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永遠(TOWA)  作者: 三雲
不死ノ鬣(現代編)
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捜索


「いない……」

未来妃を探す。スノーボードの方が手が自由なため、スノーボードで鈴凛は捜索していた。暗くなった雪原で夜目があまり聞かない。

「どこにもいない」

携帯電話を見ると、圏外だった。

冷たい雪の世界が広がって、凄まじい風の音をたてていた。

ごおごおひゅうひゅうと不気味に唸っている。

「お願い……」

その音を聞くと、なぜかふと自分があの橋から飛び降りようとしていた時に聞いた、冬の風と同じ気がした。

必死に悪い予感を振り払う。

「哀がみつけてくれたかな」

鈴凛は祈るような気持ちだった。別れてからしばらく経つ。どうか反対側のゲレンデでみつかっていて−−。

哀が未来妃を助けて暖かい毛布に包んで、ホテルへ連れて行くところを必死に想像する。

「どうか……未来妃、無事でいて……」

なんでこんなことになったのだろう。

凍てついた風が頬をどこまでも冷やしている。

心配と恐怖に混ざって、そんな冷静な自分もいた。

未来妃と最後に一緒にいた外国人って?

また忌のせい?

それとも……八十神?

いやもしかして……柊木勇吾が……?

それか……ただ未来妃が滑落したとか、事故ってこともありうる。

「絶対に助けなきゃ」

こんな時に戦姫の自分が助けられないなんて馬鹿げている気がした。

「!」

懐中電灯が何かをとらえたような気がして、鈴凛は必死に遠くを照らす。

「?」

金色の小さい灯りとともに何かが見えた。鈴凛は慌てて追いかける。

心臓がびくりとする。

「え……?!」

遠くの斜面でこちらを見据える化け物の仮面。

「!!」

スノーボードの板を履いた見たことのある着物の背中が身を翻す。

「え……!」

そんなはなずないと思いながら追いかける。

「陵王−−」

鈴凛は必死に追いかける。

「待て!」

スノボで雪の斜面を陵王を追いかける。

「待って」

くねくねと雪飛沫をあげながら、滑走していく。

「あ!」

突如闇が目の前に広がって、白が突然に消える。

「く!!!」

鈴凛は慌ててブレーキをかけた。

断崖だった。

はあはあと息を整える。落ちたら戦闘不能になっていただろうと思う。

「嘘でしょ……」

覗き込むと、落ちた音もしないし、姿も見えない。

「翼……?!」

はるか下を見たこともないほどの大きな翼が広がって、舞い上がる。

「あ!!」

化け物はこちらを一瞥すると、雪の嵐に消えた。

「なんで……陵王がここに……」

相手に戦おうという意志はないらしい。それでもなぜか嫌な予感がした。

思わず見上げる。灰色の空に、金色の羽が広がっている。一枚一枚が輝いて七色の光を放っているようにみえた。その美しさに目が釘付けになる。白銀の夜闇に六枚の羽が登っていった。

