C-4
なんでこんな恐怖体験ばかりしなきゃならないのか。
オレにはさっぱりわからない。
さっきまであんだけ余裕があったというのに、今はBでさえ焦っている。
Aなんかブツブツと独り言を呟いている。
「とにかくはしれー。」
その絶望的な雰囲気断ち切るような、Dの緩い声が聞こえた。
ビビりの癖に最後尾を走って足の遅いAを気にかけている。
あいつ、成長したか。
「僕はもうダメだ…みんな先に行ってくれぇ!」
「おまっ…ふざけんなよ!何のために俺が手ぇ引っ張ってんの!?」
「もうちょいがんばれや、マジメ系!」
「おまえならできるよー。」
「そんなんで走れないわ!!」
顔を青くしていたって緩いDに、絶望していたAも思わずツッコむ。
つられてBとオレがフハッ、と笑い声を零した。
それに促されるように、全員が大きな声で笑い始めた。
あははだとか、ぎゃははだとか、ふふだとか。
全員バラバラな笑い方で、しかもそれが性格を表しているもんで、さらに笑えた。
誰も笑えるような体力なんてないというのに、息を切らしながら、それでも笑うことを止めない。
「さっすがD!」
「ありがとね!元気出た!」
「よっしゃ!あと少しきばれ!」
村が山に近かったのが幸いだ。
広場から伸びる大通りを西に真っ直ぐ進むと、山へ続く道へ繋がっていた。
道も段々角度がついてきた。
オレたちはラストスパートと言わんばかりに足を動かす。
周りの景色は木々に遮られ完全に見えなくなった。
それでもまだ高台ではないため、オレたちは立ち止まらない。
そうやって必死になって5分くらい走り(ほとんど歩いていたと思う)、いくつもの急な坂をなんとか乗り越えた先には、少し変わったものが現れた。
「…救いの手ってね。」
そこには古びた教会がポツリと佇んでいた。
こんな山の中だし、もう使われていないようだ。
壁はツタに侵食され、鐘は錆びている。
それでも、その教会は立派で神聖な雰囲気を醸し出している。
「一応、屋根に登ろう。」
Bの提案に、3人とも頷いた。
息は整えられたが、体力は回復していない。
全員が表情を固くしながら、壊れかけた扉の中へ入った。
中にはまだ長椅子や祭壇が残っていた。
祭壇の奥、壁の天井近くに、丸いステンドグラスがまだはまっている。
他のものは劣化したり、割れたりしているのに、それだけは、なぜか残っていた。
オレは宗教に詳しくないため、どんな場面の何の絵なのかはわからない。
それでもそれは、天使が体を丸めたような絵に見えた。
「ここに階段があるよ。」
Aが見つけた階段は、どうやら鐘へと続いているようだ。
鐘は屋根より少し低いところにあったから、ここから屋根へ登れるだろう。
さっさと安全な場所へ避難してしまおうと、A、B、オレは足早に階段を上がる。
半ば辺りで一度立ち止まり、教会を見渡してみる。
廃れてはいるが、長椅子など当時は立派だったのであろうものが、狂いなく整列している。
やはりここは神聖な場所なのだと再認識した。
ふと後ろを振り返ると、ついて来ていると思っていたDがまだ1段も登っていないことに気がついた。
「何してんだ、早く行こうぜ。」
「あ…うん。いまいくよ。」
Dは祭壇の方をぼんやりと見つめ、1度瞬きをしたあと、オレの後ろについてきた。
「何かあったのか?」
「…いや、」
なんでもないよ、と微笑んだDにそうかと返し、前を向いた。
2人とも無言のまま、すでに階段を上りきったAとBの背中を追いかける。
鐘へと続く扉は、案外簡単に開いた。
「おお!すっげぇ!」
吹き抜けた風はBの感嘆を少しだけかき消した。
教会のつくりなんて全然知らないですすみません。




