閉めてえぇぇぇ!
「閉めてえぇぇぇ!」
「待って!閉めてって!」
「閉めてくださ~い!」
これが弊社での退室の挨拶。
というのは嘘だが、まるで挨拶かのように毎回言う/言われるセリフなのだ。
職場、特に私の部署の部屋は冬寒くて夏暑い。
冬はあれ?ここ外だっけ?とか思ってしまうほどにキンキンに冷える。
夏は打って変わって灼熱の暑さ。お手軽に南国気分が味わえる。
冬暑くて夏寒いというのはよく聞く話だ。オフィスの冷暖房が効き過ぎちゃって……と。
しかし、私の場合はその逆なのだ。
冬の今。エアコンが頑張っている音はすれど、なかなか温まらない。
温まるまではカイロを握り締め、震えながら耐える。
とにかく耐える。もちろん仕事しながら。
上下ヒートテック着てるし腰にもカイロ、あとブランケット。それでもまるで足りない。
そう、ここは冬の厳しさを身をもって知ることができる素敵な職場……
んなわけあるかい!
それはさておき。
そんな中大事になってくるのは、いかに暖かい空気を逃がさないかだ。
窓は閉め切り、部屋の入り口のドアはしっかり閉める。
コロナで換気が大事だと言われているこのご時世、見事に真逆を突っ走っている。
それでも一応ごくたまに換気はしているけど、そのたびに室内は阿鼻叫喚。
それでも何とか毎日凌いでいたのだが、ある日深刻な問題が発生した。
なんと入口のドアが閉まらなくなったのだ。
そのドアは引戸。
本来ならガラガラ~と滑って閉まるのだが、最後にドアがバウンドして小さな隙間が空いてしまうようになった。
かといって閉める力が弱すぎると、変なところで扉がピタッと止まりこれはこれで閉まらない。
う~ん。困ったことになった。
その部屋の皆はそれを分かっていて、ちゃんと力を加減してきっちり閉めてくれるのだが……
問題は他の部署、他の部屋の人だ。
ドアが閉まり始めるのを見ると、そのまま立ち去ってしまうのだ。
そもそもそれが当たり前だし、そんな最後までドアの挙動を見届けるなんて普通いないのだが。
ドアは跳ねてまた開き、必死で貯めこんでいた暖かい空気はどんどん外へ……なんという無慈悲。
みるみる気温は下がって、室内はまるで冷蔵庫。
熱々のホットコーヒーなんて飲み頃通り越してすぐぬるくなる。
開いたドアは、最初はあんまり言うのも気が引けて室内の人達で閉めていた。
微妙に開いたままのドアに駆け寄って、よいしょっと閉めて。
で、席に戻るとまた人が出入りしてドアに隙間が……
そしてまた閉めに行って……無限ループ。
結局それでしばらく頑張っていたが、あまりに開けっ放しの頻度が多いのでとうとう自分で閉めてもらう事になり。
そして、そこで冒頭の挨拶(?)が生まれたのだ。
怒涛の『閉めて』コールを背中に浴びて、「え?ああ……」「ごめんごめん」とか言って皆なんだかんだドアを閉めてくれる。優しい。
本当はそんなのいちいち手間だし、まずはそのドアを直してほしいのだが……なかなか上の人がうんと言ってくれなくて。
多分ここが一番の問題なんだろうけど。会社員はつらいぜ……
仕方ないのでせめて『閉めて♡』の貼り紙をドアに貼ろうと目論んでいる。誠意製作中。