夏の海
周馬と鈴凛は阿木のおじちゃんに自転車をかりた。浴衣とありあわせの服だったので、家にあった服もかりて着替えさせてもらった。
周馬はおじちゃんが昔若くて細いころ来ていたスラックスにシャツに下駄、鈴凛はおじちゃんの昔の女が置いて出ていったという複雑な事情のワンピースを借り、足元はまだ旅館のスリッパだった。
「似合うじゃん」
周馬はサングラスまで借りていた。
「さすがに浮いてない?」
出発する時に鈴凛がきいた。
「あのばあさん、ついに、おまえにTシャツすらかさなかったな」
「まぁ呪われてるから?」
鈴凛は自虐的に笑えるまで、すっかりした気持ちになっていた。
フレアすぎるスカートが夏の風にあおられそうになるのを抑える。
下着をつけてないのですーすーした。
もちろん下着もかしてはくれなかった。
「だな」
周馬が笑っている。
いつもと妖艶さを失って猫のあくびみたいにくしゃりと笑っていた。
なんだかそれを見ると今までと全く違って。周馬と深くつながった気がした。
「これから……どうしよう……?」
「いきあたりばったりの旅してみたかったんだよ」
「金はそこそこ持ってきた」
「わたしもお金はあるんだ」
「そうかよ、じゃあ長旅できるな」
周馬は意外そうな顔をした。
「あの……周馬……わたし……とりあえず、パンツ買いたい」
周馬がケラケラ笑う。
「俺はそのままでもいいけど」
「わたしが嫌なの」
「そうだな。じゃあまずこの時代錯誤の服もチェンジするか。どこかに泊まるなら大学生のふりでもしないとまずいし」
「そう……だね……」
自転車をしばらく走らせると、夏みかん木を植えた家々がちらほらと見えた。少しだけ古い街並みが残る海辺の街は夏の光をあびて輝いている。
「あ、ちょうどいいのみっけ!」
鈴凛と周馬はユニクロの看板をみつけてそちらに向かった。
入るなり、店員たちは鈴凛たちの服装を見て、ぎょっとした。
周馬は構わずにやっとして鈴凛に向き合って言った。
「せっかくだからお互いのコーディネートしようぜ?」
「え」
「俺がおまえの選ぶ。おまえは俺のを選ぶ」
「でも」
「文句いいっこなし」
「……いいけど……」
そう言いながら鈴凛の心に少しだけ不安が芽をだす。その服おしゃれだね!というようなことは生まれてから一度も言われたことがない。
「あと靴な」
「おまえの下着も俺が選ぶか」
「いいいいいい! それは自分で選ぶ!」
鈴凛は必死に首を横に振る。サイズを知られたくなかった。
「制限時間15分な」
選んでもらえるのは嬉しい。だけど、自分が周馬のを選ぶのは大丈夫だろうか……
鈴凛はカラフルな服がたくさん並んだ店を歩く。何を選べばいいのだろう。
周馬らしいもの?男物の服など選んだことがない。自分の服すら迷子なのに、メンズコーナーのどこを見ればいいのかわからなかった。
「うーん」
なんにせよ早く選んで着替えたかった。パンツをこれ以上履いてないのはまずい。
「先にわたしのパンツ」
下着コーナーに来てはっとする。パンツの横にそれは並んでいた。
「ブラジャー!!」
そういえばブラもつけていなかったが、貧乳すぎて何も特に問題がなく、鈴凛も色々ありすぎてすっかり忘れていた。
「てか特に周馬も気が付いてなかったのが果てしなく悲しい……」
鈴凛は呆然とその場に立ち尽くしていたが、はっとして店内の時計を見た。
「やば!時間ない!」
鈴凛は急いでメンズコーナーへ戻る。
「夏だし……Tシャツに短パンでいいのかな……」
「あ、これ似合いそう」
鈴凛は色々まよったあげくよさそうなTシャツと短パンを掴んで、黒いサンダルっぽいものを試着室に持っていく。
「決めたか」
鈴凛は下着を購入して試着室へ行く。
