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永遠(TOWA)  作者: 三雲
不死ノ鬣(現代編)
33/178

投げる(改)

「はあ……」

ぴたぴたのスカートスーツを着た住田が英文字をさらさらと書いている。5月になり晴れて空気がすき通り、窓の外はいい天気だった。

二、三日もすれば明も穢レも抜けたのか、鈴凛は普通の考え方に戻っていた。

「わたしなんであんなことになってんだろう……」

人間の気持ちというのは簡単に変わってしまう。あの時は月読姫以外はどうでもいいと本気で思っていた。

「あれ以上のものなんてないのに……」

世界の中心は如月周馬に戻っていた。

英語の授業中、斜め前の如月周馬をじっくりと眺める。

金髪なのに髪がサラサラで、白い耳の形まで美しく、姿勢がいい。うなじがぞくりとするほど妖艶だった。

胸がきゅっとなる。苦しい。その存在を感じていたい。

こんな気持ちにさせるのはあの後ろ姿だけだった。

「なんてことしちゃったんだろ……」

鈴凛は月読姫を突き放してしまったことを今更とても後悔する。

赤い糸で繋がった時、あの時は月読姫が全てで、月読姫が高天原や戦姫や照日ノ君以外を考えるなんて許せないと本気で思っていた。

「好きなものは、しょうがいないのに」

今の鈴凛と全く同じ気持ちを感じたのだ。いやそれ以上の……今の気持ちを煮詰めたような。強い憧れと、焦燥と切望と−−。

月読姫はただ、死にたいんじゃない。

八雲に殺されたいという気持ちを隠している。

あの猿田彦の絵が二人ならば、愛し合う二人は決裂するしかなかった。

なぜだろう?

鈴凛は考えてみる。

八十神は人間の滅亡を望んでいる。八雲が人間を滅ぼすことを選んだからだろうか。

愛し合う運命が、突如として殺し合う運命になる−−

鈴凛はじっとその後ろ姿をみつめながら考えてみる。

周馬に殺されるところを想像してみる。怒ったような表情の周馬にナイフをぐっさりと刺される。全く怒りを感じなかった。まあそれも悪くない気がする。

そこまで考えて何かおかしいことを思い出す。

「……わたし、死ねないんだった」

そのせいか、ピンとこない。

バスケットに夢中な如月周馬がそんなことを、鈴凛のためにしてくれるとも思えなかった。

「うーん……」

シャーペンをくるくる回す。

月読姫がもし八雲の側についてしまったらどうなるのだろう?縁血は行われなくなり戦姫は誕生しなくなる。明雅顕証の儀もなくなり、戦姫たちの力が弱くなる?

そしたら。この戦争に高天原側が負けて……負けたらどうなるのだろう?

地球は忌だらけのパンデミックになる?

人間はむこうの神々の奴隷になる?

戦姫は処刑される?

そしてまた自分だけは死ねないことを思い出す。

重する気持ちになって、鈴凛は胃が痛くなる。

「考えるの……やめよう」

自分が今考えても、できることは何もない気がした。

赤い糸がゆらゆらと漂っている。そうだね、といわんばかりにうなづいていた。

「……ん、まてよ?」

如月周馬の後ろ姿と交互に見やる。

鈴凛は別のことにはっとして気がついた。

あの時、この糸が月読姫の心と過去を見せた。

この赤い糸を伸ばせば、あの時みたいに、もしかして、心や過去が見れるのでは?

「!」

急に短絡的なワクワクが胸に溢れてくる。

だとすれば、何が好きとか、どんなこと考えているとか……誰が好きとかも判る。

鈴凛はわなわなと両手を見る。

知りたい……。知りたい、知りたい、知りたい。

わくわくとした気持ちと怖いという気持ちもある。

誰が好きかも、好きな食べ物も、どんな趣味かも、もし透視できたら?

