アルメダスターの英雄
あれからファフニール軍と和平交渉が行われ、戦争は終わった。明日世界が平和になったことが発表されるらしい。
兵器の破壊に成功した俺達の部隊は、戦争の功労者として勲章式が行われ、そのままパーティーみたいなのが開かれてる。
「ほんと流石です隊長!単騎で敵要塞に突っ込んで兵器を破壊しちゃうんですから」
こいつはオペレーターのラマー、俺には勿体無いくらいやり手だ、情報戦が得意で戦況を的確に報告しながらハッキングまでできる。
「ラマーが動力炉の場所をすぐ見つけてくれたからだよ」
いきなり背中を叩かれた。
「謙遜しなさんな!あんたがいなければこの星は無くなってたんだぞ」
このゴツイのはゴードン、メカニックで元パイロットだ。俺が入隊したときからずっと世話になってる。
「いってぇ...ゴードンいきなり大声出すのやめてくれよ、ほんと怖い」
「がっはっは、ジークフリートに乗ってる時は後ろにも目がついてるのかってくらい人間離れしてるってのに、普段はほんと情けねえなあ」
ジークフリートは愛機の名前だ。
「うるさいなあ、お酒が入ってるからだよ」
実際にいつもより飲み過ぎてしまった。
「ちょっと風に当たって休んでくるわ」
ゆっくり座れるところを思い探すと、確か花が植えてあり噴水があったところがあったのを思い出した。
ラマーに心配されたが、大丈夫と言い離席した。
「はあーー風が気持ちいいな」
花には詳しくないが、夜でも少し灯りがあり綺麗だった。
「やっぱ大気を通して見る星は綺麗だなあ」
幻想的な光景に感傷に浸ってしまう。
あの戦争の最後、黒騎士の言葉を思い出す。
「後に平和な世が来るとして、貴様みたいな人の命を大切に出来るものには生きて欲しい」
戦争が終わった今、自分に何が出来るのか考えてしまう。防衛として軍は残るらしいが、これ以上人の命を奪いたくは無い。
戦争で傷ついた土地に赴いて復興の手伝いをしたいが、アラメダスターとファフニール軍との間にある星々は、関係が無いのに被害を受けた星もある。
「はあ、軍を抜けてこの星から出たら俺はただの大量殺人者なのかもな...」
すると後ろから足音が聞こえた。
「どちらさん?」
暗くて顔が見えないが女性だった。
「ん?...」
俯いたまま近づいてくる。
「どうしたの?」
目の前まで彼女が来て誰かわかった。
「ファフニール軍の姫様じゃないか...」
明日は和平交渉の発表でアラメダスターに居るのは聞かされていたが、こんなとこで会うとは思わなかった。
状況とアルコールのせいで頭が混乱する。
「姫様が何でこんな所に?」
姫は急に倒れかかって来た。
「!?」
腹部に激痛が走る。
「黒騎士様の仇ぃ!」
突き立てた刃物を抜きもう一度刺される。
「いぁっ!」
「お前が1人になるのを待ってたのよ!よくも黒騎士様を!死神め!」
何度も何度も刃物を突き立てられる。 始めは痛みで思考が回らなかったが、一つだけ理解できることがあった。
(俺こんなとこで死ぬのか...)
最後には、生かしてくれた黒騎士に申し訳ないと思いながら意識を手放した。