「うん」
周馬は白いカーディガンぽいものに、白いスカートのように広がるズボン、淡いピンク色のタンクトップを選んでいた。
「可愛い……わたしにこんなの似合うかな……」
試着室でそれを着てみと、急に自分が周馬のオシャレでいけてる彼女になった気がする。
「これ着て今からデートするんだ……」
鈴凛は鏡に写っている幸せそうな自分を見た。
グラスポニーを整える。
「お……い」
しばらくして隣の試着室から戸惑った声が聞こえる。
花柄のTシャツに緑のストライプの短パンの周馬が出てくる。
「柄に、柄合わせる?」
周馬はくくくと笑っている。
「え?!……だってサンダルがシンプルな色しかなくて……」
「めちゃくちゃ派手だな。これは目立つ」
鈴凛ははっとする。そうだ、自分達は逃げているのだ。
「やっぱり変だった? ごめん!変えていいよ!」
「おまえって地味なのか、思い切ってんのか、わけわかんねえとこあるよな」
「そ……そうかな……」
鈴凛は確かにそうなのかもと思う。服はいつも妙なものばかり選んでいるが、妙なものというのは要するに主張が激しい服ということかもしれない。
「ごめん、とにかく自分でかっこいいの選んで」
周馬の美しさを自分がおとしめるのは嫌だった。
「いやこれ買う買う。気に入った」
「えでも」
「気に入った」
周馬がにやっと笑った。
「次どこいくかなー」
「……」
お互いの服を選んで買い終えて店を出る。街中を自転車でめちゃくちゃに走っていると周馬が言った。
「なんかいい匂いする」
「うどん屋さん?」
大きな屋根の和風の建物にどんどん車が入っていっていた。
「うどん屋に殺し屋はいねえだろ」
「え……まあ……」
周馬と鈴凛は入ることにした。
店に入るとこんぶとかつおの出汁のいい匂いが満ちている。
「何にする?」
レジ前に並んでかかげられた札を2人して見上げる。
「わたし……ざるうどんかな」
「出汁を味合わないのか」
「え?まぁ……そうだね」
このうどん店の支店は宇多市内にもあって貧乏な鈴凛はたまに学生セットにお世話になっていた。
周馬の家は裕福すぎてリーズナブルなうどん屋にはいかないのかもしれないと思った。
「俺は肉うどんにわかめと卵……待てよ。おかめうどんに肉か……」
席につくと、視線が痛かった。店に入った時からすぐに周馬に視線が集まっていた。
−−なにあれ芸能人?
−−誰?
−−派手〜
周馬は目立ちすぎてしまう。さらに目をひく服をなんで選んでしまったのかと鈴凛は後悔する。
「なに?」
周馬はふざけて阿木のおじちゃんのサングラスをまだかけていた。
「すごい目立ってる……半分はわたしのせいだけど」
「食べさせっこする?毛利とのやつ見せつけてきただろ」
周馬が意地悪く笑う。
「え!……ごめん……」
「最後に俺がいいっていうまで唐辛子な」
「え?!」
*
「おまえどんな舌してんだよ」
周馬がケラケラ笑っている。
「辛いのはわりと平気で……」
うどんを食べ終えて海辺の道を走っていると、周馬が砂浜をみつけた。鈴凛と周馬は休憩のついでに波打ち際を散歩していた。
足をつけると水がきもちいい。
「気持ちいな」
「水着と帽子かっとくんだった」
「そうだね」
周馬のペースに飲まれて、緊張感がまるでないが、今も毛利就一郎たちは追ってきているはずだと思った。
それにしては追っ手が意外と遅いなと思う。
鯆多丸の能力を駆使すれば、携帯の位置情報などで居場所はすぐに特定されてしまいそうな気がするが……
「……」
「お、おい」
鈴凛は携帯を思いっきり海に放り投げた。
「おまえ……投球力すげえな……」
遠くまでいってぽちゃんと落ちた携帯を周馬が眩しそうに見ている。
「サラコマンダー武術のおかげ」
