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転職やら引っ越しやらで投稿が大変遅くなりました。
申し訳ありません。
新しい環境にも慣れたので投稿を再開します。
しかし、今まで投稿していた内容について無理があったので
改めて内容を改変して1から投稿しなおします。
大まかな設定は変わっていません。
これからよろしくお願いします。
日が落ち暗くなった森の中、森に住む夜行性の魔物が活発に動き始めようとしていた。この世界で冒険者と言われるものでも好き好んで夜の森には入らない。そんな森の中を走っている人影がいる。その人物達は黒いローブを着ていて頭にはフードも被っている。その人物達は先頭を走る1人を後ろから2人が追いかけているようだ。
「はぁ……はぁ……」
先頭を走っている人物は体力の限界に近く、息を切らしながらも一生懸命前へと進んでいく。その後ろから走る2人には余裕が見えるが、無理に追いつこうという感じではない。
「お待ちください!我々の話を聞いていただけませんか!」
「はぁ……はぁ……」
後ろを走るうちの1人が声をかけるが、前を走る人物は答えない。さらに、前を走る人物は急に走る方向を変えて、斜めに走り始める。その時、後ろを走っていたもう1人が声を上げる。
「……っ!まずいですよ、人の気配がします!」
「なるほど、その気配に向かって走っていったのか」
それを聞いて声をかけていた人物はもう1人の前に手を出し、走る速度を緩める。その行動を見て気配に気づいた人物は困惑しながら手を出した相手を見ながら速度を緩める。
「いいんですか?」
「今は見つかることの方がまずい、それに今すぐというわけにもいかないからな」
「……そうですね、わかりました」
2人はそのまま足を止めると元来た方へと走り去っていった。後ろを振り向きながら走っていた先頭の人物は追ってきている2人が諦めたのを確認して少し速度を落としながら人の気配のする方へと向かう。
追われていた人物が少し歩いて息が整ってきたときに視界に入ったのは、足元を見回しながら歩いている少年の姿だった。見た目は人族だが、黒髪黒目という少し珍しい特徴がある。服装は一般的な服装に皮でできた胸当てと腰には剣を2本下げている。顔はまだまだ幼さがあり青年という年齢では無さそうだった。その少年を観察するため木の影に隠れながら様子を見ることにした。
こんな時間に少年が森で何をしているのだろうと思いながら見ていると、いきなり屈んで足元のあたりで何かしている。ローブの人物からは少年の手元がよく見えず何をしているのかわからない。そのため、少し身体を乗り出して様子を見ようとする。
パキッ!
足を一歩踏み出したところに枝があり、折れる音がしてしまった。その音を聞いて少年は立ち上がる。片手には何かを持っていて、もう片方の手を剣にかけて音がした方に身体を向ける。少年は手に持っていた何かを手放し、その手も剣にかけると少しずつローブの人物の方へと近づいていく。
「待って!怪しい者じゃない!」
少年が剣に手をかけながら近づいてくるので、ローブの人物は木の影から両手をあげながら出てくる。
「とりあえず魔物じゃないのはわかったけど、フードを被ってて顔がわからない人を怪しくないとは思わない。ローブを脱いで顔を見せてもらえるかな?」
その言葉にローブの人物は躊躇する。
「何故脱がない?」
その様子を見て少年は、警戒心を強めたように剣を握る手に力を入れる。
「わ、分かった!顔を見せるよ!けど驚かないでほしい」
そう言ってローブの人物はフードを取った。その顔はとてもきれいで、少女の幼さがまだ残っているが女性としての美しさがある。白く長い髪はうっすらと差し込んでくる月の光を浴びてキラキラと輝いている。瞳は赤く、その目には強い意志が浮かんでいる。そして、その女性の額からは2本の角が生えている。そして、右目の目元には小さく赤い幾何学模様があった。その髪や目の色、角と目元の模様という特徴から魔人族であるということがわかる。
