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創痕カタストロフ  作者: 音葉 響鬼
3/4

『管理局員』

「で、何の御用ですか?……超越者管理局員さん?」


「あはは……そんなに嫌そうにしないでくださいよぅ……。」


玄関で元気よく挨拶を済ませた女性は、俺が露骨に嫌悪感を出していると、弱々しい口調でそう言ってきた。


「……とりあえず本題に入ってください。」


「……はい。」


若干涙目で頷く。なんだこの人。


「えっとですね。改めて紹介させて頂くと、私達は、能力に目覚めた異能力者。通称、超越者カタストロフを観測、適切な説明をしたのちに誘導し、国の運営する育成機関に誘導するという役割を担っている国家機関なのです。」


つまり、俺のような人間を管理する機関というわけだ。


「(国が感知していたという事は、大分前から存在しているのか。)」


「基本的には、超越者の方々が暴動を起こさないように、それと、能力をしっかり学んでもらうために、国が運営している学園に通ってもらう形になります。」


「学園……ですか……。」


「あまり気が進まないですか?ですが、それ以外だと監視対象として生活を大きく制限されることになってしまいます。」


「(まぁ……特に従わない理由もないか……。)」


正直。学校とはもう無縁になるだろうと思っていたが、この力について学べるというのなら、そこに通う方が得策だろう。


「分かりました。俺も、その学園に通います。」


「本当ですか!よかった〜。偶に勝手にいなくなっちゃう方もいるんですよ〜。」


能力を持ったばかりで急にこんなこと言われれば、そんな奴が出てきてもおかしくはないだろう。


「そうと決まれば!出来るだけ早めに学園を紹介したいので、出立の準備をお願いします。」


「分かりました……あの。」


「何でしょう?」


「俺の事は、親には何と?」


「ああ。そこは『国の事情で他言無用です。』と伝えることになります。」


「そうですか。分かりました。」


元より親らしくもない親だ。俺がどんな理由で家を離れようと、何も文句を言ったりはしないだろう。


「……あ、そうだ……!卑代 湊さん。あなたを学園へ案内する前に、会ってもらわなければならない方がいます。」


「……?」


ーー


そして、翌日の朝。


管理局の用意したホテルの一室で一日を過ごすと、既に朝の眩い光が目に入る。


「(……そろそろ朝も寒いな……。)」


相変わらずどうでもいい思考をもって朝の起床を確認するが、今日からは三人分の朝食を作る必要はない。


「(……やっと……あのつまらない日々から抜け出せたんだな……。)」


ーー


「おはようございます卑代さん!今日も宜しくお願いします。」


「……はぁ……宜しくお願いします……。」


部屋を後にし、昨日取り付けておいた約束の時間通りにホテルを出ると、七瀬が待っていた。


「ではこれから目的地に向かいます。あ、私、卑代さんの担当になったので、何かあったら何でも言ってください!」


相変わらず元気に話をするこの人は、きっと仕事である今でもこんな感じなのだろう。


ーー


車に揺られること数十分。都市部付近の海に面している区域まで来ると、閉鎖された巨大なトンネルの前で車は停車した。


「(確かここは、相当前に建てられて今じゃ使われてないんじゃ……。)」


管理員らしき人物が車に近づき、七瀬さんと話をすると……。


「了解しました。ご苦労様です。」


七瀬との話を終えた管理員が、トンネルへ戻ろうとした時ーー。


ダァンッ!!


「(銃声!?)」


後方からの銃声と共に管理員の肩を弾丸が貫く。


「大丈夫ですか!?少しじっとしていて下さい……。」


普段のおっとりしたイメージとは裏腹に、迅速に管理員を安全な場所まで移動する。


「湊さんはそこにいて下さい。ここは管理局員たる私が。」


そう言うと、弾丸の飛んできた後方へ視線を向ける。


「私だって、オドオドしてるだけじゃないんですよ!」


七瀬が意気込んだ瞬間。再び銃声が響いた。


がーー。


「っ……弾丸が……。」


七瀬の目の前に迫っていた弾丸は、ピタリと停止して落ちることもない。


「私の能力は、《慣性操作》です!」


叫び。ほぼ零予備動作での超高速で敵に向かう。


「狙撃手は……見つけました!」


高層ビルの屋上に狙撃手を見つけた七瀬は、ハンマー状の武装ストレングスを手に跳躍する。


「っ……!」


向かう鳥を撃ち墜とさんばかりに飛んでくる凶弾を、能力で停止させる。


「はああああぁぁぁぁ!!!」


狙撃手を狙いハンマーを振り下ろすが、軽々と躱される。


「チッ……。」


狙撃手は、舌打ちを残して逃走した。


「あっ……!くぅ〜……逃してしまいました……。」


屋上の一角を穿ったハンマーを肩に乗せ、遠くを見るように手を当てる。


「(慣性操作……予備動作が全く無かったのは、能力で自分を操作したのか……。)」


超越者。その存在と僅かな実態を目の当たりにした瞬間だった。

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