表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
10 女同士の話
58/190

女同士の話 Ⅳ



「遼ちゃん、最近変わったなぁ。」



 合宿の休憩中に、二俣がスポーツ飲料を飲みながら、遼太郎の隣に腰かけた。



「ん?どこが?俺、ふっくんみたいになかなか筋肉つかないんだけどなぁ……。」



 自覚のない遼太郎は、戸惑っているような顔をした。



「いや、身体のこと言ってるんじゃなくて。最近、遼ちゃん、やる気に満ちあふれてるっていうか……。」


「ああ、そのこと。それは多分、仲松先生のお陰だと思う。」


「ん!?なんで、みのりちゃん!?見かけによらず、ラグビーのこと詳しいのか?」


「アハハハ…、そうじゃないよ。」



 突拍子のない二俣の発想に、遼太郎はみのりがラグビーをしている絵がまた頭に浮かんで、笑いが湧いて出た。



「俺が日本史の個別指導受けてたの知ってるだろ?それで、勉強の仕方を教えてもらって、それをいろんなところに生かしてるってわけ。」


「日本史とラグビーが関係あるのか?」



 二俣は訳が分からないといったふうに、顔をしかめた。


 彼のような直感で動いてそれで大抵うまくいくようなタイプでは、遼太郎の言うことはよく解らないのかもしれない。


 でも、チームのメンバーの誰もが、二俣のような能力の持ち主ではない。きちんと弱点を分析して、それでもって練習しなければ、なかなか実力は付かない。それを、みのりから言われた日本史のノートづくりで遼太郎は体得していた。

 それはラグビーだけではなく、他教科の勉強にも役立っていた。



「それが、関係あるんだな。」



 ふふんと鼻を鳴らし、得意そうな顔で遼太郎は笑った。



「よく解らんけど、みのりちゃん、すごいな。」



 二俣が感心して言うと、自分の好きな人を賞賛された遼太郎は、もっと嬉しくなる。



「うん、先生はすごいよ。」



と、優しげな表情になって相づちを打った。


 この表情を見て、二俣は何か直感で感じ取ったのか、別の話題を持ち出した。



「そう言えば、遼ちゃん。小泉智香、フッただろ?」



 いきなり二俣にその話を持ち出されて、遼太郎は腰が抜けそうになった。

 『何で知ってるんだ?』と言わんばかりの顔で、二俣を見返す。



「沙希が言ってたんだよ。『狩野さんに智香ちゃんがフラれた。』ってね。『好きな人がいるから、付き合えないって言われたみたい』って。」



 遼太郎は二俣から目を逸らして、グラウンドに生える健気な草を見つめ、顎に生える剃り残しの髭を指でこすった。



「うん。それは事実だ。」



「事実だって…、遼ちゃん……。あの子泣いてたらしいぜ……?」



 それを聞いて遼太郎の心は痛んだが、かと言って想いに応えられないことはある。

 何より、みのりのあの哀しみに比べたら、小泉智香の失恋などかわいいものだ。



「そうは言っても、ふっくんだって、沙希ちゃんがいるのに、他の子にコクられても困るだろ?同じだよ。」



 二俣は口を尖がらさせて、考え込んだ。



「同じって、遼ちゃん。彼女いんのか?誰だよ。」



「……か、彼女じゃないよ。」



 突然、遼太郎は赤面する。



「ただ、俺が一方的に想ってるだけで……。」



と、最後の方は消え入るような声になった。



「え!でも。誰だよ?遼ちゃん!俺、初めて聞くぞ!」



「今はまだ言えん!」



 好奇心に目が輝きだした二俣から、遼太郎は立ち上がって逃げ出した。


 〝好きな人は先生〟その自分にとって初めての感情は、まだ誰にも教えたくなかった。まだ今は、宝物のように胸の中の一番大切な場所に置いて、自分だけで何度も覗いてみたかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