C-2
空に月が上った。
夜が来た証拠だ。
これからオレらは人狼の影に長い時間体を震わせなければならない。
「めんどくせえ。」
Aと軽く話したあと早々にベッドへと横たわった。
人狼を処刑する以外解決策なんてない。
だとすれば占い師が役立たずじゃないことを祈るしかできないんだ。
「つったって、寝れねぇよ。」
この緊迫した状況の中、おちおち寝てもいられない。
毎度ながら不眠を被ることになってしまう。
不眠はダメだ。的確な判断ができない。
そう思ってもまぶたはなかなか閉じてくれない。
「はあ…。」
ため息は白くなって吐き出された。
この村は日が沈むと一気に冷え込む。
薄い布団では体温を保つだけで精一杯だ。
「…っち。」
舌打ちが部屋に響くのを聞きながら、オレは無理やりまぶたを降ろした。
その後眠気が襲ってくるのにどれくらいの時間がかかったかは覚えていない。
ガタ、と何かがぶつかる音で目を覚ました。
Aだと思ったが、あいつは勝手に人の家に上がり込む奴ではないと考え、その可能性を否定する。
では、誰だ。
他にオレの家に来る必要がある奴はいない。
「……。」
嫌な予感を抱えたまま、ゆっくりと上半身を起こした。
ドアの近くに見える影は、明らかに人間ではなかった。
「てめぇ!」
オレが叫んだ瞬間、そいつは牙を剥き出しにして飛びかかってきた。
正面から強い衝撃を受け、背中をシーツへと打ち付ける。
目を開けると、大きな口と特徴的な耳が目に入った。
「グルル…。」
そいつの下半身は人間の足のような形になっていて、オレの体をがっちりと抑え込んでいる。
肩も前足で押さえつけられ、できる抵抗といえば、近づいてくる大きな口を手と腕に全力をこめ押しのけることだった。
しかし、力で敵うはずもなく、鼻先が喉元を掠めた。
「人狼ぉ…!!!」
あんぐりと開いた口の中に、いくつもの鋭い牙が見えた。
思わず目をつぶり、衝撃を待ち構える。
しかし、それはいつまで経ってもこなかった。
「…あ?」
恐る恐る目を開けると、そこはゲームスタート前にカードが配られた部屋だった。
机には血塗れの「共有者」のカードが置かれている。
GMが座るイスの前には水晶のようなものがあり、そこには翌朝の光景が映っていた。
「…リタイアってこったな。」
水晶の中では、異様に冷静な話合が行われていた。