「そんな体幹とか鍛えられるなら俺もやろうかな」
周馬は殺されるかもしれないというのに楽しそうだった。
「で、次はどこにいく?」
「え……次?」
鈴凛は思考停止していた。
波打ち際を海の水がさあっと引いていく。
鈴凛はただこの時間を楽しみたかった。
「うーん……」
冷静に考えると周馬をずっと連れ回してるわけにもいかない。
かといってこのまま宇多に帰るのもまずい。
「これ、未来妃に送ってやるか?」
周馬がふざけて浜辺にりりと周馬のアイアイ傘をデカデカとかいたものをみせた。
「なつかしい……」
未来妃が合宿で勝手に描いていたアイアイ傘が波打ち際にかかれていた。
蟻音さんにでも泣きついて周馬をどうにか逃してもらうか……蟻音さんなら自分を殺して捕まえるなどという作戦には参加していないだろうと思った。
「あ……」
今携帯は海に放りなげたのだった。
「あー携帯……」
頭をかかえる。
「携帯いるならかすけど」
毛利就一郎に見られた以上、周馬の携帯も処分しなければ意味がない。
「……! そういえば、周馬のご両親は心配してるんじゃ?連絡って……」
「大丈夫、おまえの実家で、父親には連絡しといた」
「そっか……怒られなかった?」
高校生なのにいきなり二人でどこかへ行って、鈴凛は周馬の父親が自分をどう思うだろうと心配になる。
「青春を楽しんでこいってさ」
「いいお父さん……」
鈴凛はほっとする。さすが周馬のお父さんだけのことはある。
「うわ!クラゲ死んでる!」
周馬がぎょっとして足をあげた。
透明のゼリー状のものがたくさん浜にあがっていた。
「盆を過ぎたらクラゲがでるとかきいたことがあるが……じゃあやっぱもう泳げないのか」
鈴凛は無惨に打ち上げられたクラゲたちをみた。
突然に浜に打ち上げられ、死を迎えたのだろう。
「……」
その姿は哀れで、どうしようもなくて、為す術もない運命を受け止めて死んでいた。
「……」
「あ!」
通りをパトカーが走っているのをみつけて鈴凛たちは身を伏せた。
「やば!」
「おまえの親か毛利が、警察にでもいったのか?」
「わからない……建物の中のほうがみつからないかも」
「……あれ」
周馬が指差した建物は断崖にたつホテルだった。
「観光ホテルっぽいな」
『長本リゾート』
入り口の石にそう掘られていた。
*
「景色良いー、海みえるな」
ベランダで周馬が海をみている。
周馬は受付でなんと社会人を装って、鈴凛たちはあっさりと中に入れた。
「兄と妹作戦うまくいったろ」
演技は得意な方。以前、文化祭でそう言っていたが、それは本当だった。
受付の女性と話す口ぶりは本当に大人みたいで、鈴凛の兄らしさ満点で、別人みたいだった。
「……」
鈴凛はふと不思議な気持ちになって周馬の背中を見つめた。
バスケットが好きな周馬がどうしてあんなことができるのか。
考えていることを見抜いたように周馬が口を開く。
「嘘うまいだろ?」
「え……あ、うん」
周馬はかまわず海をながしみた。
「でもなんで……?」
さきほどみた立ち回りと話術はなんだか何度も色々なシュチュエーションの捏造を経験してきたからなような気さえしてくる。
「連絡先教えてとか、いきなり付き合ってくださいとか、遊びに行かない?とか、多すぎて。うまくかわしてるうちに、自然と嘘吐けるようになったんだよ」
鈴凛はなるほどと思う。
周馬は誰かまわず構われる。あたりさわりなく逃げるには言い訳が必要なのだろうと思った。
「大なり小なりうまく嘘をつけば、うまくかわせる」
「それは……そうだろうね。連絡先なんて交換したら、ずっと返信しなきゃいけないだろから……」
周馬に惚れた女の子は多い。もしその子がクラスも違う、学校も違うとなれば、周馬に猛烈にメールしたくなることは、想像に難くない。
