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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
11 絶世の美女
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絶世の美女 Ⅳ




「本当?峰不二子みたい?」



「………は?峰不二子?」



 遼太郎は、みのりの突飛で不可解な言葉に、いきなり思考がその部分だけ鮮明になった。



「そう!ルパン三世の峰不二子。綺麗と言えば、彼女でしょう?」



「……はぁ……」



 何故みのりがそう思うのかは、全くもって理解不能だったが、峰不二子の妖艶な姿が遼太郎の頭をよぎった。


 みのりがあんな女性に変貌するとは、到底信じがたかったが、もしみのりがあんな官能的になったところを想像しただけでも、遼太郎はもう鼻血が出そうだった。




 遼太郎が絶句しているので、みのりは持論を展開し始める。



「彼女は必要に応じていろんなタイプの女の人になるでしょう?今日の私は彼女がお手本よ。どう?」



と、みのりは腰に手を当てた。



「どうって…。いや、でも、随分違うし…。」



 そっけなくしか返答できなかった遼太郎だったが、みのりの決めポーズに内心はどぎまぎして、何と答えていいか分からなかった。



「何だ…。やっぱり違うよね。……って、今日はステージにも立つし、大臣の接待もするから、盛装して来いって言われたからしたまで、だしね。」



 みのりがおどけたように両手を上げて肩をすくめると、いつものみのりの感じが確かめられたようで、遼太郎はほのかに笑った。



――峰不二子とは違うけど、ずっと先生の方が綺麗だし……。



 本当は声に出して伝えたかったが、胸が高鳴って、頭の中で語りかけるので精いっぱいだった。



「でも、私、盛装って言えるスーツ持ってないから、これ、5年前に買ったお見合い用よ。」



「……は?お見合い?」



 突拍子もないみのりの話の展開に、遼太郎は思わず合いの手が口をついて出た。




 みのりがハッと口を押えて、遼太郎を見遣った。でも、話を振って気に留められてしまったからには、説明する必要に駆られる。



「大学院出てから仕事がないときがあってね。その時、親にさせられたのよ。うちの家って特殊だから、お付き合い上断れなくてね。でもって、このスーツを買ってもらったってわけ。」



 みのりが何気ない世間話をしている間も、遼太郎はしっかりとレーダーを張り巡らせて、みのりの情報を聞き取っていた。



――先生は大学院まで出てるのか…。特殊な家ってどういうことだろう…?



 そこで話が止まって、みのりが遼太郎に用件を切り出すように促す視線を投げかけた。視線が合うと、自然に微笑みをたたえる。


 みのりが優しく微笑んだ時に、遼太郎の心臓は再び激しく鼓動を打ち始め、思考は停止してしまう。



 遼太郎が何も言葉を返さないので、みのりは首を傾げて遼太郎の様子を窺った。



「どうかした?私、狩野くんのこと呼んでたっけ?」



と、みのりが本題を聞き出そうとしたので、遼太郎は何のためにここにいるのか、ようやく思い出せた。



「あの、指定校推薦なんですが……。」



と、遼太郎が言いかけた時、みのりの顔つきが変わった。



「指定校推薦、決まった?」


「はい。」


「法南大学?」


「はい。」



「………。」



 言葉を詰まらせたみのりの表情が、驚きから安堵へ、そして歓喜へと移り変わった。肩で大きく息をして、いつもよりも際立った大きな瞳が潤んで輝きを増す。



 みのりのその様子を見て、遼太郎の胸は愛しさと切なさで、張り裂けそうになった。



「……よかったねぇ。」



 みのりはようやく短くそう言うと、本当に嬉しそうに微笑んだ。


 遼太郎は、指定校推薦が決まったことはもちろん嬉しかったが、みのりにこんな顔をしてもらえることの方が嬉しかった。また、こんな笑顔を見るためだったら、どんな努力でも出来そうだった。



「でも、『おめでとう』を言うのは、合格してからにしとく。」



 指定校推薦は、ほぼ合格することは確実だが、入試当日までに何があるか分からない。


 みのりの言葉は暗に、これからラグビーの花園予選と同時に入試の準備をしなければならないことを示して、気を抜かずに頑張るように激励するものだった。


 心得た視線を投げかけ、遼太郎は頷いた。




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