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第十四章 ノルス、あなたタキロスの 其の一

第十四章 ノルス、あなたタキロスの 


 日は暮れかけていたが、城の周りじゅう、あかあかと松明がともされ、兵士達がものものしく警備に回っている。

 背の高い兵士の一人が知らない言葉でタキロスに話しかけ、タキロスは手短に指令を出していた。


「大丈夫なの? ジェッキオ軍は?」


 知らない言葉ばかりで不安なラシュヴィーダを安心させるようにタキロスは微笑んでみせた。


「城はエルシノア軍が掌握している。ジェッキオ兵を生け捕りにしたからどうするべきか、という報告だよ」

「どうするの?」

「とりあえず地下牢に入れておく。城には古き種族が棲みついているから、彼らが見張りをしてくれるだろう。それより、ドゥムルカンがティトライカに夜襲をかけるのはありうるだろうか」

「ええ、ありえないことはないけど、この間も夜襲だったから、父も十分用心していると思うの。それに、武器を手に入れてドゥムルカンが気が大きくなってるってこともあるかもしれないし」


 タキロスが、ふとラシュヴィーダの顔をのぞき込んだので、自分は間違えたことを言ったのだろうかと心配になった。タキロスは、優しく、でも少し悲しそうに言った。


「君もずいぶん、戦局がわかるようになってきたみたいだね」

「ううん、私なんか、まだまだ」

「それだけ苦労させてしまったんだな、一年前はほんとに何も知らないと思ってた」

「ええ、知らなかったわ。子供だったと思うの。ごめんなさい、私が馬鹿なことばっかりしてしまったから、あなたにまで……」


 タキロスは柔らかい表情のまま、首をふった。


「そうじゃない。あの時は私が油断したんだ。ドゥムルカンと君たちとの関係をしっかり理解していなかった。ヘルベベスと結びたいと思うあまり、彼らを殺してはいけないと思い込んでいた。毒矢の危険についても忘れていた私が悪かったんだ」


 違う、タキロスが悪いなんてことは決してない、と心で否定しながら、ラシュヴィーダはドゥムルカンに聞いた、あの時、二十三人も死んだという話を思い出した。魔物達の協力があったとはいえ、ほとんどタキロスが掃滅そうめつしたといえる。これはもはや小さな戦だ。

 思えばあの時から、火種はできていたのだ。いや、もっと以前、自分がドゥムルカンに追われたときから。そう思うとタキロスに出会ったことは今、こういう状況に陥っている必然の運命のようにも思われた。


 黙っていたラシュヴィーダを心配したのだろうか、タキロスはもう一度確かめた。


「これから森を抜けて草原に行かなければいけないが、君は本当に大丈夫か。国内には安全な場所もある。そこで休んでいても……」 

「いいえ。大丈夫よ。夜の森は……わからないけど、あなたが一緒ならどこにでも行けるわ」


 タキロスはにこりと微笑んだ。

 

 馬が二頭引かれてきた。ナジクはあの時、逃がしてしまったが、エルシノア兵の引いてきた馬はとてもよい馬だった。タキロスの黒い愛馬と並んで駒を進めながら、ラシュヴィーダはいくつも訊きたいことがあった。


「エルシノア軍は今回はかなりやられていると聞いていたわ。アルトリス王すらメトドラを放棄して敗走して行方不明になったとか」

「ああ、その話か」

 

 タキロスは速歩はやあしで馬を進めながら軽く笑った。


「行方はくらましているが私たちは父の居場所を知っている。ここではまだ大きな声では言えないが。賞金については、俺の首がたったの五万ダリノとは安すぎると怒っていたよ」

「お元気なのね」

 

 ラシュヴィーダも思わず笑った。


「仲の悪かったバルラスと手を結んだというのは?」

「バルラスとは手を結んではいない。ただ、噂として利用させてもらった。ジェッキオがこの辺まで迫ってきたから、バルラス王は慌てて兵を出したんだ。結果は惨敗だったけどね。エルシノアは弱い、負けているとの印象を残したいから、バルラスと手を組んでまで、という話に勝手にさせてもらっている。そこまで追い詰められている、と思わせたかったんだ」

「じゃあ、ハルシアの援軍は?」

「ハルシアは援軍を出すつもりはなさそうだ。ハルシアとしてはエルシノアを助ける義理はないからね」

「でも……、私、あなたがハルシアの姫君と結婚するんだって噂を聞いたわ。だから、もうあなたとは会えないと思ってた」

「いや、その話は……」


 その時、うわーっと都にわき起こった怒号や悲鳴で、返事はかき消えた。建物のあちらこちらに火の手が上がり、そこかしこで戦いが起きている。


「都の人たちが……」


 人々の身を案じてラシュヴィーダは身構えた。武器を借りておけばよかったと思った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでくださってありがとうございます<(_ _)>


時々、ラシュヴィーダはジェッキオ語もエルシノア語もわからないということを忘れそうになり、ああ、わからないんだった、と何度も書き直しました。言葉が通じないということは面倒ですね(´・ω・`)


ご意見ご感想、ポイント評価などしてくださったら大変嬉しゅうございます。

これからもよろしくお願いいたします(^^♪

今年中には連載終了できると思っております。



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