表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠(TOWA)  作者: 三雲
不死ノ鬣(現代編)
76/178

天叢雲剣

足からひゅうっと重力がなくなって下にに吸い込まれていく。

「ひゃあああああああ!!」

終わった。

周馬や未来妃にさよならも言えなかった。

敵じゃなく、神々に殺されるなんて……

てゆうか、それどころじゃない。

「あああああああ!!落ちるううううううう!!」

ついに火口がすぐそこに迫った時、体に衝撃があった。

何かが横から衝突した。

「っつ……!

そして先ほどみた火口が凍りついている。

「え?」

体は抱き止められていた。

そして上昇していく。

「!!」

「何者じゃ!!」

上から声がする。

空気がぴんとはりつめた。

やっぱり照日ノ君が来てくれたんだ−−

力強いものが鈴凛を抱き止めている。

鈴凛は期待に顔をあげた。

「な……」

神々はその光り輝く姿をぶるぶると揺らして不快を示していた。

「……てる……」

神々は恐れ慄いていた。でもそれは天照大御神ではなかった。

深く青い瞳がこちらを見下ろす。

「……!」

鈴凛はなぜかちらりと一瞥された時、知るはずもないのに知っている気がした。

電気のようなものがびりびり走った。

怖さと愛しさとなんとも言えない感情が溢れてきそうになる。

「素戔嗚」

天児屋命がその名を言った。

神々がざわざわとした。

背が高く朝黒く日焼けして、たくましい筋肉がついている。艶やかな黒髪を編んだ男だった。


 素戔嗚?


 この人が−−



鈴凛の脳裏に明雅顕証の儀で白月姫と繋がった時にみた、八岐大蛇討伐の英雄が浮かぶ。

かつてこの人が八岐大蛇を倒した。

「……!」

素戔嗚は割れ目から再び高天原の地下空間に降り立った。

「ひい……入ってくるな……」

凛々しい眉毛の下に鋭い眼光が光っていた。

「お、おまえが……なぜ……ここに……」

神々がぎょっとしている。

「証人だ」

哀が空に浮いている。見れば、また妙なスニーカーに天牛の足についてる巻雲をつけていた。

「哀!!」

「証人……だと……?」

「ご先祖様を連れてきたぜ!おわ!バランス、むず」

アイは空中でよたよたした。

「!!?」

「八岐大蛇と戦ったことがあるのは素戔嗚だけだろ」

「みたか」

哀がへへんとして言った。

「おのれ……天雅の娘か……いまいましい」

「素戔嗚!!ひくがいい!」

「天津神に逆らう気か」

「……」

青い目が冷徹に神々を見ていた。

「おぬしに何ができる!」

天児屋命がうなるように言うと、素戔嗚の手が動いた気がした。

「……何が……できる……?」

腰に手をかけると何か長いものを目の前にかがげた。横になった鞘に収まった剣。鈴凛はそれをどこかでみたことがある気がした。

「……!」

「な!」

「なぜそれをおまえが!!?」

「ひいいいいい!」

りんと柄についた鈴が鳴る。

すっと親指ほど鞘から剣城をずらすと、すさまじい光のようなものが飛び出た気がした。

思わず目を閉じる。

ぐわんと思考がなぎ倒される感じがして、何もかもが頭から吹っ飛んだ。

「な……」

ごうごうと音がする。

頭の中が白く、何もない。

「何が……」

「何してたんだっけ?」

赤い視界だった。キラキラと何かが流れている。

気がつくと赤い糸が鈴凛の体を繭のように覆っていた。

「糸ちゃん……?」

それがほぐれて消えていく。

「あれ?」

鈴凛は目の前の光景に息を呑んだ。

空の上にいる。それを見ると記憶が帰ってくる。

「!」

膨大な情報の跳ね返りにどくんと心臓が飛び跳ねた。

「あ……え……?」

「ひいいいいいい!」

神々の光り輝く体がゆらめいて、びりびりと電波が途切れた映像みたいに歪む。

「……?」

彼らは必死にそれを立て直そうとしていた。

「な……なぜ……」

「もう少し開いてもかまいませんが」

「やめろ!!」

「な……なぜ……天野叢雲を……おまえが……」

神々はよろよろとして空でのたうち回って恐れ戦いている。

「やめろ……」

「やめてくれ……」

「不在時にわたしにお預けになったのです」

「ば……」

「あれはいつもは天照大御神が帯刀していたやつか」

哀がへえと言った顔をしている。

神々は恐れ慄いて隠れて姿を消した。

「八岐大蛇の力はこのようなものです」

「……ひいい!」

神々はまた姿を隠した。手力男命ですらも隠れている。

「このお方が」

低い声が響き渡る。

「……」

「八岐大蛇ならば」

「……」

しんと静まり返る。

神々はその白く黒い不思議な光をおそれていた。

「ここにいる必要もありません」

鈴凛の手枷が音もなく破れている。

「!」

緋色金を音もなく切断していた。

「しかし布刀玉の亀の甲にははっきりと出ていた!!」

神々が呆然としいた。

「……」

素戔嗚はそれに応えなかった。

「その女はいつか高天原を滅ぼす!!」

天児屋命が睨んでくる。

「……」

素戔嗚は顔色を変えていない。

「あのお方といい……おまえといい……その女を、あの女たちだと思っているのだ!」

「あの女たち?」

哀がぽかんとする。

急に女の数が複数形になる。鈴凛は混乱した、自分は誰かの生まれ変わりじゃなく、複数人の生まれ変わりなのだろうか?

「無駄口はおやめください。わたしと戦う気があるのならば相手をいたしましょう」

素戔嗚は制するようにそう言った。

「く……!」

「おーおーびびってやがる! びびってやがる」

「占いがなんだってんだ!」

哀が空中でぴょんぴょん飛び跳ねて怒っていた。

「ひひひひひひひいじいさまとやんのかオラ、やってみろ」

哀は後ろ盾を得て調子に乗っていた。

「所詮我々には……あのお方を止めることはできない」

はじめに手力男命が重苦しそう言って背を向けた。

「いきましょうこやね……」

布刀玉がほっとしたような顔をしてくるりと背を向ける。

「なんと愚かな……」

「……」

天鈿女命も美しすぎるその顔を真顔に保ったまま去っていく。


     *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