「あらゆる嘘が役に立つ。優しく断るって、結局は全部、嘘だから」
「そっか……モテすぎるのも……大変なんだね」
鈴凛はしみじみとその言葉を噛み締める。
「こんなこと、誰かに話すと思ってなかった」
周馬は珍しく少し苦笑いしている。
鈴凛には想像もつかない世界だった。
周馬の表情がどこか殺伐としたような気がして、鈴凛は思わず口を開く。
「何か嫌なことあったの?」
「好意っていろんな形があるだろ」
「……」
「本気で存在感消せてるおまえが羨ましかった時もあったよ」
周馬が回り道して話すのが、鈴凛は怖かった。
「それって……」
「適当にしとくと、一緒に死んで!!とかいって刺されそうになったり、死んでやる!とかになったこともあったな」
「え?!」
鈴凛は周馬がふざけて自分で俺はモテるからとか言っているが、周馬も嫌な思いをたくさんしていることに驚いた。
「実際に手首切った子もいる」
「それは嫌だね……」
「だから平然と嘘をついて逃げ回るのさ」
「……!」
「でもたまに……おまえが言ったことじゃないけど、本当の自分って何だったっけ?って思うこともある」
周馬がはじめて寂しそうに見えた。
「……周馬」
周馬は気を取り直したように、ちゃんと向き直る。
「おまえの親父さんも必要な嘘をついたんじゃないのか?」
「え?」
「妹の子なら育てても、不思議はないんじゃないかと思ったけど。父親が育ての親だけだったってことはあるだろう?」
「そうかな……そう思いたいけど……兄妹の子なんて……やばいっていうか……気持ち悪いしね……てゆうか……だったら父親は誰って話にまたなるけど……」
というかその設定でいまリゾートホテルに泊まるのも全くうまい設定ではなかったような気がしてきた。笑えない。
「気持ち悪い、か」
「もし俺とおまえが兄妹だったらどうする?」
周馬は急に前を向いたままきいた。
「え……そんなわけ……ないじゃん……」
「なんで?世の中絶対なんてことないだろ。しかも父親がわからないなら?」
「だって……顔が違いすぎるし」
「仮に」
「それは……」
鈴凛は考えてみる。そのことが判明したら、この特別な感情は憧れではなく愛着だったということになるのだろうか。
全然ピンとこない。
男兄弟もいないからわからない。
ただ、周馬が兄だったら?と想像すると、鈴凛はなぜかぞわりと鳥肌がたった。
背中から不吉が這い上がるような、いてもたってもいられない気持ちになる。
玲子と父の話をきいたからかもしれない。
「周馬はもし好きどうしだったら、兄妹でもしょうがないって思えるの?」
鈴凛はその気持ち悪さを誤魔化すようにきいた。
「絶対に妊娠しないようにする方法はあるだろ」
周馬は冷たく言い放った。
「!」
鈴凛はその言葉を、いきなり飲め込めずにいた。
「避妊って……こと?」
「しないってこと」
周馬が訂正する。
それは肉体関係を持たないということ。
鈴凛はふと座っているベッドに指をはわせる。
そんなこと可能なのだろうか?
「好きだからお互いに欲望に蓋をしてってこと……?」
だとしたら……兄妹も……ずっといっしょにいることができるだろうか?
「そう」
周馬はいつになく考えるように言った。
「……!」
鈴凛気ははっとする。
「好きだったら仕方ないだろ」
だとしたら—
気がついたことに震えた。
自分達もこのまま、触れ合うこともなく、永遠の旅を続けることができる?
「……」
戦姫は明を感染させる。だから周馬とはできない。
だから一緒にはいられないと思っていた。
子どもを作ってあげることはできないと思っていた。
でも、それでも、いっしょにいてくれる?
