誕生
長い夢を見ていたような感覚だった。暗く微睡んだ世界で、はっきりとしない意識の中考えた。
自分はどうなったんだろう。あの傷では助からないだろう、助からなかったやつを何人も見てきたが、あの中でも俺は酷い方に入るだろうと思う。
「〜〜、、」
何処からか声が聞こえる。言葉がわからないし、返事も出来ない。でも暖かい気持ちにさせてくれる、それは心地よかった。
〜〜〜〜〜
「大丈夫かい?」
鍛えられているが、体格にそれほどの主張は無く、爽やかな青年が女性に声をかけた。
「もう心配し過ぎよ、朝から何回聞くのよ」
長い金髪の妊婦が返事をする。
「久々の僕の休日で、夕飯を豪勢にしてくれるってのは嬉しいけど、その体で外に出るのはやはり不安になるよ」
「アレックスが遠征で居なかった間、寂しかったからデートしたいの!それに美味しい料理なんてしばらく食べてなかったんでしょ?」
アレックスは兵士であり、若いながら一つの小隊長を任されている。剣の実力者でありながら人柄がよく人望の厚い青年である。
「いや部下のヘレンが結構上手で、毎日楽しませて貰ってるよ」
それに対してセレナが顔を赤くする。
「なによ!お世辞でもそこは、私の美味しい料理が待ち遠しかったとか言うとこでしょ!」
「ごめん、確かに待ち遠しかったけど、変なものでも食べてるのかと心配されてるかと思ってそれで...」
「ほんとあんたって昔から気が利かないわね!とりあえず今日の晩御飯は貴方の好きなハンバーグにするわ」
「ほんと!嬉しいなあ、じゃあ肉屋から行こうか」
セレナの体に気を使い、すぐに買い物を済ませ二人は帰宅した。
「ふぅーやっぱりちょっと外出するだけで疲れるわね」
それを聞いてアレックスは酷く慌てる。
「大丈夫かい?セレナ」
「あーもう大丈夫って うっ!」
セレナがお腹を抱えて疼くまる。
「セレナ!大丈夫!?」
「大丈夫じゃ無いかも...」
涙目になりながらセレナは返事をする。
「取り敢えずベッドで横になって、すぐ医者を連れてくるから!」
アレックスはセレナをベッドに寝かし、猛スピードで家を飛び出した。
〜〜〜〜〜
なんだろう外がいつもより騒がしい。
相変わらず思考がまとまらない、自分は今どんな状態なんだろう。
(あの時死んで...)
死んだ後の事を考えた。
アルメダスターには、人が死ぬと宇宙を魂が渡ってまた新しく生まれ変わると言う考えがある。
人が死を恐れないように、誰かが考えた嘘だと思っていたけれど、まさかと思った。
(もしそうなら)
方向感覚もまともに無いが、体にかかる重力を頼りに体を捻る。周りから押される感覚を利用して頭につかかっているものを押す。押される感覚が強くなる。その力に身を任せてもがいた。
周りからの声が騒がしい、眩しい、それでも圧迫される感覚を頼りにまたもがく。すると誰かが引っ張ってくれた。
眩しくてはっきりとは見えないがおっさんの顔が映った。
(取り敢えず泣いた方がいいのかな)
よくわからないけど大声で泣いてみた。