逃げ延びた人
ヴァイスがアグエイアス国王にお願いをしてから一ヶ月後、彼は無事に王国で住むことを許可された。今は人族のシャイニーと天陽族のエルシャと共に住んでおり、仲睦まじく過ごしていると聞く。
そんな彼は正式に、飲食店『食の棚』の従業員として働いていて、とても評判が良く特に、接客と掃除が上手い。是非ともシュウ少年には見習って欲しい。
そんなシュウ少年は平民でありながらも、貴族顔負けの魔力量や魔力制御力を持ち、更に頭も良くアルバ魔法学園の高等部商業科のトップを維持している程。残念なのは身長の低さで、シュウ少年と呼ばれることと間の抜けた口調だろうか。
「あ~プリン食べてぇ~」
学力テストを早々に終わらせたシュウ少年は、カリカリという音が響く教室で呟く。小声のハズが静かな空間のせいでよく通る。クラスメイト達の多くは青筋を立てるが、シュウ少年は気にした素振りもない。
五十分あるテストが始まって十分。少年は今日も絶好調だった。
学園が終わりカイトに頼まれた果物を購入したシュウ少年は、何かと有名な噴水広場の方から騒ぐ声が聞こえたので野次馬として見に行った。
痩せてサイズがあまり合っていない衣服を着たちょび髭の男性とそのそばに、これまた痩せた銀髪の女性がおり、衛兵から守るように数人の執事やメイドが囲む衛兵と争っていた。
アーテルの人達かなと思ったシュウ少年の予想は当たっており、シャイニーと同じ状況だった。彼らは気が立っているのか、水がかかるのも構わず噴水によじ登ろうとしていた。執事服を着た者達が男性を止めようと奮闘し、女性の方はオロオロしている。
彼らは到着した増援に抑えられ、王城へと連れていかれた。バラバラと散る野次馬とは違い、紙袋を落とさぬように走るシュウ少年は急いで店へと戻った。
店内を見て運良く客がいないことを確認した少年は、ヴァイスに近寄り今しがた見たことを伝えた。見る見る内に彼の表情が変わっていき、少年はやっぱりと思った。
少年が見た男性や周囲の者達は、ヴァイスの恋人シャイニーの家族の容姿に似ていると言う。
その後のヴァイスの行動は早く、瞬く間にシャイニーを連れて戻って来た。突然連れられた彼女だったが、話が進むにつれ涙が溜まっていく様子に、少年は心を痛めた。
カイトが許可を出すや否や二人は店を飛び出した。真っ直ぐ王城へ向かうのだろう。感動の再会の後、誤解を解く為に口論を繰り広げるのかと思うと、残った彼らは微妙な気持ちになった。
主であるアース様に報告しようと、ソッとその場をシュウ少年に任せたカイトは階段を上っていった。
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