重要人物
皆さんは長生きしたいですか?
百年ではなく、三百年です。
私は遠慮したいです。なぜなら、大切な人や親しい友人を失い生きるからです。出会って別れて失い、それでも自分自身は長く生きる。
苦痛を埋める幸せはいつなんでしょう。
「はぁぁーーー」
「なっがいため息だなテスター」
受付け前に人がいなくなり、ギルド内の酒場が賑やかになっている時、テスターは盛大にため息を吐いた。
「だって、あんなギルドマスターを見るのは初めてで」
「…まぁ、確かにな。あの青年が重要人物だなんて信じられないけど、どっかで見たことあるんだよなぁ」
受付台に伏せていたテスターは身体を起こして、隣の男性にチラリと目をやる。
左側が少し長い茶髪は眉にかかっており、冒険者ギルドの副ギルドマスターをしている男性バダットは、書類をまとめていた。
「あの噴水広場の像でしょ?バダットさん」
「そう、それだ!」
言われてみれば確かに似ている。輝く青色の鉱石の為、詳しくはわからないが、シルエットだけならそっくりだ。
だけどそう考えると、疑問が……。
「三百年も前ですよ?あの像が出来たのは。ギルドマスターのようなエルフ族でもないのに、生きられるとは思いませんよ」
「食の棚のカイトさんとか、アクロさんもエルフ族じゃないぞ」
「いや、あの方達は何かしらのスキルがあるんじゃないですか?」
「スキルねぇ。そんなスキルがあるなら私も欲しいわ。はい、テスターこれ追加ね」
彼女の手に渡されたのは、今日買い取りされた素材の書類。
「えっまだあったんですか!ルフェルタさん」
「さぁ、業務はほとんど終わったし飯でも食べるか。頑張れテスター」
置いてけぼりをくらうテスターに、パチッとウインクするルフェルタはバダットの後を追った。
受付けで一人になったテスターは、ギルドマスターが帰るまでに終わらせようと必死に確認をするのだった。
一時間後、戻ったギルドマスターに呼ばれたバダットは、階下に聞こえる程の声を上げた。あまりの大きさに酔った酒場の冒険者達は笑うが、職員達は会話の内容が気になり寝つけなかったらしい。
翌日、緊張したバダットは身だしなみを確認してギルドを出た。ギルドマスターの背を追って歩く様子は、親のミストガモと生まれたての子供のようで、可愛さがあった。
彼らの行き先は『食の棚』。向かう理由は、顔合わせ。しかも王族も来るとギルドマスターは言う。
平民が王族が来る場所に同席する。緊張しない訳がない。
そのことを知っていれば、笑うことも微笑むこともなくむしろ、同情していたに違いない。
店の前へ着いた時に王族と鉢合わせするとは思っていなかったバダットは、王族よりも後に来たことで気絶した。
ギルドマスターが、バダットを背負って部屋へ向かったことは言うまでもない。
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