セレナの英才教育
「アーサー可愛いわねほんと!」
俺の名前はアーサーらしい。他は何を言っているか、全くわからない。
「セレナと一緒で綺麗な金髪だね、もしかしたら美人になるかもね」
セレナは顔が真っ赤になった。
「ばか!アーサーは男の子よ、あんたみたいなイ、イケメンになるはずよ」
「イケメンだって?嬉しいなあ」
なんだろう甘ったるい匂いがすごいぞ。
「ほらアーサー、パパだよ!パパ」
アレックスは自分に指を指しパパと連呼する。
「パパ?」
その声に二人は固まった。
「い、今この子しゃべったわよ」
セレナが目を見開いてアーサーの目を見つめている。
「 」
アレックスは口を開けて動けない。
「アーサー、ママよ!ママ!ママ!」
セレナはわくわくした表情に変わり、アーサーにママと連呼した。
「ママ」
セレナは喜んでアーサーを真上に投げた。
「すごいこの子!天才よ!」
待って、なにしてんだこの人!俺まだ赤ん坊だぞ!
恐怖のあまり目をつぶる。
「なんて頭がいいんだ、セレナに似たのかな」
相変わらずなんと言っているのかわからないが、今世の父の声が聞こえる。
「決めたわ!今日から私この子に私の知ってる事を全部教えて、超英才教育しちゃう」
まだ衝撃がこない、恐る恐る目を開ける。
「ぉぎゃ!」
宙に浮いている。
「世界で一番の魔道士になってもらうわ!」
それから毎日、今世の母が絵本を読んでくれる。
文字は読めないが、絵があるおかげで少しは内容がわかる。
他にも絵を見せて、多分名詞を連呼している。
単語を覚えさそうとしているんだろう。
「イヌ、ネコ、りんご」
絵を指差して、母の言った言葉を言う。
セレナは嬉々とした表情で震える。
「凄いわ、生まれてまだ10日も経っていないのに。将来が有望すぎるわ」
言葉を一から覚えないといけないのは大変だと思うが、今この状況を楽しんでいるし、アーサーも未来にわくわくしていた。
もしかしたら死んだ仲間達も、どこかでこんな風に生まれ変わってるのかな。
アーサーは幸せな気持ちになった。
〜そして一年が経った〜
日常会話ならある程度喋れるようになった。
「アーサーも一歳になった事だし明日から魔法を教えるわ!」
魔法?
「魔法を?まだ早くないかなあ。アーサーは賢いけど、あまり小さい頃から厳しくしても」
絵本とかでよく出てくるし、セレナもたまにそれと思われるようなことをしている。
「まま、まほうをしりたいな」
セレナはにんまりとした。
「さすが私の子!いいわ、理屈はもう少し大きくなったら教えるわ。最初は感覚で覚えるとこからいきましょ」
俺は母に抱かれ、玄関の方へ向かった。
「最近、セレナがアーサーばかり構って寂しい...」
残されたアレックスはしょんぼりとしていた。
そしてセレナにベビーカーを押して貰い、少し開けた場所に来た。
ここは公園だろうか。
ここはそこそこ栄えた街のようだ。
「魔法はね、まずイメージが大事なの」
そう言いながらセレナの右手の手のひらから火が灯る。
先月くらいから少し歩けるようになったが、ずっと立ってることはまだ出来ないので、ベビーカーから説明を受ける。
「魔法のエネルギーの源はマナと言って、それをイメージで形にするのよ。現象を起こすためにはその理屈を知らないとイメージしにくいから、いろいろな魔法を使うには、たっくさん勉強しないといけないけどね」
なるほど魔法と言えども、科学の知識がいるらしい。
「マナ?」
「えっとね、最初はマナを感じるところから始めましょ。マナはどこにでもあって、濃い薄いはあるけど空気みたいなものなの」
セレナは火を消し、瞳を閉じた。
すると周りに光の粒が浮かび上がった。
「わかりやすいように、マナに干渉して可視化できるようにしたわ。見てて」
セレナが手のひらを向かい合わせ、その間に光の粒が集まる。
「マナは私達の考えに答えてくれるわ。アーサーもマナが集まるのを想像してみて」
セレナの言われたとおり、マナが手のひらに集まるのをイメージしてみた。
すると光の粒がゆっくりと集まってくる。
「そして集まったマナを形にするの」
すると光の粒が激しく燃えだした。
俺も火を想像してみる。
すると手のひらのマナが燃え始めた。
「ほんと天才ね」
セレナが微笑んだ。
「あとマナは現象を起こす以外のことも出来るわ。例えば」
セレナの体にマナが集まる。
「うーんなにか丁度いい物は無いかしら。あれでいいわ」
そう言いセレナは街灯の下に行くと、いきなり街灯に右ストレートを叩き込んだ。
すると街灯がひん曲がり倒れた。
「ええぇ!??」
いきなりの出来事に驚いてしまう。
「マナを体に集めて、集中すると肉体の強化もできるの。そして...」
倒れた街灯に手を触れる。
すると街灯がひしゃげたところが伸び、元の型地に戻っていく。
「こんなこともできるわ」
魔法便利すぎだろ...。
それからセレナの言葉の教育が続き、更に魔法の修行がはじまった。