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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
13 ざわめく心
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ざわめく心 Ⅰ




 10月の最後の週末から、全国高等学校体育大会ラグビーフットボール大会県予選会、いわゆる花園の予選は始まった。


 試合は週末ごとに行われ、11月の下旬が決勝戦の予定だ。ラグビー部のある高校はそう多くはなく、あっても15人のレギュラーメンバーが揃わない学校もあり、出場校は案外少ない。なので、4回ほど勝ち上がれば、5回目の試合が決勝戦となる。



 遼太郎の熱心なレクチャーもあって、難解なラグビーのルールも、みのりはしっかり習得し、その知識を早く実戦で確かめたくてウズウズしていた。



 遼太郎のラグビーの説明は、みのりに解ってもらいたい一心だったためか、とても適切で解りやすいものだった。


 ラグビーへの愛さえ感じられる遼太郎の態度は、みのりの遼太郎に対する興味をいっそう強くさせた。




 初戦の試合当日、何も予定を入れなかったみのりは、早めに競技場へ到着し、ラグビー部員たちの練習風景を眺めていた。


 今回は変装などはしていないので、顧問の江口もみのりに気がつき、片手を挙げて挨拶してくれた。



 コンタクトバッグに向かって順番に当たる練習をしていた選手たちの中から、最初にみのりに気づいたのは二俣だった。



 二俣はみのりに合図をするよりも先に、遼太郎のところへ行って、みのりが来ていることを告げる。



 遼太郎はみのりに視線を投げ、ニコリと笑顔を見せてくれる。みのりが同じ笑顔を返して手を振ると、それに力を得たように、遼太郎はヘッドキャップを被り直してコンタクトバッグに勢いよく当たった。


 試合本番は、タックルに来る選手も勢いづいて当たってくるので、ぶつかり合う時の衝撃はもっと激しいに違いない。

 そんな妨害に遇いながら、戦略通りに攻撃をするなんて、本当に大変なことなんだろう…と、みのりは改めて感心してしまう。



 他の応援客がパンフレットを持っていたので、みのりも1部数百円のそれを買い求め、パラパラとめくってみる。

 そのパンフレットにはトーナメントの対戦表や各高校の選手の一覧が載せられている。



――わ、ポジションだけじゃなく、身長と体重まである…。



 やはりラグビーには、身体の大きさというのは重要らしい。みのりは意識せず、いち早く遼太郎のところを確認していた。



――狩野くんは178cmで73kg、見た目より案外重たいんだな…。



 遼太郎はどちらかというと細身の印象だ。けれど、73kgもあるということは、あの身体は、よほど鍛えられた筋肉で被われているのだろう。



――二俣くんは188cmで90kg、やっぱり大きいねー。衛藤くんはフッカーで173㎝85㎏、やっぱりずんぐり君だからだね…。都留山高校は…?



とページをめくって、みのりは分析を始めた。



 比べてみて、都留山高校との身体の大きさの違いは、歴然としていた。さすがに、県内外から生徒を集めているだけのことはある。



――狩野くんも、あと10㎏せめて5kg体重があれば、当たり負けしないかもしれないけど、こんなでっかい子達にタックルされたら、ひとたまりもないだろうな…。



 逆に、大きい選手はタックルで倒されにくい、ということだ。

 もちろんラグビーは、身体の小さい選手でも活躍できるスポーツだ。けれども、身体と身体をぶつけ合う以上、当たり負けしない屈強さはあったに越したことはない。


 遼太郎にいろいろ教えてもらえたことが役に立って、みのりのラグビーに対する捉え所も変わってきていた。



 もし、決勝戦で都留山高校と対戦することになれば、苦戦を強いられることになるだろう。

 みのりの心はピッチに立つ遼太郎に同化し、その苦境を想像して胸が苦しくなった。




 でも、今日の敵は都留山高校ではない。まさか、初戦を落とすことはないとは思うが、一戦一戦が敗けたら終わりの大事な試合だ。みのりはいささか緊張してきて、鼓動が速くなった。



 開始時刻が近くなり、選手たちは試合用のジャージを着て競技場に姿を現した。


 みのりの緊張とは裏腹に、選手たちはリラックスしたいい表情をしている。まるで、この大会が始まるのを心待ちにしていたみたいだ。


 みのりはそこでハッと目がさめる。

 選手たちにとってこれは最後の大会ではなく、夢の花園への始まりなのだと。


 それに気づいたみのりは、遼太郎たちが夢をかけて闘う、この大会の一戦一戦をちゃんと観て、覚えておこうと思った。

 ほんの数ヵ月間だけれども、彼らがその夢に向けて、たゆまぬ努力をしてきたことを知っていたから――。




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