第一章 大氾濫?
本日投稿小説、2/3話
王城からギルドマスター室へ【転移】してすぐ、ギルドマスターのシリウスさんが一人の女性と共に入室した。宿屋の長女、リズだ。
僕と目が合ったリズはサッと目を逸らし下を向く。
「リズ。まず、君が何故森にいたのか理由を聞きたい」
左腕をギュッと握り、言いたくないのか口を閉ざし首を振る。だけどそんなことをしてる時間はない。
声をかけようとした時、アクロが彼女に近づき、そして……
パァンッ!
気持ちのいい音を響かせて、平手打ちをかました。
「あなたが話さなければ事態は悪化するのよ。それとも王国に魔物の大軍を押し寄せたいの?」
「魔物…大軍…?」
どうやら、魔物の大量発生を知らないようだ。では何故、あんなに急いで走って来たんだろうか。
ゴクッと飲み込み、ある人物の名前がリズの口から発せられた。
「エンヴィー・タッソ」
「という人物が、突然私の背後に姿を見せたの。鑑定スキルがあるから、名前がわかったわ。その人の背後に黒い穴があって、その奥に妹が…メアがいたの!周囲に沢山魔物がいて、ゴブリンキングもいた……」
「…でも、場所が、わからない」
エンヴィー?誰だ?
僕が思い出せずにいると、隣に立つアルシオンさんが呟いた。
「エンヴィー・タッソ…だと?ほら、アース君が学園の試験を受ける時に、貴族の規則を破った人だよ」
言われて思い出せた!
エンヴィー・タッソ!当時、貴族で教師だった彼は平民に厳しいことで有名で、暴力未遂を犯したということが記憶として蘇った。
「彼は恐らく、平民に嫉妬してる。彼の父親は期待している者には厳しくあたる人で、特に息子である彼に強く当たっていた。だが、襲撃者から平民の使用人を庇い亡くなってしまった」
「守られる立場の平民に父親を奪われたと?」
「アース君の言うこともそうだけど、彼はあの時こう言ってたよ『何故、俺に厳しくあたるのに、平民には……』ってね。彼は父親に期待されていることを知らなかったんだよ」
だとしても、だ。平民を嫌うのなら何故、リズの妹と共にいる?利用か?それは何故?
ダメだ、情報が少なすぎる。
「い、妹は、小さい頃からアビリティを持ってる。”感情伝播”といって……」
「そうか!!」
僕の言葉に全員の目が向けられる。恥ずかしさはあるが、繋がったような気がした。
”感情伝播”読んで字のごとく、感情が広範囲に伝わる能力だ。本人の感情である喜怒哀楽が周囲の者に影響を与える、一種の才能。
宿屋での冒険者の反応が、まさにその影響によるものだった。
もし、そのことをエンヴィーが知っているとしたら?もし、エンヴィーの苛立ちや嫉妬が少女に影響を与え、アビリティによって魔物に伝わっていたら?
リズは言っていた「場所がわからない」と。魔物は元々、魔界の住人だ。
鑑定で見ればリズは、優魔族…多分、幼い頃にこちらへ来て溶け込んだ為、魔界のことがわからないのではないか?
「リズ、君は優魔族だね?」
「しかも、魔化スキルを持ってる。優魔族であっても危険なスキルだ。でも、戦力としてはありがたい」
「[召喚]闇の大精霊」
僕とリズの前に、大きな紫色の魔法陣が現れ、ズズッと魔法陣から跪いた体勢で鳥のような漆黒の翼に、額から伸びる二本の角を持った者が出現。
一、二歩、僕以外の全員が後退した。
『ククク。千五百年と少し振りですな、我が主』
「積もる話は置いといて、君のことはこれからアビスと呼ぶ。早速で悪いけどアビス、こちらからも動くけど魔界は任せるよ」
スッと立ち上がったアビスは僕よりも少し高く、『任せて下さい』と頼もしく返事をした後、魔法陣を足元に出してその中へと消えた。
魔界は彼に任せて、森の魔物を倒さなくては!
そして僕らは、行動を開始した。
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