第一章 飲食店『食の棚』
本日投稿小説、1/3話
「三年間、お世話になりました」
王族のプライベートルームの一室で僕は挨拶を行っていた。
「楽しい三年間だったよ」
「良い師匠だったわ。体調には気をつけて」
「ありがとうございます。アルシオンさん、ミューズさん」
神界から少年の姿で降り立ち、アルバ王国で知り合い交友を持った、国王であるアルシオンさんの好意に甘えて過ごした三年間は、忙しくも楽しい毎日だった。
アルバ魔法学園の中等部…それも最高クラスのSクラスに入り、他五人に加え教師一人と過ごした”半生徒半教師生活”は一旦終了した。休みがあければより専門的なコースでの日々が始まる。
「お二人に渡したい物があります」
左の内ポケットから、四枚のカードを取り出し渡した。
それは金で縁取りされ、光に反射すると薄ら虹色に輝くミスリルカード。表に、アルシオンさんやミューズさんの名前と空白の欄が表示されていて、裏には店名と開店時間・閉店時間が書かれている。
「カード?何に使うんだい?」
「夜のみの会員制飲食店に必要な、通行証兼注文カードです」
「高等部に通う間は限られますが、冒険者活動をしない休日の朝~夕に飲食店を開き、夜は会員制のみとします。日中来られる方のメニューに制限をかけて、会員の方のみ注文出来るメニューを出します」
僕は基本冒険者として活動するので、休日のみ開く飲食店にするつもりだ。本来は、平日の朝~夜に来る客を慌ただしく捌き、休日に休みつつ仕込みをするのが普通だ。けど僕の店はあくまでも副業。食品は小出し。スイーツ類は登録こそするものの、作り方は出さない。
「アース君の作るスイーツが食べれるのはありがたいけど、王族は中々外出が出来ないんだよね」
「そうですね。平民の経営する店に、通いたくない貴族もいるでしょう。それを解決するのがこの、通行証兼注文カードです!」
僕は自信満々に告げた。
「まず、魔力を通します。はい、この赤い丸で登録完了です。次に、魔力を流して表の…そうです、その空欄を押すと半透明のパネルが現れます」
パネルが現れ、歓声が上がる。
「もしかして、ここにある一覧のスイーツを選ぶと、何らかの形で出てくるのかい?」
キラキラした表情で尋ねるアルシオンさんに、クスッと笑みが溢れる。
「カードの表に転移で出現させます。なので必ず机の上に、カードを表向きに置くようにして下さい」
ミューズさんがパネルを操作して硬貨を置いていた。
注文を受けた僕が持つカードが、振動しながら光を発する。
取り出し確認するとミューズさんの好物である、コカトリスの卵を使った濃厚プリンが注文欄に表示されていて、硬貨が送られて来た。
【空間収納】から注文されたのと同じ濃厚プリンをカードに置き、パネルでミューズさんを選択して完了を押すと、プリンが消える。
とすぐその後に、両手の平に置いたミューズさんのカードが少し光り、濃厚プリンが出現した。
「おぉ、本当に出た……」
「す、凄いわ、これなら注文し放題ね!」
「アース君、後の二枚はアルトとディークのだろう?執事長テルト用のも貰えないかな」
僕は了承し、ミスリル鉱石と少量の金からカードを作り、魔法で処理を施してからテルトさんに渡した。
アルシオンさん程ではないが、甘いものが好きらしく感謝された。
「『食の棚』かぁ…ふふ、王城の図書室に本が増えるように願ってるよ」
アルシオンさんと握手を交わした後、部屋を出て城門へと向かった。
カイトとアルトが待ちくたびれているかも知れないと思い、少し急いだのは言うまでもない。
読んで頂きありがとうございます(*^^*)




