雷とサンドイッチ|心のぬくもり幻想舎
ゴロゴロ…
分厚い雲におおわれた空に轟く雷鳴。
まだ風が吹いているだけだが、間もなく雨が降り出すだろう。
カーテンの隙間から窓の外を覗き、近づいてくる雲を確認すると、私はキッチンへと向かった。
用意するのはステンレスの水筒と、小さめのランチボックス。
そして冷蔵庫からハムとマヨネーズ、レタズを出して、食パンも用意する。
「今日はルイボスティーで乾杯ね」
沸かしたお湯を水筒へ注ぎ、中にはお気に入りのティーバッグを落とす。
食材はすべてパンに挟み、サンドイッチにしてランチボックスへと詰め込んだ。
「よし」
人一人が座れるサイズのピクニックシートをベランダに出し、先ほど作ったものを並べる。
雷鳴はより近くなり、空が光ってから五秒もしないうちに響くようになった。
風に乗って雨の匂いも強くなる。
すると次の瞬間、大粒の雫がアスファルトに落ちたと思うと、バケツをひくり返したように大きな音を立てて雨が降り出した。
私は深呼吸を一つして、両手を静かに合わせる。
「いただきます」
吹き付ける雨と風を感じ、空から降ってくる雷を眺めながらサンドイッチに手を伸ばす。
ああ、この特別感がたまらない。
誰にも邪魔されない、密やかな時間。
今日も私は生きている。
fin.
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こちらでは毎週月曜日に、1分ほどで読める短編小説を2本アップします。
日々をめまぐるしく過ごす貴方に向けて書きました。
愛することを、愛されることを、思い出してみませんか?
ここは疲れた心をちょっとだけ癒せる幻想舎。
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