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永遠(TOWA)  作者: 三雲
不死ノ鬣(現代編)
29/178

新学期

「え!じゃあ、友達になったってこと?!」

未来妃が手袋を落としそうになりながら、頓狂な声をあげる。

「友達?んーと顔見知り……もと住んでた人の家族?」

「すごい……お母さんに友達って紹介されたんでしょ? やったじゃない!」

「うんラッキーだった」

「ラッキーどころじゃないわよ……どれだけ、強運なのよ」

「強運なの……かな……」

鈴凛にその自覚は無かった。

「何だっけ、こういうの。風が吹けば桶屋が儲かる? ピンチはチャンス? 夜明け前が最も暗い? ひょうたんから駒? 棚からぼた餅? 全部ちょっと違うわね」

「うーん……」

「不思議だわ。世の中悪いことだけじゃないって慰めで言うけど、それどころか嫌な出来事が自分の好機に転じることがあるんだわ。おばあちゃんのことも、お父さんのことも辛かっただろうけど……感謝しないとね」

「そうだね」

鈴凛もしみじみと考える。

「それか、今年の乙女座は、やっぱり最強なのかも……占いで見たのよ、わたし。だったらクラス替えもきっと、いいクラスね」

昇降口まで歩いて、掲示板まできた。

「2年のクラスは……」

クラス表を確認する。

「あ、ほら」

「やった!」

「わたしB組」

「林先生か」

「ま……み」

「源鈴凛! 鈴凛もある!」

「やったね……わたしたち同じクラスじゃん!」

「あ!如月周馬も! やったじゃん」

未来妃が大きな声を出すと、大きめの制服を着た女の子たちがぎょっとして逃げていった。

「あの子たち新入生かななんで……」

隣の女の子たちも見たことがない。一年生に見える。掲示板の写真を撮っていた。

「……?」

−−如月先輩はB組 二年の校舎って隣?

−−わたし一緒に写真とってもらいたい!

そしてまた女の子たちは去っていった。

「印刷物まで尊いなんて……教室の観客の数はどうなることやら」

「可愛い子がいっぱいいた」

鈴凛は思わず暗い声が出てしまう。

「大丈夫よ、鈴凛は世界一可愛いもの」

未来妃の意見は全く参考にならない。鈴凛を以上に溺愛しているし、惚れている男は拘式神嶺だった。

「如月周馬も一緒なんてラッキーじゃん……あ、坂本もいる。げ、来田野奈と柊木たちもいる……」

そこには上田三枝の名前もまだあった。

鈴凛は胃のあたりが少しきゅっとなる。

「全員、同じクラスか……」

「ある意味、強運の悪運だわね……」

こんなことが偶然であるはずがない。鈴凛がそう思った時、視線を感じた。

三年掲示板の前で意味深に笑ってひらひら手を振って鈴凛を見ている毛利就一郎がいた。

「まさか……」

「え?」

「……なんでもない」

教室につくと、柊木勇吾たちはこちらを一瞥する。軍団は少し警戒するも、何かを企んでいるような下衆な笑いを浮かべていた。

上田三枝がいないことは彼らの行動に何も変化を与えなかった。

野奈は山原泰花とスマホでなにかを見せ合っている。

「……」

交通事故として処理されたはずなので彼らにも死んだ情報は行っているはずだったが、何の変化も見られない。知らない女子も二人駆け寄っていく。仲が良さそうに、四人で今度何かのアーティストのライブに行くような話をしていた。

