青年は下界へ
神様って忙しいと思います。
普段過ごしている中で、神様を信じている人もいれば信じていない人もいるでしょう。
不幸なことが起こった時、「神様なんていない」と思うことがあるかもしれません。しかし、神社なんかに行くと神様にお願いしていますね。
神様の存在を否定されたり、お願いする時は求められたりと「どっちやねん」と思いたくなるのも仕方ないと思います。
「おー、変わらないなぁ。ぅん?少し広がったのかな?」
長袖の白シャツにフード付きで膝下まで長い黒色ジャンパーを羽織り、くるぶしの辺りから青色に変わっている黒色のメンズパンツ姿。黒・青・白の三色で彩られた半長の安全靴を履いている青年がいた。
黒髪に少し幼さが残る顔立ちで、見たことのない瞳を持っていた。鮮やかな青に薄茶色、そして黒い瞳孔。背は少し伸びている。
同じ列に並ぶ者達とは明らかに違う服装に、物珍しそうに見る者がちらほらと。
一時間と少しで彼の番となった。
何の問題もなく、冒険者ギルドカードを受け取り入国する。彼がこの国に来るのは実に三百年振りだった。
街並みはあまり変わらないものの、建物に使われている赤茶色の石に笑みがこぼれる。
記憶を頼りに着いた冒険者ギルドもまた、木造から赤茶色のレンガへと変わっていた。ギルド内のガヤガヤとした声や光景は懐かしい。
「すみません。ギルドマスターをお願いします」
「はい?そういった予定は入ってませんが……」
「そうですか、なら伝言をお願いします」
ギルドを出て、平民区へ足を向ける。彼は元気でやってるかな。そう思いながら、ゆっくりと歩を進めた。
◆
「あ、あの、ギルドマスター!今よろしいですか?」
昼食の為に階下へ降りると受付嬢の一人、テスターが声をかけて来る。
「先程、冒険者が来てギルドマスターに面会を求めてきたのですが、断りました。なら伝言をと言われたのですが、一応報告を……」
「伝言の内容は?」
「は、はい。『トリス』、それだけです」
トリス……?トリス?……まさか、彼女か?いや、彼女は亡くなっている。彼女を知る人物…三百年も前のことを誰が……
「意味のわからないことを伝言するなんて、非常識ですよね。仕事に戻ります」
「まさか…」
彼女は小首を傾げこちらを振り向く。かまわず私は、彼女の両肩に手を置き質問した。
「その方は…黒髪で黒と青の服装…でしたか?」
「え、はい。えーと、ギルドマスター?」
周囲の冒険者や他の受付嬢が私達の会話に注目している。
嘘であって欲しかった。返答は、「違う」を半分程期待していた。後の半分はそうであって欲しい思い。
彼女は、「はい」と答えた。あぁ、彼が帰って来たんだ。
「あなたは知らないようですが、その方はこの王国の重要な方です。決して失礼なことがあってはならない」
ゴクリと息を飲む彼女は、少し身体が震えている。
「さっき伝言を受けたとあなたは言った…なら、次に行くのはあの場所か」
私はギルドの扉を押し開けて、久し振りに走った。走るのは何百年振りだろうか。
私は今、どんな顔をしているのか。
彼はこの王国をどう思うだろう。
私は、彼がいるであろう『食の棚』ではなく王城へと向かった。
神様は存在していて欲しいと思っています!
読んでいただきありがとうございます!