少年はその女性の顔を見て剣を握る力を緩めた。
「魔人族か」
その少年は魔人族を見たにも関わらず剣を握る力を緩め剣から手を離した。その様子を見て女性は驚きながら少年に訪ねる。
「魔人族が怖くないの?」
「魔人族が危険だっていうのは誤解だったんだろ?」
女性は少年の言葉に驚き、しかし安堵するように優しく微笑んだ。
「そうだね、私は危険な魔人族なんかじゃない」
「だよな、ところで女性が1人でこんな森で何してるんだ?」
少年は女性に笑い返すとそう問いかける。女性はなんと答えるかを悩んでふと気づく。
「私もだけど君もこんな夜の森で何してるの?」
「夜の森?」
その言葉に疑問を持ち、少年は周りを見渡している。そして、今気づいたように驚いている。
「うわ!ほんとに真っ暗だ!いつの間にこんな時間に……」
「え?夜の森に入ってきたんじゃないの?」
「薬草を採取してたら夢中になってな、全然気づかなかった。そういえば途中から薬草が見つけにくいなと思ってたんだよな~」
そんなことを言いながら「まいったな~」とつぶやいている。女性は先ほどから少年の言葉遣いが見た目に合ってないなと思っていた。
「じゃあ急いで森から出ないとね、夜の森は危ないよ?」
「そうだな、急いで戻らないと。魔人族なら女性でも森に1人でいても納得だな」
「まぁ、あまり戦うのは得意じゃないけどね」
「そうか。俺はゼロ、1級下位の冒険者だが戦うのは得意だから任せな」
「私はニーナ、じゃあその時はよろしくね」
「ニーナか、よろしくな」
ゼロは先ほど投げた薬草を拾って腰の袋に入れると、2人は並んで森から出るために歩き始める。
「その腰の袋ってもしかして魔法の袋?」
歩き始めるとニーナは先ほどのゼロの行動を見て質問する。
「そうだな、まぁ少しいいものだからそこそこ入る」
そう言いながらゼロは腰の魔法の袋に触る。魔法の袋は見た目に対して、それ以上に物を入れることのできるアイテムで、容量やオプションによって値段は大きく変わる。しかし、どんなに安くても金貨で10枚以上はする高級品である。
「貰い物?」
「まぁ、色々あってな」
そんな話をしながら森を歩いていると不意にニーナが足を止める。
「まずいわ、囲まれた」
「多分、フォレストウルフだろうな」
ニーナの横でゼロも足を止めると片方だけ剣を抜く。
「10匹以上いるけど大丈夫?」
ニーナは横で剣を構えるゼロに声をかける。
「ニーナは自分を守ってもらえれば大丈夫だ」
「わかったわ、なら守るのを優先するわね」
2人の会話が途切れた瞬間にフォレストウルフが一斉にとびかかってきた。前からだけでなく横や後ろから一斉にだ。まさかいきなり一斉に来るとは思わず、ニーナは身体が固まり思わず目を瞑る。その時、風を切る音とフォレストウルフの鳴き声が聞こえた。
「??」
その音の後は何も音がせずに静寂があたりをつつむ。ニーナは恐る恐る目を開ける。
「終わったけど、本当に戦いが苦手なんだな」
ゼロの声は先ほどより少し離れたところで聞こえた。そちらを向くと、血がついた剣を持つゼロの姿が見えた。しかし、剣に血はついているが、服に返り血等は浴びていないようだった。もちろんそのゼロの周りにはフォレストウルフが倒れている。いや、正確にはニーナの周りにフォレストウルフがそこら中に倒れている。もちろんそのどれもがぴくりとも動かないので死んでいるのは間違いないだろう。
ゼロは魔法の袋から布を取り出して剣についている血を拭きながら近づいてくる。
「素材とか取って森からでるか」
そう言ってゼロは剣を腰にある鞘に戻した。