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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
10 女同士の話
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女同士の話 Ⅵ



 食事が終わって、紅茶を淹れながら、みのりは二人に話を振った。



「何か、生徒の中での話題で、面白い話はないの?」


「面白い話?」



 二人はみのりを見て、それから顔を見合わせる。



「面白い話なら、学校の裏サイトとか見てみたら?いろいろ書いてあるよ。」



 裏サイトと聞いて、みのりは苦い顔をして首を横に振った。そういうものがあるという存在は知っていたけど、見てみたことはない。



「いや、あれは。悪口とか書いてあるんでしょ?自分のこと『口うるさいオバサン』なんて 書かれてたら嫌だから、見たくない。」



「まあ、確かに悪口はたくさん書いてあるかも…。でも、先生のことは書かれてないよ。それに、先生は純粋そうで、いい子ちゃんだから、あんなの見たら卒倒しちゃうかもね。」



――純粋そうで、いい子ちゃん……!?



 自分がそんなふうに、生徒たちから見られているとは意外だった。生徒たちは、裏サイトに書かれている内容が自分たちには耐えられても、みのりには耐えられないと思っている。

 実際、見てみたいとも思わなかったが、そんなサイトの存在がみのりに心に影を落とした。



「そんな裏サイトのことじゃなくて……、そうねえ。君たちの恋バナなんか、どう?」



と、みのりは話の方向を変える。



「えっ!?私たちの恋バナ?」



 二人は、一瞬黙り込んだ。



「ないない!全然ない!見てて分かるでしょ?先生!」


「だーって、全然いい男いないんだもんー!!」



 いきなり激しい反応を見せた宇佐美と平野に、みのりは目を丸くする。

 ちょっとは照れ隠しもあるのかもしれないが、この大袈裟すぎる反応は、何だかちょっとオバサンくさくもある。



「いい男いないかなぁー?結構身近にいそうだと思うけど……。」



――狩野くんなんて、いい男じゃないの……。



と思いながら、みのりはつぶやいた。



「ええっ!?そう?例えば、誰がいる?先生。」



 宇佐美が身を乗り出す。

 みのりは紅茶のカップをそれぞれの前に置きながら、目をパチパチさせた。




 いきなり遼太郎を持ち出すのは、ちょっと不自然な感じがしたので、少し考える。



「……例えば、平井くんとか、モテるよね?」


「ああ!?平井?ダメよー、あれは―。」


「そうそう、モテてるから、とっかえひっかえだもん。」


「気のいい奴だから、コクられたら、すぐなびいちゃう。」



 この二人の分析に、みのりはすっかり気圧されてしまった。



「ああ……そうなんだ。じゃあ、二俣くんは?」


「二俣は、彼女いるじゃん。」


「中学校の時から付き合ってるんでしょ?平井とは正反対だよねー。『ふたまた』って名前だけど身持ちがいい。アハハ!」



――おお!そうなんだ。あの子とは中学校の時から付き合ってるんだ……!



 みのりは頬杖をついて、面白そうに話に聞き入る。



「何?先生。二俣みたいなのが好みなの?」



と、不意に平野から話を振られた。



「え!?」



 思ってもみない問いに、みのりはただ驚いた。



「えー、そうなの?私てっきり、先生は狩野くんがお気に入りなのかと思ってたー。」



 他意はない無邪気な宇佐美の言葉に、みのりは内心跳び上がった。



「お、お気に入り!?……な、なんで狩野くんが?」


「だって、個別指導してるじゃん。」


「個別指導は、お気に入りだからしてるんじゃないのよ。狩野くんが鍛えれば伸びるって思ったからよ。」



 真っ赤になってみのりが言い訳をするものだから、宇佐美はいっそう訝しそうな目で、みのりを見た。



「だったら、宇佐美さんもする?個別指導。あなたも、私のお気に入りよ。」



 みのりは宇佐美にそう切り返し、にっこり笑いかけた。高校生相手に、やり込められるわけにはいかない。



「いやいや、それは遠慮しときます…。」



 やぶへびとばかりに、宇佐美は首をすくめた。



「狩野くんと言えば……。2年生の子からコクられたって、なんか聞いたけど……?」



 おもむろに、平野が口を開く。



「えっ!!?」



 それを聞いたみのりと宇佐美が、同時に平野を見た。



「マジで!?今ごろコクるなんて、どうかしてる。今から入試が忙しくなるのに、迷惑なだけじゃん。」



 宇佐美はこう辛辣な意見を言ったが、確かに遼太郎にとってこれからが一番の正念場だから、一理あるかもしれない。



 前からつき合っている彼女なら、励ましにもなるだろうが、これから関係を築くことに気を逸らされると、他のことに支障が出かねない……と、みのりも思った。



「それで、狩野くんは何て答えたの?」



 みのりは、その答えが気になってしょうがなかった。優しい遼太郎のことだから、もしかしてつき合うことにしたかもしれない。



「さあ…?よく知らないけど、好きな子がいるとかどうとか言ったみたいで、断ったみたいよ。」



 平野のあんまり興味のなさそうな返答を聞いて、みのりはホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、



――好きな子…!?



と、別の事が気になった。



――狩野くんって、自分の恋愛に関しては素っ気なくて、全然興味ない感じだったけど…….、ちゃんと好きな子はいたんだ……。



と、平野の話と普段の遼太郎の感じとがかけ離れていることが、みのりはすっきりしない。


 自分が知らない遼太郎の一部分がある。

 遼太郎は、教師の自分には言えない秘密を抱えている。


 その事実は、すんなりとみのりの腑に落ちてくれず、もどかしさを感じさせ、落ち着かせなかった。



 そこで、みのりは自分が悶々と物思いをしていることに気がついた。



――健全な18歳の男の子なんだから、好きな子がいるくらい当然のことじゃない……。



 そう自分に言い聞かせて、心の中のざわめきを気取られないように笑顔を作った。






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