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メモリアを求めて2

 轟音が響きわたっている。共に起きている揺れによって酒場の食器やら、酒瓶などがそこら中で割れていた。

 音を立てているのはとあるメモリア。そしてその持ち主はくだらない理由でその強大な力を誇示していた。

「こんのクソ店主が!! こーんな虫の入った飯食わせやがって!! 店ごと消し飛ばしてやらぁ!」

 左手の指に掴む、米粒より小さな虫を投げたその男の右手に持つ銃、その銃口に光のようなものを束ね始めた。明らかに超常の現象である事が分かる。

「お、お待ちください。食糧不足などでまともな食材での料理が提供できなくて、また作り直しますから」

 その料理を出した店主の女性にも彼が持っているものが如何に恐ろしいものか分かったらしい。

 どんなメモリアでもそれまでの人間たちが作り出した火器達を凌駕する力を持っている。

「嫌だねヴァアアカ!! 俺の怒りを収めるにはこの店を消し飛ばさなきゃ無理だって事が今決定した。だーかーらー消えてなくなれやー!!」

 メモリアを持つ明らかに頭の悪そうな青年がその光を放とうとしたその時だった。

「お、お母ちゃん!」

「レドグ! 逃げなさい!」

 レドグと呼ばれたその少年はあの咎に水を渡した少年だった。レドグは母親の元へと向かう。

「ハッ! バカなガキが! クソな母親と共に消し飛びなぁ!」

「お前が消えろ」

「ヘブゥッ!」

 横っ腹を思いっきり蹴られたメモリアを持った若い青年は店の外まで吹っ飛ばされて収束されていた光も消えてしまった。

 そして彼を思いっきり蹴飛ばしたのは咎である。

「さ、さっきのお兄ちゃん」

「よぉ、少年、早速さっきの借りを返せそうで何よりだぜ」

「ど、どうして」

 目をパチクリさせるレドグとその母親に咎は頼もしく感じる笑顔を見せてウインクしてから言った。

「いい事をすると必ず返ってくるから、困ってる人は助けてあげないとな」

 そう言うとレドグの母親が声をはりあげる。

「た、旅の人ですか! ダメです! 彼はメモリアを持っています! 逆らっては殺されてしまいます!」

「んぁー大丈夫。俺もメモリア使いだから」

「え!?」

 レドグの母親にさらっと告げてすぐに、店の外まで吹っ飛ばした青年のところまで来た咎。

「ほぉ、気絶させるぐらいには思いっきり蹴っ飛ばしたつもりだったけどほぼ無傷か。やっぱりメモリア使いは頑丈な身体になるな」

  吹っ飛ばされた青年は起き上がってから直ぐさま咎にメモリアを向けて言う。

「て、てめぇなにしやがる!! この俺様を誰だか知っててやってんのか!?」

「知るかよ。誰だてめぇ。てめぇこそ誰に喧嘩ふっかけられてんのか分かってんのか馬鹿」

「こ、このバリカル様を知らない……? ハッ……ハハッ……ぶっ殺してやる! 俺様のメモリア、ライトリガーでな!」

 その瞬間先ほどと同じく光が収束し始めるがどうやらさっきも溜めていたためか収束するのが先ほどよりも早い。

「見た感じ無属性っぽいな。はぁ、ハズレか」

「あぁん!?」

「こっちの話だ。てめぇそれ誰からもらった?」

「誰が教えるかヴァアアカ!! 死ねぇ!!」

 バリカルは遂にその巨大に膨れ上がった光を咎に向かって放出する。

 するとすぐに同じような光が咎側から発せられ、そして、光同士がぶつかり、相殺された。しかしその衝撃であたりに砂塵が巻き起こる。

「な、な、な、何で俺のライトリガーが効かねぇんだ……」

 惚けているバリカル彼の最大の攻撃をいとも簡単に止めたのはイリスのメモリアである。その2丁拳銃をクルクルと回しながらイリスは呆れた顔を見せる。

「隊長、今メモリア無いんですから迂闊に喧嘩売らないでくださいよ考えなし」

「え? 今考えなし、考えなしって言ったよね?」

「こんのクソが!!」

 再びライトリガーを構えたバリカルは先ほどよりも小さいが光弾を数発発射する。

「あ、やべ」

 光弾を放たれたイリスの前まで来た咎はその右手で思いっきり4.5発の光弾を殴り飛ばした・・・・・・

「は、はぁ!? ライトリガーの弾を殴り飛ばしただと!?」

 驚愕するバリカルとは裏腹に二人は全く冷静というか、いつも通りのやり取りを見せる。

「うーん、まぁまぁ痛ぇな」

「馬鹿ですねぇ……別に守ってもらわなくても撃ち落とせたのに」

「そりゃ万が一って事もあるだろう。やっぱり仲間が傷つくのはやだし」

「……そういうとこ嫌いじゃないです」

「な、なんて? お前たまに声小さすぎるからね?」

 耳を傾けてもツーンとイリスがそっぽを向いたので咎はまたバリカルに相対することにした。

「んで、てめぇはまだやんのか? こっちはそのメモリアに用があって、てめぇ自身には全く何の興味も無いんだが」

「な、何者なんだお前ら!」

 そう聞かれて咎はニヤッと笑う。

「俺たちはなぁ……あ、でももう俺たち世界の敵ファイントデアヴェルトじゃねぇのか」

「締まりませんね……まぁ、咎って言っておけばいいんじゃ無いですか?」

 どうでも良さそうにイリスが言うとそれだとばかりに咎は人差し指をイリスに向けてから口を開く。

「そだな。俺は咎だ。名前くらい聞いたことあんだろ」

「と、咎……世界の敵ファイントデアヴェルトの隊長、あのメアリカ王国やシアロ連邦をたった一人で、たった一週間で滅ぼしたと言われてる伝説の!?」

「滅ぼしてはねぇよ。敵対勢力っつーか武装チームは叩き潰したってだけだっつの」

 咎と言う名は世界に広まっている。何故なら彼とファセリア王が辿った軌跡は全ての国だった物・・・・・にとって良くも悪くも……いや、悪い意味だけで言う伝説なのだ。

「そ、そんな……あ、あの、ははっ、す、すみませんでした。お、俺もちょっとこの辺りでは強くなりすぎて調子に乗ってたというか」

 いきなり弱腰になったバリカルに咎はハァとため息を吐いて捨てる。

「戦意喪失かよ。つまんねぇなぁ。まぁ、いいや。んで、そのメモリア渡した奴の事知りたいんだが、教えてくれるよな?」

「よ、喜んで!」

 すっかり従順になったバリカルを見てイリスが呟いた。

「やっぱり隊長はヤクザの親分ですね」

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