野奈は別の女子二人を、グループに入れたのだと思った。

鈴凛はそんな野奈をますます嫌いだと思う。

「三枝ちゃんは死んだのに」

野奈をよろしくお願いします、そう言った上田三枝には申し訳ないが、彼女の死もたいして痛みいってない連中によろしくする気にはなれない。

「未来妃、気をつけて」

鈴凛が言うと、未来妃もうなずいた。

そう言うやいなや、山原泰花がやってきて、さっそく未来妃のカバンに手を伸ばす。

「これなに?」

「やめて」

鈴凛から標的を変えたようだった。それか鈴凛の反応を見ようとしたのかもしれない。

「ゴミの友達がゴミ連れてきたの?」

「あ、ごめーん」

山原泰花が手を大きく横にふると、がたりと未来妃がしまおうとしていた弁当が落ちた。

中身がばらばらになって床に散らばる。

「汚い、かたずけてね」

「……!」

未来妃は拾いながら、下を向いて肩を震わせていた。鈴凛は胸が締め付けられる。未来妃はこういうことには、慣れていない。

山原泰花が満足そうに笑っている。

「あれえ?泣いちゃった?」

未来妃がすっと立ち上がると、空になった弁当箱を山原泰花の顔に押し付ける。

「食べたければどうぞ!食べて!!」

鈴凛は驚いた。お嬢様の未来妃がそんな暴力的行為に出るとは思っていなかったのだ。

「!」

クラスが騒然とする。

「……やったわね!」

山原泰花から弁当箱が投げ返される。

「未来妃やめ!」

「ゴミはの相手はこっち!」

「鈴凛こっちよ!」

教卓を挟んで。お互いが、手当たり次第あらゆるものを投げた。

鈴凛も筆箱を投げる。黒板消し。花瓶の花、教卓の出席簿、マグネット(けっこういたい)

