A-4
次の日、犬の鳴き声は聞こえなかった。
爽やかな目覚めに気分良く伸びをし、広場に向かう。
犬たちのじゃれ合いに足を取られながら、中心に立つDへ近寄る。
「早いね?」
「うん…。」
返事は小さいが、Dがここにいるといことは、Bの作戦が上手く機能しているということだ。
それならば、このゲームが今日で終了し、この世界からも脱出できるということ。
ああ、清々しい。
「やっほー。」
「よう。」
残りの2人も、欠伸をしながら歩いてきた。
あとは村長たちを待つだけだ。
「…。」
和気藹々としている中、Dだけが喋らない。
いつも通りと言えばいつも通りだか、何か顔色が優れないので少し心配だ。
話しかけてみても、唸るだけで詳しくは話してくれない。
村長たちが来てからもDはほとんど喋らなかった。
「話し合いを…。」
「ちょっと待った!」
村長の切り出しをBが遮った。
探偵のように、手を顎に当てニヤリと笑う。
初めて会ったときから思っていたが、この顔、完全に悪役の顔だ。
「わかったよ。人狼の正体。」
その言葉に、村長は眉を潜め、村人は小さな歓声を上げる。
雰囲気を味方につけたBはそのまま話を続ける。
「容疑者7人の中に人狼はいない。」
Bの言葉に、疑問と動揺の声が上がった。
「実際、1ゲーム目は勝確の選択で負けた。誰も嘘を吐いてないのに、だ。それはこのゲームで証明した。」
得意げに話すBはいつもより頼もしかった。
「じゃあ、人狼は誰なのかってことになるけど、それも昨夜のうちに絞り込めた。俺らが吐いた嘘を、人狼は聞いていた。つまり、俺らの仕掛けた罠に見事引っかかってくれたわけ。」
「待て。」
話に水を差したのは村長だ。
「昨日までの会話で、人狼がお主らの嘘を見抜くことはできたであろう。」
「それは無理。だって俺ら役職のことなんか話し合ってないもん。」
「ではどうやって処刑する者たちを決めていた?」
「打ち合わせしてない奴を処刑してただけだよ。」
「ではそのピアスの者の嘘を突き通すために3人を殺したというのか!」
村長の怒声に辺りは静まり返った。
僕とC、Dは言葉を無くしていた。
「村長、何でCが嘘吐いたって、知ってるの?」
Bの笑みが濃くなる。
「そ、それは…。」
「俺らとしか言ってないのに、よくわかったね?」
何で、と笑顔で詰め寄るBに恐怖を感じた。
僕が村長じゃなくて良かったと他人事のように考える。
「き、聞いたのじゃ!」
「誰に?」
「村の者じゃ!!」
「じゃそいつ連れてきてよ。人狼だから。」
村長は焦っているのか、汗をかき始めた。
対してBは貼り付けたような涼しい笑顔だ。
「わ、わしは…。」
「もう言い逃れできないよね。」
「だいたいこのゲームを仕切っていたのは誰だ。」
「あの7人を選んだのは?」
「処刑を執り行っていたのは?」
Bは追い詰めるように言葉を紡ぐ。
口を挟む間もなく様々な疑問をぶつける。
そして最後に、ゆっくりと手を前にあげ、村長を指差した。
「人狼はお前だ。」
Bの笑顔が消えた。