ごくりと生唾を飲む。自分が陰湿でストーカーじみていると思う。

これが携帯電話を盗み見るような、悪いことも。

「待って」

もし別の人が好きだったら?それが野奈だったら?

−−未来妃だったら?

怖い。

影姫の言葉が蘇る。黄泉の力を乱用するんじゃない。

でも—

欲望のほうが優っていた。

「……」

鈴凛は意志を赤い糸に込めてみる。

うごけ うごけ うごけ うごけ

しゃきっとしろ しゃきっとしろ のびろ のびろ

「……いけ」

思いっきり投げる感じで腕を伸ばせばいけるかもしれない。

鈴凛は狙いを定める。投げて伸ばしたことなどなかったが、やってみる価値はあった。

「おいなんか独り言もれてるぞ」

「へ?!」

隣の熊野が焦った声で言った時、頭に何かあたる。

「いた!」

自分の後ろ頭に何かぶつけられた。ぞうきんだった。

「……」

鈴凛は後ろを振り返ると、柊木軍団がにやにやして、小豚塚が申し訳なさそうにしている。

現実に引き戻される。自分が常に標的だったことを思い出す。

如月周馬を狙っている場合ではない。

いつも狙われているのは自分だ。

「いた……なにす……」

「わ」

その時しゅっと音がして空気が切れる音がした。

「なんだ」

小豚塚の頬がつうと切れた。彫刻刀が教卓に刺さっている。

「え……」

「うわあああああ!」

小豚塚が悲鳴をあげる。

「誰だ、こんなことしたやつ!」

柊木勇吾がどなり声をあげる。裏切り者が出たことで柊木勇吾は後方の席の生徒を順番に睨め付ける。

鈴凛は矢田いつ子の方をみた。一番うしろの席で何食わぬ顔で『え何が起こったの?』みたいな顔で一緒に驚いている。

ざわざわと教室がざわついて、住田の顔が凍りついている。

「源さん、ちょっときなさい」

「は?わたしじゃないです」

鈴凛はイライラとして言った。

「わたしはこの人より前の席ですよ、おかしいでしょ」

「投げているところみました!」

柊木勇吾が言う。

「如月君に向かって」

「え」

あながち指摘は間違っておらず、鈴凛は思わず言い返せなくなってしまう。

「え、俺?」

周馬が小さく驚く。

「ち、ちがいます……!」

「鈴凛が如月周馬に投げるわけないです!」

未来妃が怒って立ち上がる。

「いいからきなさい」

廊下に出されて、鈴凛はしつこく住田に問い詰められる。 

「投げたんでしょ?学校でもうまくいってないみたいだし」

いじめられているはらいせにしたんでしょ?ということが暗に含まれているようだった。

「投げてません」

「だから投げてはいません。投げようかと思ったけどそれは別のもので……」

鈴凛はちょっと罪悪感を感じてもごもごと言った。

「だから彫刻刀を投げたんでしょ」

「投げてません」

「ちゃんと認めて」

