森での探索と六本の月光草
泉での騒動を乗り越え、濡れた服を絞り終えたミリアは、まだ息を切らしながらも笑顔を見せた。
「よし……これで三本。あと七本だね」
俺も頷き、保存袋を確認する。女神様からもらったチート能力があっても、こうした地道な作業は避けられないらしい。けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
短い休憩を終え、俺たちは再び森の探索を再開した。月明かりに照らされる木々の間を慎重に進みながら、次なる月光草を探す。
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四本目 ――ぬかるみの罠
歩いていると、地面の一部が妙に湿っていることに気づいた。足を踏み入れた瞬間、ズブッと泥に沈みかける。
「うわっ!? なんだこれ!」
「コーダイ、気をつけて! 湿地帯だよ!」
慌てて足を引き抜くと、泥の奥にうっすらと青白く光る草が見えた。
「……あれだな」
「でも近づくのは危険だよ。下手したら抜けられなくなる」
そこで俺は周囲の木を見回した。長い枝を拾い、足場代わりに泥の上に並べて進む。まるで橋を作るように、一歩ずつ板の上を渡る感覚だ。ミリアはその後ろを慎重に追いかけてきた。
ようやく辿り着いた先、泥に半分埋もれるように月光草が咲いていた。手を伸ばすと、指先が泥で滑りそうになる。俺は深呼吸し、しっかりと根本を掴んで引き抜いた。
「取れた!」
「やったね!」
泥だらけになりながらも保存袋に収める。これで四本目。
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五本目 ――木の枝の上
次に見つけた月光草は、倒れかけた木の幹の上に生えていた。高さは二メートルほど。登れなくはないが、足場は不安定だ。
「私が行くよ」
「いや、俺が行く。前に水草で溺れかけただろ? 危ないのは俺がやる」
ミリアが心配そうに見守る中、俺は木の幹に手をかけ、慎重に登る。途中で苔に滑りそうになり、ヒヤリとしたが、なんとか幹の上に体を乗せることができた。
そこには月明かりを浴びて輝く一本の草が、風に揺れていた。根を傷つけないよう慎重に掴み、ゆっくりと引き抜く。
「よし……五本目だ!」
幹から降りると、ミリアがぱちぱちと拍手をして迎えてくれる。俺は少し照れながら保存袋に収めた。
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六本目 ――小動物との攻防
森の奥へ進むと、低い茂みの間にまた月光草の光を見つけた。だがその前には、リスのような小動物が二匹、草を守るかのようにちょこんと座っていた。
「……あいつら、まさか月光草を食べてるのか?」
「うん、よくあることだよ。小動物も月光草の甘い香りに惹かれるの」
リスたちは俺たちを警戒し、キーキーと鳴き声を上げる。下手に近づけば逃げていくか、最悪かみつかれるかもしれない。
「どうする?」
「少し離れたところに食べ物を投げて、気を引こう」
ミリアは腰の袋から小さな乾パンを取り出し、茂みの反対側へ放り投げた。するとリスたちは一目散に駆け出し、夢中で食べ始める。
その隙を逃さず、俺が月光草を引き抜いた。保存袋に収め、安堵のため息をつく。
「六本目……あと四本!」
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七本目 ――棘の茂み
森の奥は徐々に暗くなり、棘の生えた茂みが行く手を遮った。その中に、かすかな光が見える。
「……中にあるな」
「でもあの棘、触ったら怪我するよ」
俺は手持ちの小刀を取り出し、茂みの枝を少しずつ切り払って道を作る。だが枝は弾力があり、切った拍子に跳ね返ってきて、頬にかすり傷を負った。
「大丈夫!?」
「これくらい平気だ」
苦戦しながらも道を広げ、ようやく光のもとへたどり着く。そこには健気に咲く月光草があった。俺は慎重に摘み取り、ミリアに手渡す。
「はい、七本目」
「お疲れさま。顔、少し赤くなってるよ」
「戦士の勲章ってやつだ」
冗談めかして答えると、ミリアは笑いながら保存袋に収めた。
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八本目 ――崖下の挑戦
さらに進むと、小さな崖の下に光が見えた。高さは三メートルほどだが、下りるには少し危険そうだ。
「ロープはないけど……あのツタを使えばいけるかな」
俺は木から垂れる長いツタを確認する。丈夫そうだ。
「俺が下りて取ってくる。ミリアはここで支えてくれ」
「わかった」
ツタに体重を預け、慎重に崖を下りる。心臓が早鐘を打つが、なんとか足を地面に着けた。
月光草は崖下の岩の間に咲いていた。俺はそれを摘み取り、腰のポーチにしまう。
「取ったぞー!」
「気をつけて戻ってきて!」
ツタを登りきると、手のひらに汗がにじんでいた。八本目を保存袋に収めた瞬間、達成感がじわりと広がる。
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九本目 ――倒木の影
残り二本。疲れが見え始めたころ、倒木の影に淡い光を見つけた。だがその周囲はぬかるみで覆われており、近づくだけで足を取られる。
「また湿地か……」
「さっきみたいに枝を使おう」
俺たちは協力して枝を集め、即席の足場を作りながら慎重に進む。途中で枝が折れて足が沈みかけたが、ミリアが腕を引いて助けてくれた。
ようやく辿り着き、九本目の月光草を手に入れる。保存袋に入れると、袋はずっしりと重みを増していた。
「これで九本。あと一本だ!」
「やっとここまで来たね……」
達成感と同時に、最後の一本への期待と緊張が高まる。俺たちは顔を見合わせ、深く息をついた。
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こうして六本の月光草を新たに採取し、合計九本を確保した。
残りはあと一本。依頼達成まで、あと少しだ。




