A-1
「おぉい、兄ちゃんたち、大丈夫かー?」
知らない声が近くで聞こえ、ゆっくりと目を開ける。
体が軋むように痛い。
屋根なんかで寝れば、当たり前か。
「…えっ?」
上体を起こして見た景色は、湖になった村ではなかった。
「どこここ!?」
僕が寝ていたのは、広い道の端に植えられている、大きな木の下だった。
幸い土ではなく柔らかい草の上に身を横たえていたため、意外と汚れていない。
隣にはDが美しい気をつけの姿勢で眠っていた。
「D!起きて!」
またトリップしちゃったよ!
その声に反応したのか、肩を激しく揺さぶったからか、Dはカッと目を開け、次の瞬間、跳ね起きた。
彼の顔を覗き込んでいた僕は突然のことに反応が遅れてしまった。
ゴッ!!
鈍い音と2人分の短い絶叫が辺りに響く。
「ご、ごめん…。」
「だ、大丈夫。ぐうぅ。」
額を抑えるDと、顎を摩る僕を見ながら、さっき起こしてくれたおじさんが苦笑いした。
少し恥ずかしい。
「あんちゃんたち、もし良かったら町まで乗せてってやるよ。」
おじさんは、後ろを親指で示しながら快活に笑った。
そちらには、ダチョウのような、しかし顔はカモノハシのような、よくわからない動物がいた。
その動物の胴体には革のベルトが巻いてあり、その先に荷車が繋がっている。
荷車には僕らの腰くらいの木箱が10数個と、大人が2人くらいなら座れるスペースがあった。
「あんちゃんたち、帝都の雇われ人だろ?」
「へっ?」
「はぁ。」
曖昧な返事に、おじさんは、それが証拠じゃないかと僕らの左手首を指さした。
なんだろうか、と手首を見ると、見知らぬものがついている。
腕時計に似ているが、時計盤の代わりに半球型の透明な宝石がはまっている、ブレスレットだろうか。
「ほら、早く乗った乗った!」
何が起きているか全く理解できないまま、おじさんに急かされ荷車に乗り込む。
とりあえず町に行って、お茶でも飲んで落ち着こう。
もしかしたら、あとの2人もそこにいるかもしれない。
「あ。」
Dが小さく零した声に反応し、右を向く。
彼の視線は例のブレスレットに注がれている。
あの宝石が水色に発光しているのだ。
やがてその光が上へ伸びていき、宙に水色の長方形を浮かび上がらせた。
「そ、それ、モニター?みたいな?」
光の長方形には、何か文字が書いてある。
白い文字だ。
レベル、HP、攻撃力、防御力…。
現実世界では決して見ることのないステータスが記されている。
「これ、にぺーじめみたい。」
Dが左下にある三角形を押すと、光のモニターが切り替わった。
「「D、男性、20歳、職業…ウィザード…?」」
他にも小さく持ち物や所持金額も書いてあったが、僕らの目はその見たこともない就職先に目を奪われていた。
ウィザード、魔道士。
そんなのゲームでしか見たことがない。
「ねぇ、ここ!」
珍しく大きな声を出したDが示した文字を読む。
「任務…使徒の護衛!」
どうやら、これが、この世界のクリア条件らしい。




