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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
15 新聞記事
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新聞記事 Ⅴ




「あっ、私の箸、そのまま使っちゃった。ごめんね。」



 みのりがそう指摘すると、遼太郎は食べ終えようとしていた卵焼きでむせそうになった。慌てて手で口を押える。



「大丈夫?お茶、飲んで。これは、まだ口を付けてないから。」



と、みのりはマグカップに淹れたお茶を、遼太郎に差し出した。


 お茶を飲んで一息ついた遼太郎は、赤い顔をして小さく頭を下げた。



「おいしかったです。ありがとうございます。」



 遼太郎から受け取ったお茶を手に、みのりは満足そうな笑みで頷いた。



「それで?頼みたいことって何?」



と言いつつ、みのりは無意識に手に持ったコーヒーカップを口に運ぶ。


 同じ右手で持ち手を持ったことに、遼太郎は気が付いて、目が釘付けになった。



――お、俺も先生と間接キスか……!?



 何も言いださない遼太郎を、みのりは不思議そうに椅子に座ったまま見上げている。



「…狩野くん?」


「あっ、あの、先生。学校の新聞って、何を取ってるんですか?」



 心臓はバクバク言っていたが、遼太郎はかろうじて本題を告げることができた。



「新聞?」


「朝読新聞は学校にありますか?」


「うーん、どうだったかな?見た覚えがないんだけど……。」



と、みのりはコーヒーカップを机に置いて、立ち上がった。


 給湯室に向かうと、そこのスタンドに置いてある新聞を確かめる。



「ああ、やっぱり。毎朝と日々と、県民新聞しかないわね。」


「……そうですか。」



 給湯室まで付いて来ていた遼太郎は、落胆の声を漏らす。



「朝読新聞がどうしたの?」



と、みのりが訊くと、



「いや、この前の試合の記事で俺の写真が出てたって聞いたんで…。」



と、遼太郎はポツリと言った。



「ええっ!?狩野くんの写真が?すごいじゃない!」



みのりは目を丸くして驚く。



「この前の試合の記事なら、日曜日の新聞に出てるの?」


「多分そうだと思うんですけど、うちは県民新聞だから…。」


「そうかぁ、私も新聞取ってないしなぁ…。それに、あんまり朝読新聞取ってるおうちって少ないよね…。うん!でも、分かった!朝読新聞、なんとか探してみる。」


「えっ、でも。先生、忙しそうだから、なんか悪いし…。」



 躊躇する遼太郎だったが、少しの期待もにおわせていた。



「大丈夫、私、今日は授業ないから。忙しくないの。」



と、みのりはにっこり笑い、遼太郎を安心させるように背中をポンポンと叩いて、教室へと送り出した。




 遼太郎の写真が新聞に出ていると知って、みのり自身が、何が何でもその記事を見たくてしょうがなかった。


 その欲求を満たすためならば、忙しい仕事も後回しにして、すぐにでも動き出せるエネルギーが満ち満ちていた。もしかしたら、遼太郎本人よりもその情熱は大きいかもしれない。



 実は、みのりには記事を手に入れる〝当て〟があった。

 高校のすぐ近くにある市立図書館だ。図書館だったら、全国紙が揃っているはずだと思った。


 昼食を済ませてすぐに図書館へ行ってみようと思ったのだが、朝からどんよりしていた空から、あいにく雨が降り出した。朝は降ってなかったので、傘がない。

 小雨だが濡れていくわけにもいかず、研究授業の準備をしながら、まんじりと雨が止むのを待っていた。



 雨が止んだのは、放課後になってから、5時も過ぎようという頃だった。


 出来れば、終礼までに手に入れて遼太郎に渡してあげたかったのだが、今はもう部活に行ってしまっているだろう。

 それでも、図書館の開館時間は6時までなので、今から行けば明日の朝の個別指導の時に渡せる。



 みのりは小さいバッグを抱え、記事のコピーを挟むためクリアファイルを手に持って、徒歩で図書館へと向かった。



 校門を出てすぐの、道路を渡ったところに第2グラウンドがある。晩秋の夕暮れは早く、もう薄暗くなったグラウンドには照明の灯が入っていた。



 この第2グラウンドでラグビー部は練習をしているはずだ。みのりはちょっと練習を見てみたい気もしたが、今は図書館へ行かねばならないので、先を急いだ。



 歩いて10分もしないうちに図書館へ到着。カウンターとは反対側にある新聞コーナーへと足を運ぶ。

 朝読新聞を開いてみるが、月曜日からの新聞からしか綴じられていない。



――え!?もしかして、もうないの?



 小さな落胆が、みのりの中をよぎった……。

 いやでも、まだ諦めてなるものかと、みのりはカウンターへと向かう。



「すみません。朝読新聞の日曜日の分を閲覧したいんですけど、あちらには月曜日からの分しかなくて…。日曜日の分は見ることができますか?」



 その場にいた職員に訊いてみるが、その職員はよく分からないらしく、別の職員を呼んできたので、みのりはもう一度同じ説明をした。図書館の職員は、頷いて奥へと姿を消し、5分ほどして1部の新聞を手に持って現れた。





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