いじめられっ子を助けないばかりか、いじめを傍観していたくせに、こんなときばかり裁判官のように問い詰めてくる住田が鈴凛はますます鬱陶しいと思った。

「投げてません!」

「後で職員室に来るように」

「……はい」

鈴凛はそう言って教室に戻った。

誰が貴重な放課後に、住田になんか会いにいくか、と思う。

「はあ……」

矢田いつ子は自分ですと名乗りでることはなかった。ありがた迷惑な助っ人である。

授業が終わって、鈴凛はこっそり荷物をとりにいくふりをして、矢田いつこに近寄る。

この教室はまともではなかった。ぞうきんや伝説の湯津爪櫛や彫刻刀が飛び交う。

「やりすぎちゃ、だめだよ。何もしないで……おとなしくしてて……」

「ですが連中には制裁が−−」

確かに、戦姫として敬ってほしいと思っていた。でもこれは何か違う。矢田いつこは毛利就一郎の言った通り、とんでもないことをしでかすような嫌な予感しかしなかった。

「おまえなんか投げたのか?」

如月周馬はあっけらかんとして鈴凛に聞いた。

「何も投げてなんか……」

鈴凛は言いかけて気まづくて、口籠る。

彫刻刀は投げていない……だが別のものは投げようとした。

「鈴凛が投げるわけないでしょ!」

未来妃が怒ってやってくる。

「なんでおまえが怒ってんの……?」

如月周馬はぎょっとして一歩下がる。

未来妃はつんとして、鈴凛に向き直った。

「鈴凛、お弁当食べに、生徒会室いこう」

「生徒会室は今日はワックスがけらしい」

するとすぐにの席の後ろの坂本飛鳥が言った。

「え?……こんな日に限って……」

未来妃はすこし考えて口を開く。

「じゃあ屋上いこう! 今日清掃で鍵預かってるから」

未来妃がにやりとした。

「屋上で飯?なにそれめちゃ面白そうじゃん、俺もいく」

如月周馬が想像もしてないことを言った。

「え……」

鈴凛も未来妃も唖然とした。

「熊野、飛鳥、俺たちもいこうぜ」

何かを投げつけられても何も思ってないのか如月周馬はくったくのない笑顔で笑っていた。

「中庭劇場行かないの? こっち見てる人たちいるけど」

未来妃が皮肉をこめていった。

野奈や柊木勇吾がこちらをみている。

「河本先輩卒業したから、もうバスケのこときけないし」

周馬は未来妃の嫌味を平然とかわし、野奈たちの視線も見てみぬふりをした。

「もう俺の大好きな熊野と同じクラスだし」

「むやみにくっつくな」

如月周馬は少しぽちゃっとした熊野に妙に懐いていた。鈴凛はその男子生徒を羨ましく思う。そういえばバスケ部にこの人もいたなと鈴凛は思う。

「熊野は将来俺とアメリカいくの」

「行かない行かない」

「え」

「こいつは俺のトレーナーになるの」

「ならない。ならない」

「俺たちバスケ部なんだから、バスケの話ができるだろ?」

鈴凛は未来妃に目で信号を送る。追い払わないで!こんなチャンス二度とない!

