女同士の話 Ⅱ
考査が終わると一気にドカッと答案が返ってくるので、教師たちはせっせと採点作業に追われることになる。
みのりは一つの考査でいつも100問出題することにしており、一人に付き100回○か×かをチェックをしなくてはならない。
右手に赤ペン、左手には指サックで、一心不乱に採点しても、一クラス1時間以上はかかってしまうので、骨の折れる作業だ。これを、1年生5クラス分、3年1組の25人分、全部で225人分することになる。
これから、ほぼ一週間の間に採点し、前期の評点をだし、単位認定のための成績判定会議が行われる。さらに3年生は入試の調査書のための5段階評価も出さなければならない。
矢継ぎ早にすることが終わったら、体育の日を絡めた形ばかりの秋季休暇が待っている。
いよいよ、一番気になっていた3年1組の採点に取り掛かる。……すると、驚いたことに、期末考査の遼太郎の日本史の点数は、100点だった。
――え?……ホントに?!
これには、教えていたみのりもびっくり仰天で、どこか採点ミスがあるんじゃないかと、何度も見直してみる。それでも、やっぱり100点。
平均点は60点だったので、決して易しい問題ではなかったはずだ。
この100点は喜ばしいことではあるが、却ってみのりは不安になってくる。他教科を犠牲にしているんではないかと……。
足早に情報処理室へと赴き、そこにあるパソコンを開いて、遼太郎の他教科の状況を確認してみた。
英語も国語も数学も、日本史のように100点とはいかないが、平均よりも随分点数がいいし、前回の中間考査よりも点数は伸びている。
「うーーん……。」
みのりは唸った。
――狩野くんって、すごい!!
みのりは驚き、興奮し、絶賛していた。
日本史であれだけ負荷をかけさせられていながら、他教科でも結果を出すとは。しかも、彼はまだ現役で激しいスポーツの部活もしている。
――こんな生徒、初めてかも……。
やればやっただけ、必ず結果を出してくれる。叱咤してもへこたれることなく、期待に応えてくれる。遼太郎がこれから努力を続ければ、どこまで成長していくのだろう。
遼太郎はいつもまっすぐな目で、何でも真摯に受け止めて、すべてを自分の栄養にしているみたいだ。それでいて、他人を深く思いやり、力になろうとする優しさもある。
遼太郎はすでに、みのりの想定している〝いい男〟以上の存在なのかもしれない。
惜しむらくは、エンジンのかかるのが少々遅かったことだ。中間考査でもこれだけの成績を出せていたら、指定校推薦の選定も難なく受けられていたかもしれない。
みのりはこの件に関しては、学年部も違い進路指導部でもない部外者だったので、意見を反映させてもらえず、もどかしい気分で事の成り行きを見守るしかなかった。
全県模試での遼太郎の日本史の結果の方は、3年部の先生方も注目することになり、国立文系クラスの今一つ成績が伸び切れていない生徒を対象に、みのりに個別指導をしてもらってはどうか……という意見が出ていた。
多分、3年1組にも本試を受けることになる生徒も出てくれば、こちらも個別で入試対策をしなくてはならなくなる。これ以上、仕事の負荷を増やしたくないと思うみのりだったが、生徒のためだったら、努力は惜しみたくなかった。