いつかそう聞いてもいい日がくる……?
「……」
鈴凛は自分の思いついたことに、放心状態だった。
周馬なら−−
「……」
周馬なら、戦姫であることも、受け止めてくれる?
「周馬」
鈴凛は全ての秘密が喉元まで込み上げるのを感じた。
この人に全て本当のことを話せたら—
「あのね」
この人に全てのことを打ち明けて、全部繋がりたい。
「……」
それを知った時、この人はどんな顔をするんだろうか?
周馬の綺麗な目が何か促すようにこちらを見たきがした。
周馬が知ることで、鈴凛の人生に大きな意味が生まれる。
それがまったく今まで思い描いていた未来に繋がっている気がした。
「……」
未来妃にも話せていない。わたしの真実を。全てを。
今、この人にーー
「周馬−−」
鈴凛の口は勝手に開いていた。「
「……!」
周馬が振り返ってはっとした顔をする。
「煙……?」
「え?」
−−バーンとドアがあいて、何かが放り込まれる。
「玉手匣は催涙弾のようなタイプのものもあるんです」
げほげほとむせて、周馬が倒れる。
ガスマスクをして特殊部隊のような格好をした兵士たちが、部屋になだれ込んできた。
「わ!」
何人かが周馬を拘束して抱え上げる。鈴凛も押さえつけられた。
「やれやれ……」
煙が落ち着くと、毛利就一郎がマスクをとった。
「周馬!!」
「周馬に何かしたら許さない!」
「!」
毛利就一郎が鈴凛の胸ぐらをつかむ。
「あなたは、今、何をしようとしてました?」
「……!」
「あろうことか……この男に……戦姫であるという真実を話そうとしていましたね?」
「それは……!」
「なんてことを……」
毛利就一郎は首を横に降った。
「あなたは何をとち狂っているのです?」
「やっておしまいなさい」
何人かがベランダに周馬を担ぎ上げていった。
「だめ!!なにするの!!なんで周馬を」
「八咫烏の特権です」
ぺらりと紙をみせる。
「如月君の抹殺許可証です。もちろん、わたしが書きました。もう領主ですから」
毛利就一郎が両手の指を組みながら絡ませてにっこりとした。
「……!!?」
「戦姫の運用に支障がでます」
「勝手なことを!! こんなこと許されるわけない!」
「これで清清します。如月くんには、なんだか無性にムカついていたんですよね……」
毛利就一郎は無視して言葉を続けていく。
「あなたには失望しました、神の花嫁でありながら、このようなただの人間の男と、こんな海の見える部屋でイチャイチャいちゃいちゃ……」
「……やめて、周馬は悪くない!! わたしは……先輩を助けてあげたでしょ?」
「おやおや、珍しく恩着せがましいですね。だから言ったでしょう? 後悔するかもしれませんと」
毛利就一郎は影がさした笑顔でしたたかに言った。
「花獺さんやっておしまいなさい」
「!……矢田さんだめ!」
兵士たちはベランダから周馬を突き落とそうとしていた。
「まて……!……黄猿様……」
矢田いつ子は思いとどまったようだった。
鈴凛の言葉に矢田いつ子が怯んだ。
「花獺、これは百姫様のためなんです。わかるでしょう?」
「それは……」
「周馬に何かしたら絶対にゆるさないから! 毛利家を潰す!! 矢田さん!戦姫のわたしの命令は絶対でしょ!!」
「そう……です……」
矢田いつ子は迷っていた。
「おやおや脅しですか、できるならやってみるといいですよ」
毛利就一郎が走り出す。
「ま」
「わたしがやりましょう」
周馬を鷲掴みにして、ベランダの外に放り投げた。
「やめて!!」
鈴凛は兵士を投げ飛ばして、走った。
「まってーー」
あらゆる制止を薙ぎ倒して、空に飛び込んだ。
美しく目を閉じた周馬が落ちていくのが見える。




