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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
6 文化祭での事件
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文化祭での事件 Ⅱ



 午後からは、やっとクラス展示や文化部の展示などを見て回れる自由時間になる。


 みのりは澄子や他の女性教師と一緒に、一通り見て回ってみたが、取り立てて『すごい!』と思える展示はなく、みんな1年5組の「暗闇迷路」レベルのものだった。


 体育館ではバンドの演奏が行われている。このバンドのステージも出演希望が多すぎて、何でもオーディションをしたとか…。何人か教えている子が頑張っていたので、なん組かの演奏を聴いた。

 


 実業系の高校に比べ、中身は今一つ盛り上がりに欠けるが、普段とは違う学校の楽しげな雰囲気が、みのりは好きだった。


 文化祭実行委員たちが一生懸命作り上げた、校舎の壁一面に飾られた、ピカソのゲルニカを模した壁画の前で、生徒たちに呼び止められ、一緒に写真に入った。



 1年5組の「暗闇迷路」が盛況かどうか、気にはなっていたが……、みのりは心に決めた通りに近づこうとはしなかった。



 次の日の午前中まで、引き続き文化祭は行われる。そして、午後は片づけに当てられ、夢のような空間は一瞬にして元の学校へと戻されるのだ。


 午前中まで行われているにはいるが、昨日と同じクラス展示とバンドの演奏が行われているだけなので、みのりは溜まっている仕事を片づけるために職員室で働いた。


 それに、教室の中はエアコンを効かせているが、廊下はやはり暑い。

 昼食後、全校生徒を集めての文化祭のフィナーレが体育館で行われるまで、みのりは職員室に籠城すると決め、コーヒーを飲んだり、仕事をしたりして時間を過ごした。



 昼食を取って、職員用のトイレへ歯磨きに行った帰り、1年5組の女の子たちに呼び止められた。



「あー、仲松先生いたー!」


「先生、私たちが一生懸命作った迷路に、一度も来てくれてないでしょー!」



 ギクリと、みのりの肩がこわばった。



「いやいや、行ったよ。迷路、結構難しかったね……。」



と言って逃げようとしたが、やはり逃がしてはくれなかった。



「いや、みんなに訊いたけど、先生は来てないって言ってたよ。先生も一緒に作ってくれたんだから、入ってみてくれなきゃ。」


「もう終わっちゃうから、早く!」



 女の子たちは、みのりの両腕を確保して、強引に教室へと向かった。



 1年5組の教室では、みのりの到着に盛り上がった。皆、クラス展示を見て回るのにも飽きて、自分のクラスへ集まってきている。


 男子生徒の一人が、



「仲松先生が来たぞー!」



と、迷路の中に向かって声をかけた。きっと、中で驚かす役の生徒に、準備を促すためだろう。



 中の暗闇で待ち受けている〝ドッキリ〟に、みのりはおののいていた。顔はこわばって、体も硬直する。



「わ、私。……ダメなのよ。こんな、お化け屋敷みたいなの、苦手なの……。」



 握り拳を口元に当てて、みのりは生徒に暗に許してくれるように懇願した。



「先生―、お化け屋敷じゃないってば!暗いけど迷路だから、大丈夫よ!」



 みのりを連れてきた女の子たちは、ニッコリして入口へと誘う。



「……ご、ごめん。やっぱり、一人じゃ無理よ……。」



 入口でみのりがしり込みすると、女の子たちは笑いながらため息をつく。



「しょうがないなぁ~。いつもの威勢はどうしたの先生?」


「じゃあ、一緒に入ってあげるよ。」



と、みのりの手を半ば強引に引っ張って、暗い迷路の中へと足を踏み入れた。



――ああ……、入ってしまった……。



 中はエアコンが効いているため、思ったより暑くはなかったが、みのりは手のひらにじっとりと汗をかいていた。


 通路はやっと一人が通ることができるくらいで、三人で手を繋ぐのは難しい。みのりは左手をひかれて、三番目についていく。


 途中、ふわりと頭上から薄い布が落ちてきた。涼感素材の布らしく、顔に当たるとヒヤッとする。



「……っっ!!?」



 みのりは思わず、声にならない悲鳴をあげた。あまりの恐怖に、声帯さえも制御が利かないらしい。



「大丈夫?先生。でもまだ序の口よ。」


「ふふ……、先生。手のひらすごい汗。」



 生徒たちは楽しんでいるようだが、みのりは本当に泣き出したくなった。


 ようやく目が慣れてきて、何となくだがうっすらと、前を歩く女の子や黒く塗られた段ボールが判別できるようになった。

 すると、今度は足に冷たい空気が当たる。



「……いやぁ……!」



 今度は意思に反して、情けない声を上げてしまった。恐怖に加え恥ずかしさに、みのりは思わず両手を口で覆う。そして、ハッと、手を離してしまったことに気が付いた。





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