第一章 抹茶アイス事件
本日投稿小説、1/3話
激しく交わる模擬剣。
女子生徒から発せられる悲鳴。
複数の魔法を模擬剣でぶった斬る。
そんな異常な光景が、指示された時間を超えて慌ててやって来た彼らの目に映ったことだろう。
肩を上下させ、冬場なら白い息で辺りを薄らと包むくらいに、彼らは全速力で来たのだろう。
その二つの理由で彼らは今、担当であるリーナ・ガルボに叱られている。
冒険者にとって時間厳守は当然のことで守れなかった場合、築き上げた信用など一瞬で塵となる。これは、最低限のルールで彼らはそれすらも守れなかったのだ。
当然、評価はマイナス、親への報告、反省文…とこの三セットを与えられ見学させられる。
彼らは…いや、今は目の前の”敵”に目を向けなければ!
【ウォータ・トリ・ランス】を斬り捨てると、彼女はあっさり自白した。
「い、家にあるからぁーー!!」
そう言いつつ、フィールドのギリギリまで後退し【ロック・ペンタ・ショット】を放って来る。
退くのか攻めるのかどっちかにして欲しい。
「自白したな!敵め!」
好物を奪う者は誰であろうと”敵”だ。
石つぶてをジャンプで回避。
攻め寄って来た彼女に落下の勢いを模擬剣に乗せて切りつける。
それに今回は味見の段階で、自身の好物スイーツナンバーワンに決定したカイトもいる。
アイスを返せば、彼女にはまだ挽回の余地がある。
真剣な表情で、模擬剣を横薙ぎに振り抜いた彼女の足を払う。
学園が終わり次第、転移で回収する予定を立てた僕は模擬戦を終了させた。
「アクロには、まだ教えることがある…だが、アースはないんじゃないか?魔法を模擬剣で斬るなんてこと、あたしには出来ないな」
「先生、アースに常識は通じません」
お前にも通じないよ、アクロ。
「あんたは、ちょっとおかしい程度だけど、アースは異常だね」
リーナさん、アクロも異常ですよ。
その後、アイスを奪って逃走した犯人ことアクロ・グランツを問い詰めた結果、侵入方法が判明した。
自宅兼飲食店『食の棚』の建物の下に、侵入防止の魔法陣があるにも関わらず何故、アクロは平然と入ることが出来たのか。
とっても簡単でした。
いつの間にか作っていた、スペアキーの複製を使ったと言う。
僕が持つマスターキーは自宅の全ての鍵を開けられる。しかし、空間収納の中なので複製を作ることは不可能。
そこでアクロはスペアキーを持つカイトを狙ったのだ。カイトが起きる前にスペアキーで侵入し、厨房にも侵入して冷凍庫の奥にあるケースを奪って逃走。自宅であるグランツ家の冷凍庫に保管したらしい。
お前は盗賊か!!
学園が終わり、罰として反省文を書くクラスメイトを放置してグランツ家前へと【転移】した。
応接室で待っていると、何故かグランツ家当主の宰相さんを連れてアクロがやって来た。
何故かホクホク顔の宰相さんと、全身で落ち込み具合をアピールしているアクロが、僕の正面ソファーに座る。
抱えたケースを差し出され、恐る恐る確認すると、綺麗に半分だけなくなった抹茶アイスがあった。
眉が八の字になり、開いた口がしばらく塞がらなかった。
犯人はもう一人いた。
盗んだ者と、食べた者。
アクロ・グランツと、名も知らぬ宰相さん。
この怒りの矛先は、どこにぶつければいい!!
読んで頂きありがとうございます(*^^*)