誰かのカバン、うわばき−−

「なげるものがない!」

「調子乗んな!」

山原泰花が乗り込んでくる。

「こんの」

「やめ」

鈴凛と山原泰花はとっくみあった。

別の生徒が未来妃を抑える。

野奈は冷めた目で成り行きを見守っていた。

未来妃が山原泰花をひっぺがそうとしている。

「この」

柊木勇吾は山原泰花に加勢しようと、鈴凛の足をひっぱっている。鈴凛はそれを蹴りまくった。

「うげ」

「やめろ!」

大戦争だった。

「おはよ」

ガラっとドアがあいて、生徒が二人入ってきたが、それどころではない。

「おはよ……?」

如月周馬と背の高い男子生徒が入ってきた。

「ん?」

如月周馬は状況を見て目を白黒させた。

「何やってんの……」

「如月君もみていきなよ」

「今ゴミに思い知らせているとこだから」

柊木勇吾が静かに言った。

如月周馬はどういう反応をするのだろう。

一同もどうリアクションするのだろうか、そう思っていた。

美しい口が開きかけた瞬間−−

「……」

バンっ!とものすごい暴力的な音をたてて、ドアが閉まる。

「やめろ! クズども!」

冷徹な低い声が吠えた。

恐ろしい空気の張り詰め方にぴんとなる。

「……!」

「猿園かここは」

「……」

生徒たちは入ってきた教師に意識を持っていかれて固まっていた。

「担任の拘式だ。席につけ」

ぜいはあとファイターたちは息をあらげていた。

「……え」

「担任は林先生じゃ」

「源さんと夏川さんがはじめたんです」

柊木勇吾が言った。

「きいてない」

「全員席につけ」

「これが終わるまでやめられません」

「黙れ」

「やられたことはやり返さないと」

「誰がはじめたかなど、興味はない」

「着席」

「でも」

「着席しろ」

ギロリと拘式は死神の目で睨む。

柊木はむっとした様子で言った。

「新しい先生はわかってらっしゃらないようですね」

柊木勇吾の余裕の笑みが広がる。生徒たちもそれを察してうすら笑った。

「前の先生から引き継ぎなかったんですか?」

「クズに何がわかってる」

拘式は目も合わせず変わらず冷たい目で教科書を開いた。

「僕はいつもやりたいようにやってるんで、席にはつきません」

出て行こうと背を向けた柊木の首根っこを、すさまじい速さで拘式がつかんだ。

「なにすんだ! 暴力だろ! やめろ!」

「……」

ずるずるとそのまま引っ張って、適当な椅子に座らせる。

「ちょおれの席じゃ」

イスにねじ伏せる。

「おまえのようなクズは、どうせ暴力の僕だろう」

「いたい!いたい!なにを」

拘式は柊木を手で押さえつけると

「源、その箱にあるガムテープをよこせ」

「へ」

これは明らかな体罰だ。

でも鈴凛は体が流れるように反射的に動き、拘式にパスしていた。

「はい!」

見事なパス連携で拘式にガムテープを投げる。

はじめての良いチームワークだった。

拘式はガムテーブで柊木勇吾をぐるぐる巻きにしていく。

生徒は信じられない光景に固まっていた。生徒が教師によって、今から拷問でも受けるかのごとくガチガチにガムテープでかためられている。

「これ体罰でしょ……」

生徒たちが写真を撮り始める。

柊木は笑っていた。

「あーあ。先生もうここにいられませんよ。というかこのあたりじゃどこでも働けないです」

拘式は表情を変えず、作業する。

「人生詰みましたよ」

「黙れ」

口にもガムテープを貼った。

「んー!」

口にテープを貼った。

「うるさい」

「!」

「勇吾が死んじゃう!」

山原泰花が悲鳴をあげる。

鈴凛も未来妃も呆然とした。しかしまあ死ぬことはないだろうと鈴凛は思った。

「この立派な鼻の穴でせいぜい空気を取り込むんだな」

拘式が親指で柊木雄吾の鼻を豚のようにつりあげる。

「ぷ」

鈴凛が少し笑う。

鈴凛は胸がすっとしていた。

「クズども、おまえたちもこうされたくなければ、席につけ」

「体罰教師だ!」

「逃げろ!」

「ん!」

「あかないよ?」

「ええ……!そんなわけ」

「こんなの教師に許されるはずもない!」

山原泰花があわてて反対のドアへ向かう。

「他の先生に助けを求めよう!」

「ドアが開かない!」

「鍵がかかってる!」

「一限目が終わるまでは誰もここを出ることはできん」

「……」

生徒たちがしんとなる。

異様な緊張する空気が張り詰めていた。

何かのホラー映画かサスペンス映画のような雰囲気だった。

「!」

どのような方法なのか不明だが、あらかじめ教室は封鎖されていた。

「先生これはちょっと」

未来妃が言いながら立ち上がると、拘式が睨みつけた。

バンっ!

