光
『はい。我はそこの優魔族に』
『私は、人族のシャイ二ーに伝えることがございます』
「うん。なら、ヴァイス君とシャイニーさんは立っても良いよ」
国王よりも更に目上の、それも御伽噺に出てくる幻の精霊よりも上の存在に彼らは目を合わせた。跪く体勢から立ち上がるまで、プルプルと震える様は生まれたての子鹿のようだった。
『我からだ。優魔族のお主、名はなんと言う。家名があるならそれも答えよ』
「は、はい。ヴァイス・アブヤド…です」
『クククッ…やはりな。お主はもちろん、アーテルの者もアブヤドという家名は知らぬであろう。それもそうだ、そもそもアブヤドという家名は下界に元々存在しなかった。ヴァイス、お主に一つ面白い話をしよう』
長くなる為か言葉を切るアビス。
『今より三百四十六年前、数年を王国で過ごして来た優魔族と悪魔族の家族がいた。彼女らと共に住む人族の子が巻き込まれた事件が終わった後、二人の魔族は魔界へ戻った。優魔族の者は事件で共闘した者の身内と交わり子を生した。彼女らは喜んだとも、ハイエルフ達ならわかるだろうが長寿の者が子を生すのは難しい。そして長い時を経て、十五年前に二人目が誕生した』
恐らく皆が気づいているだろう。二人目は今、この部屋にいる彼だと。
だが、許可なく口を開くことは出来ない為、ひたすらに終わるのを待っていた。
『父親の名はダジャ・アブヤド、母親の名はリズ・アブヤド。どちらも優秀な優魔族だ。二人は…まぁ母親の方が想いは強かったそうだが、光の意味としてヴァイス・アブヤドと名をつけた。事件以降は門を開くことが禁止となった。しかし我が子から目を離した隙にその者は消えていた。門の残滓があったことから幼子は無意識に門を開いてしまったという結論になった。これがお主が孤児となった理由だ』
ヴァイス君はというと、涙が頬を伝い上等な絨毯にポタポタと流れていた。
幼い時の過去を知らず、王族の一員として過ごして十年目に我が子ではないと伝えられてどう思ったのだろうか。怒り、悲しみ、呆れと多々あるだろう。本当の家族を知った今、思うのは寂しさではないかと僕は思う。
彼も薄々気づいているかもしれないが、門を開くことが禁止ということは、こちらからも開くことは禁止ということ。家族を知っても会うことが出来ない。
幼い時の自分を呪うのかシャイ二ーとの出会いを選ぶのか、彼の選択はどちらなのだろう。
『私からは手短に…アビスのように家族や生い立ちの話ではなく、あなたに与えた名前についてよ。あなたには、アーテルという国を変えて欲しかったの。白の意味を持つブラン家の中でもあなたは、とびきり魔力量が多く光の魔法適正が高い。事実を捻じ曲げ作られた聖典を早々に処分し、その魔力量で退魔結界を張る役目をあなたにと思って、期待を込めて名を与えたわ。周囲の言葉を信じて疑うことなく聖典…いえ、嘘に惑わされるとは思っていなかったから残念だわ。でも、優魔族の子とは相性が良いから、過ぎたことより今とこれからを大切にしなさい』
《若干、失望が感じられる言い方だったが最後にまとめたな》
《クククッ、良き者と見せたいアピールですな》
僕とアビスが念話をしていることに気づくことがない他の者達は、ただただ押し黙りシャインの言葉の後を待った。
『あなた達は種族は違えどその名に光の意味を持っています。与えられたにせよ想いがあったにせよ、名は体を表します。その名に恥じない生き方を送りなさい』
シャインはこれが言いたかったのかな。言い切った感のある表情してるし。
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