D-4
祭壇から声がした。女の子の。
入ったときは誰もいなかったのに、おかしいと思ってそっちを見る。
「世界は残酷。あなたが知っていること。」
静かな声でそう言ったのは、青い目をした女の子だった。
おれ以外には見えていないようだ。
「それでもあなたは逃げ続けるの?」
その子は真っ直ぐにおれを見つめてそう言った。
おれに問いかけてるんだろうか。
意味深だな。
「にげるのもひとつのてだよ。でも、」
もう逃げたくないかな。
そう伝えると、女の子は目を閉じた。
それからゆっくりと口角を上げる。
怪しくない、優しそうな表情。
「良かった。」
その言葉の意味を訪ねようとしたら、Cに呼ばれた。
「何してんだ、早く行こうぜ。」
「あ…うん。いまいくよ。」
もう一度祭壇を見ると、そこにもう女の子はいなかった。
隠れたのかななんて不思議に思いながら、ようやく階段を上る。
古い階段はギシギシと不安にさせる音を奏でた。
「おお!すっげぇ!」
屋根の上は見晴らしが良かった。
山の上ということもあって、かなり高いところにこの教会があるらしい。
さっきまでいた村も見えた。
すっかり水浸しになっていて、見つけるのには時間がかかったけど。
「疲れた…。」
Aが力を抜いてため息を吐いた。
「あんな緊張する生活もうこりごりだよ…。」
「今度はもうちょっと明るい世界がいいね。」
もう津波の脅威にさらされていないとわかって完全にだらけだした3人を見て、自分も力を抜いた。
そんなに長い時間経っていないのに、もう日が沈みかけてる。
やっぱり、この世界の時間の進み方はおかしいんだろうか。
夜も昼もとても短い気がする。
「街灯がないから、夜は真っ暗だね。」
Aが周りを見渡しながら言った。
「でも寝ちゃえば関係ないじゃん?」
Bが器用に寝転がりながら笑った。
確かに、寝ちゃえば関係ない。
それに疲れてるし、もう目蓋を支えるのも辛いくらいだ。
「D、寝るのか?」
「うん…眠い。」
Bの真似をして寝転ぶと、だるくて重かった体から完全に力が抜けた。
大人しく目を閉じると、俺らも寝るかーと声が聞こえた。
少し暖かい風が吹いているため、凍えることはない。
ゲームをしていたときは寒く感じたのに、なぜだろう。
本当に、この世界はおれたちの世界と違ってヘンテコだ。
「いつ戻れるんだよ…。」
Cの呟きがやけに小さく聞こえた。