未来妃はうっとして、反省したような表情をしたあと、にっこりとした顔を作った。

「ぜひ、一緒に行きましょう」

やったと鈴凛ががっつポーズを心の中でしていると、ドンっとなにかに突き飛ばされる。

「わ……」

「周ちゃーん!」

坂本鉄だった。

「おお鉄」

「一緒にお弁当食べよーう!!」

「坂本くん……」

「え、何、リリちゃん先輩、いたの」

こうして、妙なメンバーでお昼ご飯を食べることになった。

青空の下、校庭の緑が美しかった。

「うわ。なんか矢田がこっちみてる」

如月周馬が屋上で驚いた声をあげる。

「え」

「……!」

「矢田さんも食べるー?」

周馬がぶんぶん手を振る。

「!! あれ……いっちゃった……」

「おし」

壊れかけよけられていた机と椅子を並べる。

「この方が下が見えるな」

「お腹すいたー」

鈴凛はお弁当を出すのが恥ずかしい。佳鹿には申し訳ないが、重箱の一番上だけにしようと思う。

「熊野、購買部行ってなかった? 弁当あるじゃん」

「卵パンと渦巻きパンはマストなの」

弁当に五個ほど菓子パンが買われている。

「それだから、授業中、眠くなるんだって」

「たべないの?」

鈴凛は荷物に手がかけられない。この時ばかりは、巨大な中華弁当が恥ずかしい。

ここまで想定していなかった。如月周馬に大食いと思われのが、鈴凛はとてつもなく嫌だった。

「なにこれー?」

坂本鉄が勝手に重箱を引っ張り出した。

「わ!やめて」

「なにこれフードファイターレベルじゃない?リリちゃん将来、絶対おデブになるよ」

鉄が笑って言う。

「おまえこんなに食うの?」

「よく太らねえな」

「あはは……」

周馬はコンビニで買ったからあげとおにぎり。飛鳥兄弟は中身が同じの弁当だった。

未来妃はいつものステーキやらフルーツやらが入った金持弁当を食べていた。

風でビニール類が飛びそうになる。

「風強」

緑の山を夏野風が吹き抜けている。空気も透き通って、降霧山も見えた。

「夏になる前の植物の緑って本当に綺麗だよね。黄砂もなくなったし空気が美味しい」

「あ!こいのぼり!もうすぐゴールデンウィークだね」

「いい天気、きっと降霧山バードウォッチングも最高よきっと」

「あの案は却下された」

坂本がすかさず言った。

「え?」

未来妃の顔が固まる。

「社会見学はギャラクシアランドだ」

「はあ……毛利先輩はなんでいっつもあんたの案を採用するわけ?」

「今週末、下見だ」

「なんであんたなんかと……」

未来妃はまんざらでもなさそうな感じで言う。鈴凛はこの二人は実はお似合いなのではないかと思った。そしたらダブルデートも悪くない。周馬とも仲がいい。頭もいいし、未来妃の両親も文句を言わないような気がした。

バツイチ子持ちでもないし、人も殺さない。

「ギャラクシアランド? 俺もいこうかな いったことない」

周馬が言った。

「え?」

「周ちゃんが行くなら僕も行く!」

鉄がすかさず言った。

「じゃあさ!鈴凛もいこうよ!」

「みんなで行ったら楽しそう!」

未来妃が嬉しそうに声をあげた。

「いいじゃん」

「え」

「あ、じゃあ土曜日の検査はやめにしてもらおっと、鈴凛……」

と言いかけて、未来妃は黙る。最近、未来妃はあまり鈴凛を病院に誘わなくなっていた。

あまり困っていないことと、何だか忙しいことが伝わっているようだった。

鈴凛は申し訳ない気持ちになって、先に言った。

「わたしも病院行くよ。えーと……久しぶりに閃くんや仙道先生や北斗さんにも会いたいしさ」

放課後、久しぶりに未来妃の病院に付き合っていた。病院への汚いトンネルは綺麗に塗り替えられていた。

白で塗ると明るく、この街が浄化されたような気分だった。放置自転車ももう無い。

少しづつ何かが変わっていく。

「ごめんね」

「なんで謝るの。わたし未来妃と病院行くの好きだよ」

未来妃が嬉しそうに笑った。

病院に着くと、研究室では北斗が資料を片付けているようだった。

「先生まだなんだー」

「拘式さんは?」

「ああ……まだ見てないけど」

北斗が気まづそうに言う。

「そうですか」

「あ、それより未来妃ちゃん、家庭教師の件だけどさ」

「ああ……すみません北斗さん忙しいのに。成績あがらないからって、うちの親が勝手に、本当にすみません」

北斗は未来妃に向き直る。

「僕は別にいいけど。医学部に行きたいって本当に、思ってるなら。思ってる?」

「……」

未来妃は急に固まった。

「わかりません……」

「将来のことはきちんとご両親に話したほうがいいよ」

「でもわからないからこそ、最善の案なんです……きっと限界まで勉強して医者になることを目指すことが」

「時間は本当にしたいことに使うべきだよ」

「本当にしたいことなんて……まだわからないし……あったとしても、うちの親はどうせ聞く耳ももたないと思います……」

「そうかなあ」

「……」

未来妃が辛そうで鈴凛も辛かった。将来のこともはっきりわからないし、親とそんなにすんなり話し合えるほどコミュニケーションがとれているわけでもない。

夢が無いことを問い詰められているようで辛い。

鈴凛に至っては進学の話すらなかったが、鈴凛ももし未来妃の立場だったら適当に勉強して、はやく受験シーズンが終わることを願い、それなりの大学に行くことになるのだろうとぼんやりと思う。

