人間は選ばれた。高天原だけに閉じ込められているものは作られたが、世界に溢れることを許されなかったということか、と思った。
「あれも……そのひとつだった」
照日ノ君は竜宮の生き物たちを愛しそうに流し見た後、表情が厳しくなる。
「あれも、ここで生まれたのだ」
鈴凛はどきりとした。この不思議な動物たちの水の檻。ここで陵王も生まれた。
「だがあれは−−……生まれてはいけないものだった」
照日ノ君は少しだけ考えて、口を開く。
「おまえにだけは、本当のことを話してもいいかもしれない」
「……!」
照日ノ君がそこまで言ってはっとして顔を別の場所にむける。
「……え?」
「あれ〜?来てたの〜?」
声がして振り返る。鈴凛の後ろに思金神が立っていた。
「……」
「ねえ、今の話ってほんと?」
「思金……様」
「思金」
照日ノ君は鬱陶しそうに目を細めた。
「え?邪魔だった? でもここぼくの仕事場だしさ。それより、それって本当?」
思金は鈴凛のすぐ横までくると緑色の目をらんらんとさせていた。
「え……?」
「陵王の中に照日と同じ眼を見たの?」
思金が鈴凛に詰め寄る。鈴凛はぎょっとしてうなづいた。
「は、はい」
「生きてるの、確定じゃん」
俯いてつぶやいた。
「え……?」
「どうやって生きのびたんだろう……、あれは真誌奈からちゃんと櫛名田の要素を引き継いで……活動停止しなかったのか……」
思金は一人でぶつぶつ色々言っていた。
真誌奈??櫛名田の力を引き継ぐ??
鈴凛はどきりとした。
「そっかあ……じゃあ成功だったってことだよね? 成功だったんだよ!」
思金が急に天を仰ぐと、くるくる回り始めた。何かに感動し、目を輝かせて海の上を見上げていた。
「あははは! よかったよかった! ぼくの最高傑作!! ねえ?よかったじゃん?」
思金は妙なテンションで喜んでいたが、照日ノ君はどこか鋭さをもった凍てついた目で虚空を見ていた。その眼は全く喜んでいない。
懸念された現実を重く受け止めているようだった。
そしてそれは生まれてはいけなかったことを物語っていた。
「檻を破り、天井を突き破って逃げたから、そうかもとも思ったんだよね」
「布刀玉に天井を厚く作らないほうが吉って言われてたんだー」
鈴凛ははっとした。真誌奈が『まだかたづけていないのか』と言った檻。
随分前に見た草案の壊れた檻。羊杏が噂で、真誌奈は御霊写の儀にかかわる恐ろしい研究をおこなっていると言っていた。
陵王は、その研究と実験の……産物。
「僕はやっぱり天才だ……」
思金は自分に感動して震えている。
「……それはつまり」
鈴凛はその言葉が何を意味しているかわかった。
陵王。
その何かは思金が作った何か。おそらく照日ノ君の何かと真誌奈の何かから作った。照日ノ君の了承を得ることなく、好奇心で作ってしまった外に出るべきではなかった何かなのだ。
神と人との−−
「……」
鈴凛は漠然としているのにそれがとても恐ろしいことのように感じた。
「じゃあ陵王は……生まれたことを呪って、それで八十神側につくことになったの……」
鈴凛は思わずつぶやいた。
「あれは人ではない」
照日ノ君がはっきりと言った。
人ではない?生まれるべきではなかった。
その響きになぜか心が揺さぶられる。
鈴凛はあの拘式谷の階段で何かを思うように鈴凛をじっとみた陵王の姿を思い出す。
自死を選んで拘式谷にいた自分を陵王は何かを思い、鈴凛に手をださなかった−−。
「よかったぁ……生きてたかあ……そうかあ〜……じゃあ捕まえないとねえ」
「思金……神宮へ戻ろう……」
照日ノ君は気分を害したように、思金に言った。
「ねえよかったじゃない?」
思金は笑っていたが、照日ノ君は冷たい顔をして笑っていなかった。
「嬉しくないの?」
「……」
鈴凛は照日ノ君が怒りを殺しているのだと判った。意図せず自分が複製されて気分がいいわけがない。そしてそれは敵対勢力の八十神側についている。
照日ノ君が不快なのもわかる。
だが−−
あれにも心が無いとは思えない−−。
鈴凛は複雑な心境だった。
「こちらでしたか」
「素戔嗚」
青髪の男が入り口に立っていた。
「また会おう百」
「……」
「もしあれが生きており」
「もしあれがおまえのまわりで動き回っているのならば」
「素戔嗚は他にも重要な件にかかっているが……」
そうだ、閃の件のことがと鈴凛は思った。
「最優先でかたずけなければなるまい」
「……!」
かたずける。それは殺すという意味?
