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永遠(TOWA)  作者: 三雲
不死ノ鬣(現代編)
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焼肉バイキング

−−いやーうまくいってよかったよな

−−白雪姫がおきちゃうとこ意外とうけたな

2―Bは文化祭が終わって、焼肉バイキングの店に打ち上げに来ていた。

「見ろよ。寿司も肉もアイスもあるぜ」

アイが皿に寿司を山盛りにして戻ってきた。

「バイキングって最高」

−−白雪姫は大成功だったね

−−周馬くんのおかげだよ

「あんたは本当に何でもできるわよね」

未来妃がため息をつきながら言った。

「演技はうまいほう」

周馬がにやっとして笑う。

「で、なんで本当にキスしたんだよ」

哀がニヤニヤして周馬にきいた。

「……ねえ……勝手にシナリオまで変えちゃって」

未来妃がにやっとして笑う。

「いいなあわたしも唇を奪われたい……拘式先生に……」

周馬はニヤッとして笑っただけで焼肉を焼いていた。

「おまえは本気なのか」

坂本が急に箸を置いて、非難するかのような目で周馬を見る。

みんなのトングや箸を動かす手が止まった。

「え……ここでそんな……重要なこと詰めるの……」

未来妃が緊張した表情をした。肉が焦げ始める。

周馬だけがそれをスルーして焼いた肉を食べていた。

「本気なのかと聞いている」

珍しく二人の間に不穏な空気が流れている。

「飛鳥……どうしたの急に?」

「本気」

周馬は挑戦的な目で飛鳥を見返した。

「へ……?」

鈴凛は嬉しくて高揚する。思わず寿司を落としてしまった。

べちゃっと、焼き肉のタレが吹っ飛んであたりに黒い染みが飛んだ。

「きたねえ!」

哀が怒る。

「それ打ち上げで、きくことかよ」

熊野も思わずつっこみを入れた。

「お〜お〜、ちゃんと告白しろよ色男」

哀が冷やかすように言った。

「やめなよ」

「このガヤの中で?」

「タレにまみれてるのに?」

「あたしらが証人だぜ」

「今からこの焼肉のタレだらけのダサ女に周馬が告白しまーす!!」

アイが大声をあげた。

「やめて〜……!!」

鈴凛が必死に止める。

哀が大きな声を出すと、他の席のクラスメイトたちが固まった。

「……!」

周馬はいついなく真面目な顔をして鈴凛を見た。

「へ」

箸を置く。

鈴凛は心臓が止まりそうになる。

「鈴凛」

「あ……はい」

緊張で体がこわばった。

「好き。つきあおう」

鈴凛の体の全身の細胞がざわめきたった。

とてつもない衝撃が体をビリビリと走る。

向けられたことのない強い意志が身を貫いたみたいだった。

「……は……はひ……」

信じられない。

あの如月周馬がドブネズミに告白している。

鈴凛はこれは夢かと思った。

「……」

周馬がそんなちゃんとしたことを言うと思っていなかった。

−−おお〜!!

他の席からもどっと拍手が沸き起こる。

「みんな……」

−−わかってたよ二人がいい感じなことくらいはさ

−−柊木くんと野奈ちゃんたちに負けないなんて鈴凛ちゃんすごいよ

−−鈴凛ちゃんなら納得だよ

−−可愛いだけの野奈ちゃんとは違うし

−−なんてゆうか下剋上の夢があるっていうか

−−うん推せる〜

「みんな……みんな……」

鈴凛はここまできたことが感慨深かった。周馬と付き合えることも、クラスの人たちに祝福されることも想像したこともなかった。

「鈴凛……結婚……おめでとう……」

未来妃が感極まってグラスをかかげる。

「いやまだ結婚はしてない」

「ねえもらった髪留めみせて」

未来妃がうっとりとして鈴凛の方を見た。

「これが鈴凛と周馬の婚約指輪かあ……」

「だから違うって!」

「二人にカンパーイ!!イエイーイ!」

♪ちゃーちゃちゃちゃーん! ちゃーちゃーちゃちゃーん!

哀が宴会隊長のようにグラスをかかげる。結婚式の入場曲のようなものを歌い始める。

「お幸せに」

鈴凛は何もかもが信じられなかった。周馬に告白されたことも、クラスのみんなに祝福されたことも。

これは夢かもしれない。

思わず頬をつねってみる。

「痛い……」

「……綺麗だった」

今まで黙っていた熊野が急にぽつりと言った。

「え?」

鈴凛は恥ずかしくなってもじもじとする。

「なによ、熊野も鈴凛に惚れたの?今?このタイミング?」

未来妃がびっくりして言った。

「確かに鈴凛はほんっとうにキラキラしててーー」

「それ……」

熊野が太い指で髪留めを指差した。

「え、そっち?」

「み……見せてくれないか」

熊野が緊張した面持ちで身を乗り出す。

「すげえ……」

髭面の熊野が髪留めを雛鳥みたいに両手で抱えてみつめていた。

「周馬これどこで買ったの?」

「高そう」

「秘密」

「いろんな色が複雑に……」

熊野は魅入っている。

「熊野……髪飾りなんて……あんたそんな趣味あったの?」

「このガラスだよ!おまえら……このすごさがわからないのか」

「はい??」


        *


「熊野、髪留め写真とりまくってたな」

「そうだね」

「意外なことが起こるもんだよな」

「……え?」

「あいつのあんな顔はじめてみた。なんか大事な瞬間を見たかも」

「恋ならぬ……夢に落ちる瞬間?」

「なるほど……」

鈴凛の家が見えてきた。

「ここだから」

「ああ、じゃあな」

「じゃあまた明日、学校で……」

「わたし付き合っちゃったんだ……」

いまだに信じられなかった。

「彼氏に家まで送ってもらったんだ……」

鈴凛は周馬に手をふりながら、呪文のようにつぶやいた。

「学校でどんなふうにしてたらいいんだろ……周馬の誕生日……わたし何しよ……クリスマスとか何しよう……まって。付き合ってたら、もしかしてその先もわりとすぐにあるかも。もうキス2回しちゃったし……」

鈴凛は一人で赤くなる。

「……だ……脱毛しなきゃ……」

鈴凛はワクワクが止まらなかった。世界で一番幸せだと叫べそうだった。

「あの人……」

「咲……」

咲が玄関の門の中で固まっていた。

「みてたの」

そう言ったものの、鈴凛は気持ちがよかった。

咲は衝撃に満ちた顔をしていた。

今まで散々馬鹿にしていた姉に彼氏ができたのだ。

「みられると思ってなかった」

鈴凛はすまし顔でそう言ってやった。

「……!」

咲は何も言えないでいる。

姉にかっこいい彼氏ができたことが受け入れられないらしかった。

「なんで……」

ようやくそう言った。

「今日から付き合うことになったの」

鈴凛はすまし顔で家に入り、納戸にあがろうとすると、咲がいつになく必死になって掴んだ。

真っ赤になっている。

「あの人誰なの!……なんで……あんたなんか……」

さすがの咲もかっこよくない、不細工だと周馬を罵ることができないようだった。

「咲には関係ないでしょ」

鈴凛は振り解いて、納戸にこもった。

心底気持ちのいい日だった。

祖母の藍染の鈴を見上げる。

「おばあちゃん……わたしやったよ……」

「おばあちゃんが言ってたこと、本当だった。生きてたら、いいことあるね……」

「わたしやったよ……」

見返すということはこれほど気持ちいいことなのか。鈴凛はよくわからない達成感に包まれていた。



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