「あ、仙道先生」

「ごめん待ったよね」

「なんか病棟がパンパンでね。みんなイライラしてるよ」

ぐうとお腹がなる。鈴凛はいつも通り漫画本でも読んで気を紛らせようと思った。

時間を持て余した時、閃とのお菓子タイムが、北斗の熱帯魚の水やりに代わっていた。

「未来妃、最近、木曜日から火曜日にお変えた?」

「拘式先生も診察の日だから」

「へえ……」

鈴凛はぎくしゃくしながら返事をする。別人なら応援したいのに。鈴凛は歯痒かった。

「先生はやく来ないかなあ……」

「仙道先生ならさっきそこにいたよ」

小さな影がひょっこり現れる。

「え、閃くん!」

「僕も火曜日にしたんだ」

賢そうな笑顔で少年が笑っている。

「あ、そうなの……あ、毛利先輩……」

少し面倒臭そうにしている毛利就一郎がいた。

「……火曜日は父もアーネストが診察にこれないので、僕が対応しています」

少しだけ不機嫌そうだった。

「ちょっと源さん、お茶入れるの手伝ってもらっていいですか」

毛利就一郎が改まって、鈴凛に言った。

給湯室にやってくる。

「夏川さんに木曜日に戻すよう言ってもらえませんか。僕の仕事が増えるのは避けたいので。それ以外の日ならアーネストが対応できます」

お茶の用意をしながら毛利就一郎が言った。いつも偉そうな態度の毛利就一郎がそんな作業をしているのが意外だった。

悪態をつくわりには弟のためには意外と何でもするのかもしれない。

「それなら、拘式さんに、火曜日にするように言ってください」

「はい?」

鈴凛は肩をすくめてみせた。毛利就一郎の手が止まる。2秒ほど考えたように瞬きしてすぐに向き直った。

「……なるほど、そういうことですか」

毛利就一郎はすぐに理解した。

「では行きましょう。あっちの部屋で透析受けてます」

「え?」

拘式は別の部屋で機械に繋がれていた。拘式も血液の病気だとそういえば聞いていた。

赤い管が伸びている。鈴凛はこんな状態で戦っていたのかと驚いたし、こんなに具合が悪いのになぜ訓練であんなにも強いのかと驚いた。

「……あの」

以前、毛利邸で拘式神嶺はマクドナルドで働けないとみんなで笑ってしまったことが、今更罪悪感を感じる。こんな状態なら、体を使う仕事はやめたほうがいいに決まっていた。

「翔嶺君……」

心配そうに付き添っていた。拘式が別人のように弱っているように見えた。

「百姫様」

「こんなに病気なんてわたし知らなくて」

「拘式さーん!!」

毛利就一郎が横で突然、大声を出した。

「起きてくださーい!!」

「ちょっと……」

毛利就一郎に病人を労わる気持ちは全く無いらしかった。

「う……」

「診察日は木曜日にしてください。もしくは担当医を変えましょう!」

「なんだと……これにはペースがあって」

気分が悪そうに起き上がる。

「夏川さんがあなたのために木曜日に病院を変えてしまいました、そのせいで閃が、そのせいで僕が忙しくなります」

「夏川がうっとうしいから……現にこうして別室にしているんだろうが……」

拘式は未来妃を避けて病室を変えてもらっているらしかった。

「あ、それで思い出した。今週末、ちょっと出かけたいんです」

鈴凛は修学旅行の下見についていくことを説明した。

「なるほど。まー……、高天原のほうも特に予定は入ってないですが」

毛利就一郎は考えるようにして言った。

「貴様はまた腑抜けたことを。そんな暇があるなら訓練しろ」

「ということは、拘式先生も行くことになりますね」

毛利就一郎が歌うように言った。鈴凛はぎょっとする。

「なに?」

「引率してください。教師の仕事ですこれも。それが一番自然でしょう」

「百姫様を一人でいかせられない」

「お願いしますね」

鈴凛は未来妃が喜ぶだろうなと複雑な心境だった。


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