「六枚の翼……」

あれはまるで……

色々なことが思い浮かんだが、鈴凛は気を取り直す。

とにかくはやく未来妃を探さなければ−−

やはり、未来妃は何かに巻き込まれたのかもしれない。

「!!」

見惚れすぎて後ろの気配に気がつかなかった。

「!」

後ろから誰かに勢いよくぶん殴られて、鈴凛は気絶した。


     *


がたがたと揺れている。

体が重い。感覚が無い。吹雪いている。そしてライトの灯り、車のような機械音。

鈴凛は重たい瞼を開けた。

「……?」

眩しい。夜の雪原に騒々しい灯りが見える。

スーモービルの隊列が5台ほど続いていた。何か縦型の棺のようなものが運ばれていた。

「助かった……?」

見慣れた黒い顔が笑っていた。

「BB……?助かったのね、ありがとう……」

未来妃の顔も前の席にみえた。ぐったりと気絶して寝かせられている。

「未来妃……?」

「大丈夫。気を失っているだけだよ」

喜びと安堵が体に満ちて暖かくなる。

「よかった……」

鈴凛は体を起こそうとして全く動かないことに気がついた。

「?」

首から下が妙な機械に入れられて、湯気を上げていた。首から下の体が縦型の水槽のようなものに入れられて、氷づけになっている。

「あれからそんなに時間が経って……わたし水に落ちて凍ったの?」

なんで凍っているのか—そんなに外に置き去りになっていたのだろうか……

「ドライアイスだよ」

「ドライアイス?」

「急速冷凍したんだ。動けないよ」

「なん……」

鈴凛は混乱しながらも、嫌な予感がする。

BBは拘束を解いてくれない。

「こうでもしないと連れて行けないからね」

「なにを……」

「なにしろ君は戦姫で僕は人間だから、力では敵うはずないし、わけのわからない赤い糸も使うし」

「ボク考えたんだよ。安全に君を拘束した状況で静かにこっそり運ぶにはどうすればいいか」

「!」

「燃やし切ることも考えた。東京みたいにね。焼却炉とかに入れた後、灰を密閉容器に入れて運ぼうかなあとか。でもあの時の再生はかなり怪しかった蘇生が不確かだし、万が一死んだら困るなあとか。そもそも人が燃えるには何時間もかかるしそんな火元がないしなあとか。拘式みたいに脳みそだけマシンガンで粉々にして運ぼうかなあとか。でも色々忘れられても困るなあとか」

「……どういうこと」

「でもさ六本木のビルから落ちた時は細胞が寄せ集まっていたってきいてピンときたわけ」

「氷漬けにすれば、体はバラバラになっていないから錯覚して君を活動停止にできるんじゃないかとおもったわけだよ」

「そしたらちょうど修学旅行の話がでて、天は僕の味方だよね」

「いやーそれにしてもすごい雪。忌ってすごいよね」

「え……?なにこれ……?どういうこと?」

「見ればわかるでしょ? きみたちを拉致してるYO」

「は?……なんで……?」

「僕はとんでもないことに気がついたんだYO」

「……とんでもないこと?」

「もし成功すれば全てが変わるだろう」

「え?」

「大きな家が建つどころか、僕が世界の支配者になれるかもしれない」

BBは真顔で雪山を見つめた。

「神々もひれふさなければいけないほどね……」

「何言ってるの……?」

鈴凛は信じられなかった。

「佳鹿様はボクを絶対許さないだろうけどね……」

「?!」

裏切り—

鈴凛のあたまにその言葉が浮かぶ。

陵王と繋がっていた?

いつから?なんで?どうして?

そのために未来妃を?

気を失ったままのスキーウエアの未来妃が見えた。

「未来妃は解放して。未来妃は関係ないでしょ?」

「関係あるね。君たちをセットで連れていく。君が戦姫を引き受けたのは彼女を守るためだ。それほど大切なんだ、離れたくないだろう?ん? 今後も君とは穏便にしたいしわけだし彼女には役にたってもらわないと」

