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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
15 新聞記事
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新聞記事 Ⅵ




「これですかね?」


「ありがとうございます。」



 みのりはそれを受け取って、閲覧用の机へと持って行って、開いてみる。政治面、経済面と飛ばしていき、県内の話題が載せられているところで、



――あった…!



その記事と写真を見つけた。



 まるで宝物を探し当てたように、みのりの胸が高鳴って手が震えた。


 縦10cmはあろうかという写真は白黒だが、すぐに遼太郎と判る選手が、ボールを抱えて相手にぶつかっていく場面が写されていた。記事も簡単だが、試合の内容が書かれている。



 遼太郎の喜ぶ顔が目に浮かんで、みのりは自然に口元がほころんだ。



 記事のところを開いたまま、カウンターまで持っていき、



「コピーをして頂きたいんですけど。」



と、職員へと声をかける。


 所定の用紙が渡され、必要事項を書き込んで、新聞と一緒に渡す。



「1枚30円かかりますが、よろしいですか?」



「はい、かまいません。あの、ここのところの記事だけをA4でお願いします。あ、日付も入るようにして下さい。写真がきれいにコピーされるように、濃度に気を付けてください。」



 みのりが細かい注文を付けるので、図書館の職員は辟易気味の表情をした。でも、どう思われようが、大事な記事なので妥協はできない。



「ご自分でなさいますか?」



 職員はカウンターの中のコピー機を指差して言った。みのりはその言葉に甘えて、そうさせてもらった。

 いつも授業プリントや試験問題などを作成するときに写真のコピーはしているので、みのりにはここの職員よりもうまくできる自信はあった。



 新聞名と日付を入れた記事全体のコピーをとり、写真のところを大きくしたコピーもとる。そして、もう一枚、自分の手元に残しておく分のコピーもとった。



 料金を支払う時、



「生徒さんの記事ですか?」



と訊かれ、芳野高校の教員とバレてることに、ギクリとしてちょっと肝を冷やす。

 それまでのうるさい注文も帳消しにするように、



「ええ、そうなんです。」



と、にこやかな笑顔を作って職員に新聞を返した。



 それから、用意していたクリアファイルに丁寧に挟み込んで、図書館を出た。



 学校へ戻る途中、第2グラウンドの前を通りかかったとき、みのりの足は自然と校門の方ではなくグラウンドの方へと向いていた。



 道路を挟んで向かいにある管理棟の職員室からは、いつも照明だけしか見えなかった場所。「あの下で練習してるんだろうな…」と、いつも思っていたところへ、みのりは初めて足を踏み入れた。



 ここはラグビー部しか使わないからか、第1グラウンドよりも荒れていて、隅の方は丈の短い雑草が生えている。加えて、午後からの雨でぬかるんでいるので、みのりのかかとの低いパンプスでも歩きにくい。


 一歩一歩慎重に歩くみのりが姿を現すと、いやがおうでも皆の目についた。


 みのりが練習を横目に見ながら、マネージャーがいる場所まで歩いて行くと、先日遼太郎の救護の時に顔を合わせた子は、親しげにみのりに挨拶して頭を下げた。



 練習は、フォワードとバックスとで分かれて行われているらしい。手前の方で練習しているバックスの、中でも遼太郎の姿を確認してから、みのりはマネージャーに新聞のコピーを託けて職員室に戻ろうとした。



「もうすぐ6時になったら、休憩が入りますよ?」



 そう言って、せっかくマネージャーが気を利かせてくれたので、みのりは休憩まで練習を見学することにした。



 11月も中旬になると、日が落ちれば冷え込んでくる。みのりはうすら寒さを覚えたが、練習をする生徒たちからは湯気が立ち上らんばかりの熱気が漂っていた。



 このぬかるんだグラウンドでタックルなどの練習を繰り返したのだろう。生徒たちのジャージはおろか、顔もヘッドキャップも既に泥まみれになっていた。



 練習を見ながら、試合ではないラグビーをする遼太郎を、殆ど見たことがないことに、みのりは気づいた。

 みのりが恐れをなした「戦う男」の顔ではなく、どちらかと言うと、みのりにラグビーのルールを教えてくれた時の表情に近い。


 そんなことを思いながら遼太郎の顔を見ていると、不意に遼太郎が視線をよこして目が合った。


 突然のことに、みのりが顔を作れずにいると、遼太郎の方がニコリと笑顔を見せてくれた。反射的に、みのりの心臓が跳ね上がる。



 ここにいるはずのない自分が、ひどく場違いな感じがして、みのりは何だか恥ずかしくなった。


 それをごまかすように、みのりは周りの様々な物、たくさんのラグビーボールや積み重なるコンタクトバッグ、黄色やオレンジのマーカー、少し離れたところにある部室などに、キョロキョロと目を移した。




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