拘式が大きな木製の教材である三角定規を黒板にたたきつけた。

「全員」

「授業を受けるか」

「騒いでオレに殺されるか」

「それとも」

「三階の窓を破って飛び降りて自から死ぬか」

「選べ」

「……!」

生徒たちの顔が強張った。

「……はやくしろ」

さもなくば、本当に殺すといった雰囲気だった。

がたがたと生徒たちは椅子取りゲームみたいにあわてて席に戻った。

如月周馬と坂本飛鳥だけがちんたらと座る。

「おまえたちは45分授業を受ければいい」

「さもなくば死ね」

拘式はもくもくと数式を書き、名簿をあいうえお順に生徒をあてていく。

「ここは」

「赤井」

「……マイナス2bです」

「次」

「井原」

「……」

「熊野」

「4√3です」

「違う」

間違ったら殺されるのかもしれないという緊張が走る。

「ひ……」

「……」

拘式は生徒たちを睨め付ける。

「次、小島」

正解するまで進んだだけだった。

緊張が張り詰めている。

間違ったら殺すとは言われてない。でも生徒たちはさもそうであるかのような異様な緊張感に包まれていた。

「……!」

チャイムがなると、拘式が扉の上部に手をかける。ギチギチとゴムの隙間に指を入れると、ゴムが破れながら剥がれていく。接着剤のようだった。

「……」

生徒たちは呆然と見つめる。

「!」

授業が終わって生徒たちは悲鳴をあげて一斉に出ていった。

「……」

鈴凛は唖然としてその様子を見守った。

何人かは職員室に行ったのだろう。

拘式は止める様子もなく自分の物を整理して出て行こうとしていた。

未来妃も勢いよく立ち上がった。

「拘式さ……じゃなくて拘式先生! 待って……!」

未来妃が心配しては拘式を追いかける。鈴凛も後をおった。

拘式は歩みを止めていない。

「先生!」

廊下を進んでいく。

「先生! わたし先生を助けるために色々考えました。口裏を合わせてください」

視線を合わせようとぴょんぴょん飛び跳ねながら未来妃は拘式にまとわりつく。

「ねえ拘式先生ったら」

未来妃は拘式を助けようとしているらしく、引き止めようと腕をひっぱった。

「うるさい」

「柊木勇吾の父親は本当にやばくて、先生がもういなくなるなんてわたし嫌だし」

「離せ」

「でも」

「おまえは他人の心配より、自分の計算の遅さを心配しろ」

「……でも先生、本当に」

「だめだめ」

未来妃は一瞬怯んだが、全然負けてない。

「柊木勇吾は、すさまじい仕返しをしてきますよ」

鈴凛もはっきりと言った。

「鈴凛も先生をとめて」

「どうやって証拠隠滅するんですか」

鈴凛は予想はついていたが、つらりとしてきいた。

「それは、俺の仕事じゃない」

含みをもたせて鈴凛に拘式は言った。

鈴凛にはその意味がわかった。八咫烏の力を使うのだ。

「?」

もしかしたら、先ほどの扉を封じていたものも、モチモチの実のような、高天原の何かだったのかもしれない。

拘式は未来妃を払い除ける。

「夏川と教室に戻れ」

鈴凛をちらりと見て拘式は言った。

未来妃が不穏な表情をする。

「未来妃、戻ろう。ほっといても大丈夫だって」

鈴凛はため息をついて、回れ右した。

「ええ……?」

「たぶん大丈夫なんだよ」

「え、鈴凛……、先生となんであんなに仲いいの?」

「え、よくないよ」

拘式となんて仲はよくない。

でも、柊木勇吾の困惑した顔を思い浮かべると笑わずにはいられなかった。証拠は全て消され、ちぐはくな記憶になるのだろう。

とんでもない鬼教官も役にたつものだと鈴凛は思った。


     *


午後からははじめての選択授業である美術だった。午後にもなると、C組の誰かが交通事故で死んだらしいというような情報がまわってきていた。

未来妃は鈴凛をいじめていたグループの子だっただけに複雑な表情をしたが、それ以上何も言わなかった。

学校の時間は普通に流れていく。

「ということでスケッチからはじめましょう」

「よりにもよって」

柊木勇吾軍団も美術を選択していた。

「仲良しのほうがよさそうだから」

美術の中島は空気を見事に読んでいた。

「じゃあ、ここでグループ作ろうかな」

野奈と周馬の間へ中島は手を入れた。

「!」

中島先生ナイス!