未来妃は人質というわけらしかった。

「連れていくってどこ−−」

「アメリカ」

「アメリカ?! は……な……なんで?」

「ど、どういうこと?」

怒りが込み上げてくる。

「いいとこだよ」

「は……?!!」

急な話に頭が混乱する。

「あのマリオって人の差金なの?」

「ふたりでのんびりするといい」

「そんなのちゃんと高天原を通さないと、だいたい未来妃はこんなこと理解できないし」

「……!」

BBは笑っていた。

見たことのない隊員たち。鈴凛は後ろから運ばれる箱をよく見た。

人間が入れられている。それは眠ったような人間の入れられた棺だった。

「あれは……何……?」

鈴凛は急に冷静になる。

一番後ろの棺だけが、妙な輝きを放って鈴凛はそれを見ると不穏な気持ちになった。

「トーチ。人間に悪夢をみせる箱さ」

「BB……八十神と……繋がっていたの……?」

「そのへんのことは向こうに着いてから話そう」

「話せばわかってくれるよ」

「なに……言ってるの?」

BBがいつものように、にぱっと笑った。

「大佐、近づいてます」

横の隊員が声をあげた。

「まずいね」

「トーチ、解放することも考えておかないとね」

「了解」

モービルからひとつのトーチと呼ばれたものが落とされていく。トーチと呼ばれた人の入った箱は杭のように雪原で立ってぶんぶんと妙な電子音をたてて赤い光を放っていた

−−投棄完了

「あれは……何なの?」

「忌が入った箱。卵みたいなもんかな」

「たま……ご?」

「この雪を強くしているのは、あの第一トーチだよ。吹雪の忌」

鈴凛は猫姫の言葉を思い出した。

「ロシアの境で……猫姫が討伐した忌……」

「ピンポーン大正解」

「いろいろな忌の卵ちゃんたちなんだよ」

最後の棺が持ち上げられて、落とされようとした時。顔が見えた。

「あの少女は……」

鈴凛は半信半疑で言った。

それは、みたことのある顔。でもずいぶん幼い。

「どうして……ココ??」

「よくわかったね。あの子が死んだ時、走馬灯をみたのかな」

「なんでココが……」

「クローンだよ」

BBはにこにことしていた。

「クローン−−」

鈴凛はその響きにぞっとした。

その意味は鈴凛でも知っている。だが現実に人間のクローンが存在するなんて聞いたことがない。

「巨大化して空中から攻撃できる飛翔型や浮遊型は珍しいんだ」

「なんでココが……」

「同じ人間に、同じ種類の人生や悪夢をみせたら、同じように心を病んで忌になるそういう技術さ」

BBはさらりとトーチを眺めて言った。鈴凛は鳥肌がたった。

「でもね彼らはクローンだからまだ一度も生まれていない。いうなれば生きると言うことがどういうことかわかってない。体も脆弱。その状態で怪花させると、脆弱な忌……つまり管理可能な忌になる」

「なにを言っているの?」

「人間が知識と技術で忌を収めつつあると言うことさ」

「あの機械は……あの子に……同じ苦しみを−−?」

鈴凛は体が震えた。怒りと恐怖となにもかもがぐちゃぐちゃになるのを感じた。

「そうだよ」

ココが−−

生きている時もあんなに辛かったココが−−

「まあクローンが本当に完全にかつてと同じ人物なのかは諸説あるけどね。同じ忌になるからまあだいたいは同じなんでしょ」

体中の力が抜けて、頭がガンガンとして重くなり、鈴凛は何も言えなくなった。

「トーチが記憶の情報と悪夢を見せているんだよ。もう新しい時代はすぐそこさ。昔、狼を恐れていた人間が火や銃を手にしたように、細菌類やウイルスが薬に使われてきたように、忌も使われる技術になる」

「考えてもみなよ?物理原則に逆らって大きくなったり、妙な空間を出せたり、すぱっとなんでも切れたりしたら便利だと思うでしょ?」

「なんで……」

体から力が抜ける。いつかココのはじめての話を聞いた時みたいだった。人間の許せない部分が腐った果実の割れ目から剥き出しになっているみたいな、吐き気がする。

「なんでそんなひどいことができるの」

「なんで?」

「……」

「火や核と同じだよ」

「知識や技術を手にした時」

「人間はもう引き返せないのさ、絶対にね」

そんなことが聞きたいんじゃない−−。

「なんでこんなひどいことできるのかって聞いてるの!」

「僕がしなくても他の人がいつか使うよ」

BBが返事をしたことは鈴凛の問いになっていなかった。鈴凛にもわからない。

なんで?倫理?理性?良心?人間のそういうものはどこに行ったのだろう。

これを作った人は何も考えなかったのだろうか。

その問いにはあらゆる怒りと疑問と悲しみがこもっていた。

人間はどこまで真っ黒になれるのだろう。赤い糸が鈴凛の怒りに刺激されたのか、激しくゆらめていてる。

−−おそらくもうすぐ後ろです

「スタンバイしますか」

「ああ」

「なるべく使いたくはないけど、穏便に逃げるのは難しいだろうから。これ使うと気持ちが暗くなるんだよね……」

色々な怒りと憎しみが溢れてくる。

「でも仕方ないね。これなしで乗り切るのは無理だよ。彼らは優秀だから、それに……彼がいるしね」

「BBなんで?」

「言っただろう。お金がすべてなんだ」

いつものひょうきんな顔がそこにある。

「チャンスは死に物狂いで掴め。僕日本語超うまくない?」

「……?」

「君はとても高く売れるか、凄まじい切り札になる」

「……?なんで……?娘さんでも人質にとられてるの?」

「いいや、彼女はカリフォルニアでのびのび暮らしているよ」

「大佐」

運転席の軍人がBBに言った。

「きました追っ手です」

「あちゃー。思ったより早いね。まだ迎えがくるまで時間かかりそうだよね?」

「はい」

「来ちゃったか……」

BBの額に汗が浮く。

「やっぱ使うしかないか」

「五体の同時起動ははじめてだけど、いっちゃうか」

「起動するよ」

−−フェイススタンバイ、トーチスタンバイ

−−接続完了



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