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Rhapsody in Love 〜約束の場所〜  作者: 皆実 景葉
6 文化祭での事件
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文化祭での事件 Ⅰ



 後期の補習は、相変わらず勉強に前向きでない3年1組の面々に、全県模試の演習をしたのだが、暑い中での補習ということで、やはりやる気はなかった。



――こんなんじゃ、今度の全県模試はヤバいなぁ……。



 みのりは、ため息を吐きながら職員室への階段を降りた。


 もともと歴史に興味のない者に、意欲を持たせるのは至難の業だ。その点、遼太郎は興味があるのかどうか判らないが、よくやってくれてると思う。



 とはいえ、後期の補習は今日で最終日。

 午後からは本格的な文化祭の準備が始まり、教室は大改造される。明日1日は準備に当てられ、明後日から2日間文化祭は行われる。


 そして、9月になるので、夏休みも終わる。



「仲松ねえさん、一緒に準備をお願いします!」



 古庄に頼まれ、みのりは古庄と共に1年5組の教室へ行き、「暗闇迷路」作りを手伝った。



 机を3段ほど積み上げて迷路を作り、それに段ボールを貼っていく。段ボールも真っ黒に塗られていて、暗幕を張り照明を落とすと、本当に暗闇になりそうだ。


 体操服に着替えた生徒たちは、和気あいあいと作業を進めていく。



 9月にしていた文化祭では、あまり準備の時間を確保できず適当なものばかりだった気がするが、こうやって夏休み中だと十分な時間で準備ができるので、生徒たちもはりきっている。


 迷路の所々に驚かす仕掛けも作っているらしかったが、他の生徒にバラすかもしれないから…と、どんな仕掛けがあるのかは教えてもらえなかった。



 子どもの頃、近所の子ども達や同級生たちは実家の山寺の墓地を怖がっていたが、小さいころからそこが遊び場だったみのりは、怖くもなんともなかった。

 しかし、遊園地のお化け屋敷は、なぜか怖くてたまらなかった。目に見えないものよりも、暗いところで人工的に驚かされるのが嫌だったのだと思う。


 多分それは、今も変わっていない。

 みのりは、この迷路が完成しても、絶対に足を踏み入れようとは思わなかった。文化祭が始まったなら、この自分が副担任をするクラスには近づかないと、心に決めていた。



 文化祭の1日目の午前中は、体育館でステージ発表を鑑賞する。

 合唱部、演劇部、吹奏楽部、それに筝曲部などが発表するのだけれど、体育館は何しろエアコンがなく、その上1000人以上の人間がここに集まっているのだから、その暑さは尋常じゃない。



「熱中症の子が出なきゃいいけどね……。」



 みのりは澄子の隣で、2階の通路からステージを見下ろしながら言った。



「ホント、サウナみたいに暑いよね。」



 澄子も汗を拭きながら、つぶやいた。



「それに、3年生はステージ発表もクラス展示もないから、ただのお客さんだしね……。」



 澄子に言われて、みのりは階下に広がる生徒たちの海の一隅を見下ろした。一番お行儀の悪いのが、3年生の私立文系クラスだ。



「模擬店もダメになったし、あの子たちも張り合いがないのよねー。しかも、この暑さだから……。」


「ふーん……。」



 みのりは唸るようなため息をついた。



 去年までは、3年生はかき氷やらたこ焼きやらの模擬店を出せていたのだが、食中毒の心配と節電のために、昨年から中止になっていた。


 3年生にとって、もちろん勉強は大事だとは思うが、在学中3度しか経験できない文化祭を、こんなお客さん状態で参加させることに何の意味があるのだろう。


 求められてるのは学力だけじゃないはずなのに。その学力以外の力は、こんな場面で模擬店を出したりといった活動をすることで、培われるものだ。

 〝全人的な教育〟を言葉では謳っていても、『実情はこれだ……』と、みのりはいささか呆れてしまう。



 そして、こんなふうに思う自分も、模試の点数には一喜一憂してしまうわけで……。みのりは複雑な思いを抱えながら、ステージの発表を見つめた。


 そうしている内に、私立文系クラスの生徒たちの一部が騒ぎ始めた。さすがにこれはマズイ…とみのりも思っていると、特別活動主任が生徒の列の中に入っていき、騒ぎの原因になっている生徒をつまみ出した。




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