鈴凛は小躍りしたかった。

「お互いを描いてください」

柊木 来田 山原 矢田

坂本、夏川、如月、源、熊野

でグループわけがされた。

美術室に鉛筆のしゃかしゃかという音だけが響き渡る。

円になって、グループ同士の人を描く。

「穏やかだな」

柊木勇吾もなぜか騒ぐこともなく真面目にスケッチしている。

「平和ね」

「ああ平和だ」

「数学の授業とは天と地の差だな」

「すごかったな」

「でおまえは」

「柊木に、なんであんなに嫌われてんの?」

周馬が鈴凛がもう随分まえから友達であるかのように唐突にきいた。

一瞬が氷ついたようにも感じる。

おまえ呼ばわりにどきどきして胸がときめくのと同時に、教室の空気に緊張が走った。

「えっと」

熊野がぎょっとしている。

それは隣のグループにも聴こえているかどうか絶妙な音量だった。

柊木勇吾は聴こえていない様子で鉛筆を動かしている。野奈はもちろん聞いていて、少し眉間にしわをよせた。

無理矢理かれらと同じグループに入れられた真面目そうな女子は我関せずでもくもくと絵を描いている。

「それはあなたのせいで」

静寂を破って、未来妃がすかさず発言する。答えを知っていて黙っていることができない優等生のように勢いよく立ち上がった。

「え、俺」

周馬が目を丸くする。

「ちがうちがうちがうの」

鈴凛が慌てて制する。

「わわわかんないんだよね! ね?」

未来妃にも口裏をあわせて!と目で訴える。

「……!」

「……へえ」

熊野も気まずそうに鈴凛を見た。

熊野はなんとなく事情を察しているようだ。洋梨微炭酸間接キス事件はそれなりに噂になった。知らないのは本人だけかもしれない。

妙な空気が流れる。

何の因果か、野奈たちのグループの中で、去年はっきりと居心地の悪さを感じ、柊木勇吾と付き合うように、永延と言われたのもこの教室だった。

「……」

あの時、壊れかけたオブジェが気味の悪い目玉でこちらを見ていた。

「まあ、いつか仲直りできるさ」

あっけらかんとして周馬が言った。

「俺たちも昔、めちゃくちゃ仲悪かったし」

シュウマがニヤっとして坂本飛鳥をみやる。

「……」

坂本は返事をしなかった。

「よく坂本と仲良くなれたわね」

未来妃は坂本を知っているようだった。

「わたし、坂本とは生徒会で一緒なの」

未来妃は鈴凛に説明した。

「毎回わたしの案にケチつけるんだから」

「……」

坂本は聞こえてもいないかのように、黙って迷いなくさらさらと鉛筆で下書きが進んでいる。

「全国模試で1番だからって、偉そうにしないでほしいわよね」

「え、1番?……坂本君、すごい」

鈴凛がそう言っても何も反応は無かった。安心感が広がる。

このような性格だ。毛利就一郎とのバレンタインの出来事をいちいち如月周馬に報告したとも思えない。

「天才だからねこいつ」

周馬は自分のことのように嬉しそうに言った。

「勉強してるだけだ」

「タッチも迷いがない……ね?」

熊野がそう言って、少し覗き込む。

「ん」

熊野が固まった。

鈴凛もちらっと見てみる。

「!」

「いや写真かよ」

未来妃そのものが描かれていた。

「崩して描いたつもりだが」

「なんで崩して描くのよ!」

「俺のもみてよ」

シュウマがにっこりして笑う。

「源、かわいく描けてない?」

周馬はくったくのない無垢のくしゃっとした笑顔で、スケッチブックをこちらに向けた。

幼稚園児のようなグラグラの線が見える。

ぐちゃぐちゃの何かが描かれていた。

「どこ……が目?」

「あは」

未来妃が思わず笑う。

「下手……だな。まじで」

「特徴とらえてんだろ」

「こんな下手な絵、幼稚園児のパパとママのコーナーでも見たことないわよ」

「ひでー」

「てゆーか、右隣が左隣を描くって先生が言ってただろ。おまえが描くのはオレだよ!」

熊野がつっこむ。

「そうだっけ?」

「如月がもてるとこ、そういうとこだよね……ずるいわ……」

未来妃がしみじみ言う。

鈴凛は何かが満ちたのを感じていく。あれをもらうにはどうすればいいのだろうか。あの絵を盗んで額縁に入れて、部屋……納戸に飾りたい。八咫烏の力なら……鈴凛を邪な考えが巡った。

授業だとはいえ如月周馬が描いた自分なのだ。

如月周馬が自分をじっと20分ほど見て、集中して絵を描いた。恥ずかしくて尊い時間。それがどれほどの偶然なのか鈴凛は思わず宇宙に思いを巡らせる。

もっと姿勢を正して美人っぽく座っていればよかった。

未来妃がウインクした。

「……!」

確かに、強運なのかもしれないと思った。

「なんで美術選択した」

「本当に下手だな」

「やっぱり神様はどこか不完全に作るのね」





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