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「えっと……」


 ニーナはまたどうしようかと考え、無意識にゼロの方を見た。ゼロはニーナの方を見ていた。しかし、ニーナと目が合うわけではなくニーナの後方を見ている。ゼロはその後、特に何かをするわけでもなくそのまま目を年上の兵士の方へと向けた。また上手いこと話してくれないかとゼロを見ていたニーナはゼロの目の動きを追って同じように年上の兵士を見てしまう。もちろん年上の兵士はニーナに向かって話していたので目が合った。


「どうした?」


 その様子を見ていた若い兵士も近づいて来た。ニーナは近づいてくる若い兵士に目を向け、どうしたらいいか分からず一歩下がってしまう。その行動を見た年上の兵士は目つきを鋭くする。


「っ!!」


 その視線を受けてニーナは息を飲む。その時、ニーナやゼロの後ろから門に近づいてくる足音が聞こえてくる。その足音は走ってきているようだが、その近づいてくる速さは尋常ではない。足音が聞こえてきたかと思えば既にニーナの後ろまで来ていた。


「あれ?こんな時間に人がいるなんて珍しいね?」

「ひゃっ!!」


 その足音の人物はニーナのすぐ後ろで声を出す。ニーナは兵士たちの様子に気を取られ、後ろから近づいてくる足音に気づいていなかった。そのため、後ろに立っている人物の声に驚いて声を上げる。さらに、後ろに下がろうとしていた体勢で驚いて身体が前に行く。そして声を出した人物を見ようと振り返るように身体を捻っていた。


結果としてニーナは声を上げた人物に手を伸ばした状態で転びそうになる。


「おっと!」


 その手を、声を上げた人物は咄嗟に掴む。その人物は若い男性で、さらさらの金色の短めの髪に金色の目、顔はとても整っていて雰囲気も爽やかな感じだ。服装は胸当てや腰回り、肘や膝に金属製の防具をつけている。腰には少し長めの剣が鞘に収まって下げられている。ニーナは尻もちをつきそうになったが、手を掴まれたことでそれは阻止された。しかし、勢いがついていたローブははためき、結果としてフードは外れてしまう。


「あっ!!」

「「!!!」」


 フードが外れたことに驚き、ニーナは声をあげてしまう。そのフードが外れたニーナの顔を見た兵士2人は驚き目を見開いた。


「大丈夫でしたか?」


 しかし、声を上げた人物はニーナの顔を見ても特に驚いた様子も無くニーナに声をかけて掴んでいた手を引いてニーナを立たせて手を離した。


「あ!いえ、あの……」


 ニーナはフードが外れたこと、転びそうになったところを立たせてもらったこと、ニーナの顔を見ても驚いた様子のない目の前の人物に対する疑問と、頭に浮かぶ言葉が多くて言葉を出すことができなかった。


「落ち着きな?」


 不意にニーナの横にいつの間にか近づいていたゼロが声をかける。ゼロは声をかけると同時にニーナのフードを被せる。


「っ、は、はい……」


 ゼロの声にニーナは少し驚いたが、フードを被せてもらったため一度深呼吸をして落ち着くことができた。


「転びそうなところを支えていただきありがとうございます」


 そして、目の前の人物を改めて見つめて転びそうになったところを助けてくれたお礼を言って頭を下げた。


「いえいえ、元はと言えば僕がいきなり後ろから声をかけてしまい驚かせてしまったのが原因なので」


 ニーナのお礼の言葉と態度を受けて、その人物は自分が原因だと言ってニーナに頭を下げる。


「ま、魔人族が何故ここに!?」


 そんなやりとりがされていた3人に大きな声が聞こえてくる。3人はその声の方を振り返ると、若い兵士がニーナを睨みながら槍を構えている。


「そんなに慌ててどうしたんですか?ただの魔人族の女性ですよ?」


 若い兵士の態度にニーナは一歩下がった。そして、その横に立っていたゼロはニーナの前に立つと若い兵士に声をかける。


「そうそう、ただ少しきれいなだけの女性だね」


 ゼロの言葉を肯定するように後から来た人物も声をかける。もっとも、ゼロの言葉とはある点について内容が異なっていた。


「まぁ、そうだな、ただの女性だ。だからその槍を下ろせ」

「し、しかし魔人族ですよ?」


 年上の兵士が若い兵士の横に立ち槍を掴んで声をかける。


「確かにこの辺じゃ魔人族は珍しいけどいないわけじゃないだろ?」

「い、いえ、そういうことではなく」


 年上の兵士は槍を掴んだまま若い兵士と話を続ける。若い兵士ももはや槍を握っている手には力が入っていないが、言葉は何かを言い淀んでいる。


「いいか?魔王はもういない・・・・・・・・。それに魔人族についても・・・・・・・・全世界に向けて話があっただろ?」

「……はい、そうですね……」


 年上の兵士に言われた言葉を受け、若い兵士は年上の兵士を見つめ、そのまま少し沈黙した後にゆっくりと答えた。


「ニーナさんだったか?急に槍なんて向けて悪かったな。こいつには後でしっかり言っておくから」

「いえ、大丈夫です……」


 年上の兵士は槍から手を離し、ニーナにバツが悪そうに頬を掻きながらぶっきらぼうに謝る。ニーナはその言葉に少し沈んだような声で返事をした。


「突然申し訳ありませんでした」


 若い兵士も年上の兵士に続いてニーナに謝罪する。ニーナは若い兵士に対しては少し頭を下げるのみだった。


「じゃあもうニーナの顔も見たし町に入っていいか?」

「あぁ、大丈夫だ。ようこそマルクラスの町へ」


 そのやりとりが終わったのを見て、ゼロは兵士たちに声をかける。年上の兵士がゼロに答えてニーナに歓迎のあいさつをすると扉の方へ歩き出す。


「あ、じゃあ僕も一緒に入れてもらおうかな?はい、ギルドカード」


 年上の兵士の後に続いてゼロとニーナが歩き出すと、後から来た人物も扉が開くタイミングで一緒に中に入るために若い兵士にギルドカードを見せる。


「はい、ノーマンさんですね。いつもお疲れ様です。どうぞ」


 簡単にギルドカードを確認した若い兵士はその人物、ノーマンと呼ばれる男性にねぎらいの声をかけると扉の方に手を動かして通行の許可を示す。


「ありがとう」


 ノーマンは若い兵士に笑顔で声をかけるとゼロたちの方にかけてくる。


「ついでだから僕も一緒に入らせてもらうよ」

「わかりました。まぁ、ノーマンさんなら問題ないでしょう」


 先ほどまでゼロたちに砕けた口調で話していた年上の兵士がノーマンには丁寧な言葉で返答をしていた。そして、扉を抜けて、壁の中を歩いているとき、ニーナはゼロに小声で話しかける。


「ゼロ、彼は有名なの?」

「ん?あぁ、ノーマンって名前でな、4級上位の冒険者だ」

「4級上位?」


 ゼロの説明で出てきた冒険者の階級についてニーナはピンと来ていない。階級についての説明は受けたがその階級の詳しい説明は聞いていなかったからだ。


「10段階の最高が5級上位、この階級には世界の全種族を合わせて10人しかいない。1人で国を2つ3つは潰せる実力があるらしい」

「く、国を2つ3つ?」

「んで、5級下位は世界の全種族合わせて40人程度。国1つは潰せるくらいらしい」

「国1つ……」

「その次が4級上位、世界の全種族合わせて100人前後で、魔物の上位に位置するドラゴンなら1人で難なく倒せる」

「ドラゴンを……」


 ゼロの大まかな実力の説明を聞いてニーナは絶句した。


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