「今日はもうおかえり」
鈴凛は何も言えなくなってしまう。
やめてくださいと言うのが恐ろしかった。
「素戔嗚、百をたのむ」
「あ……」
佳鹿が後ろでひらひらと出口で手を振っていた。
*
竜宮の水天門のまでみんなが待っていた。
「りいすさま、遅かったですね」
「どこいってたんだよ」
「ではわたしはこれで」
素戔嗚は背を向けて帰っていった。
「……」
佳鹿が亀にのって竜宮城から離れてから口を開く。
「ちょっと〜ちょっとお! ハラハラしたわよもお!」
帰りの亀の上で聞く。
「どこから聞いてたの?」
「あんたがトイレでゲーゲー言っているところからよ。あのいかつい扉の中には入れなかったけど」
龍の部屋のことを言っているらしかった。
佳鹿はあんみつを食べ始めた。
「ええ?! そんな前からついてきてたの?!」
「迷子を助けてよ」
「面白そうだからそのままにしといたのよ。それにしてもとんでもないこと知っちゃったわよ」
「半分忌になってでも長生きはするものねえ……」
「何をみたんだ?」
「陵王が何、思金様の作ったやばいもんだったのかもしれないなんて!! それがあんたのまわりをうろついてるの? それが八岐大蛇を復活させちゃったの?」
「じゃあ八十神の仕業じゃなくて、思金のせいってことか?」
「そう……なのかも……」
「あの竜宮城も思金様の生命実験場って感じじゃなかった?」
「人間ってメイドイン竜宮城だったのよ〜 おっどろき〜じゃない?」
「え、そうなんですか」
間狸衣がびっくりしている。
「エデンの園?」
「アダムとイヴよ。蛇とりんごとイチヂクの葉でしょ?もう。常識よ常識」
「とにかく……あそこで思金様がいろんなものを作っちゃってるのね」
「……」
「神々ってほんとやばいわね」
「陵王はじゃあ思金が照日から作ったんだな。あのマッドサイエンティストめ。照日はほんと何やってんだよ……」
哀が呆れて言った。
「なんといいますか……身内に敵が多いというか……問題が多いというか……人間社会とといっしょですね……」
間狸衣が言った。
「それにしても」
「なんであんたのまわりを陵王はうろつくのかしら」
「わたしのことが気になるんじゃないの。照日ノ君の成分が入っているから。わたしの前世、りいすは愛されたらしいし」
「なんか堂々と言われるとムカつくわ。ほんとむかつく。あまたの男に愛されるのはこのあたしでしょ」
佳鹿は真顔で否定した。
「はいはい。でも事実として、雪山ではわたしを助けたし、拘式谷の階段ではわたしを殺さなかった。照日と同じでわたしのことが好きで……」
「てゆうか子安貝がゲットできなかったじゃねえかよ、どうすんだ」
足元が飛び上がって揺れる。
「あんたりいすさんじゃなかったので?!」
「なんだと?!」
今更、亀と蛇がぎょっとしていた。




