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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
10 女同士の話
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女同士の話 Ⅴ



 宇佐美と平野がみのりのアパートにやって来る日は、清々しい秋晴れの日になった。


 もうすぐ到着するというメールを受けとると、みのりはベランダに出て、橋を渡って川沿いの道を自転車に乗る二人を見つけた。



「いらっしゃい。」



と声をかけると、二人ともみのりを見上げて手を振った。



「わー、先生の部屋って、やっぱ日本史なだけあって、和風だねー。」



 平野が和ダンスのチェストや、その上に置かれている和紙のランプを見ながら言った。ランプの横で焚かれているお香を、目を閉じて聞いている。



「うわ!この本の量。すごいね先生。全部読んでんの?わわっ!『切腹の歴史』なんて本もあるよ?!」



 宇佐美は本棚に並んである日本史の専門書に目を付けた。



「先生!なにこれ!昔の人が書いたやつ?」



 平野が机の上に置かれている物を指差して言った。宇佐美もそれを見に寄ってくる。



「それは、古文書っていうの。江戸時代の初めに書かれた検地帳よ。ちょっと校長先生から解読を頼まれちゃって。」


「ええー、すごい!先生、これ読めちゃうんだ!」



 何でも驚いた反応を見せる二人に、みのりは逆に驚いてしまう。どちらかというと自分も感激しやすい方だと思うが、ここまでではない。



 若いとこんなに、何にでも感動できるものなのか……。それとも、年を取るにつれて、こんな感覚を忘れてしまったのか……。

 ちょっとギャップを感じてしまうみのりだった。



「え、検地帳って何だっけ?」



 平野がそう言ったので、みのりは眉を寄せて口を尖らせた。この平野は、この前の期末考査も全県模試も、それはもう惨憺たる結果だったから、知らなくても無理はないのかもしれない。



「……知らないの?検地帳。中学校でも習うでしょ?」



 みのりに睨まれて、平野は慌てた。



「ええと、ええと、そうそう、あれよ。……太閤検地。違う?先生?」


「うん、まあ。検地帳と言えば、それよね。でも、これは江戸時代のものだから。太閤検地の検地帳は博物館にあるくらい貴重なものなのよ。」


「へええ~…。」



 平野も宇佐美も、口をそろえて感心する。普段の授業でもそのくらい感心してくれれば眠たくならないのに…と、みのりはため息を吐いた。



 それはそうと、みのりは、普段の制服姿からは想像もできないこの二人の姿に、驚いていた。

 たかだかみのりの家に来るくらいのことなのに、二人はまさに今の高校生を体現しているように可愛く着飾っていて、その若々しさがまぶしいくらいだ。


 生徒と比べても意味のないことだけど、たとえ仕事でない日でも、みのりにはこんな格好はとてもできない。


 この子たちにとって、自分はずいぶんオバサンなんだろうな……と自覚すると、自分はもう青春を謳歌する歳でなないということに気が付いて、少し寂しくなった。



「何か飲み物でも飲む?それとも、もうお昼ご飯食べちゃう?」



 みのりが二人に訊くと、



「お昼ご飯がいい!もうお腹減ったー!!」



と、口をそろえた。


 無邪気な二人は、もうすでに自分の家にいるように、足を投げ出して座って和んでいる。何だかみのりは、母親になったような気がしてきた。



 みのりはすでに下準備をしていた食材を取り出して、料理を始めた。アラビアータのスパゲッティに、ホウレン草とベーコンのキッシュにサラダという献立。

 二人はパスタのゆで時間+αの待ち時間で、昼食にありつけた。



「すごい!すごい!先生!お店のご飯みたい!」



 このワンパターンな反応に、みのりはククク…と笑いが漏れてきた。

 みのりの〝笑い〟の意味が解らない二人は、顔を見合わせ、そしてみのりを見つめる。



「いや、何にでも感動できるって、幸せなことだなーって、思ってね。」



 みのりが頬杖をついて、愛おしそうな目で二人を見つめた。



「だーって、こんなご飯出してくれるなんて、感激しちゃうよ。」


「わ、すごいおいしいよ。食べてごらんよ。」


「ホーント、おいしい!すごいね、先生!」



 「すごい」の連発で、少々辟易ぎみのみのりだったが、一応褒め言葉のなのでありがたく受け取ることにした。

 二人は女子ながらに旺盛な食欲を見せて、あっという間にぺろりと全部平らげた。





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