B-4
攻撃は効いているはず。実際シャッターを切ると悲鳴を上げるし、少しもだえる。
でも女が倒れる様子はない。
「やばくね?」
Cが珍しく冷や汗をかいている。
囮をしているAやDも息切れしている。
俺もそろそろ体力がやばい。
「あ、そうだぁ…。」
息を整えながらAがフィルムを取り出す。
おお、という声が聞こえたので強いものだろうね。
素早くセットして構えるが、その先に女がいなかった。
「どこ行った!?」
慌てて辺りを見渡すと、中心から炎が帯みたいに飛んできた。
炎特有の揺らめきがあり、不規則で動きが掴みづらい。
なんとか避けたけど、完全にとはいかず、ズボンの裾が焦げた。
これ、服全焼したらどうすんのさ。はずいとか言ってる場合じゃないけど。
3人は無事かと確認したけど、問題ないみたい。
「落ち着いて。」
Aがいつもより冷静な声色で言った。状況に慣れてきたのか、もっとやばい状況に遭遇したのか。
たぶん後者。
こうやって考えてる時点で俺も随分冷静だけどね。
だって普段分析なんてしないもん。
「A!後ろ!」
Dの叫びに反応してAが振り返る。
女がすごいスピードで手を伸ばしてきた。
Aは咄嗟に右手を前に出す。
「うわっ!!」
悲鳴が上がる。
同時にパンッ!と何かが弾けるような音が聞こえた。
「大丈夫?」
「うん…平気…みたい。」
触られたところを凝視しながら息を切らす。
本当に何ともないみたいだ。
「もしかして…これのおかげかな?」
Aがポケットから出したのは石だ。
割れてしまっているけど、キラキラしていてとてもキレイ。
お守りにしてたんだけど、と少しもったいなさげに地面に落とした。
さっき弾けたのはこれかな。
「だいぶ弱ってきたか。」
CとDが駆け寄って来た。
「九〇式も少なくなってきたしな、そろそろ倒れてくれるといいんだけどな。」
4人ともかなり疲労してるけど、女もきてるようだ。
足を引きずってさっきより苦しそうにしてる。
それでもまだ俺達を追いかけてくるから、その執念は尊敬したいくらい。
「熱い…熱い…。」
うわ言のように呟きながらまた炎で攻撃をしてきた。
今度は反応しきれなかったけど、Cがシャッターを切るとフレームに入った分だけ消えた。
戦局は決して不利ではないようだ。
女を正面に捉えてとにかくシャッターを切っていくC。
もう体力もない。フィルムはあるので物量作戦だ。
女も限界なのか中央で止まり、相変わらず手だけをこちらに伸ばしている。
まるで助けを求めているようだ。
「残り5枚。」
Cが呟く。
シャッターを切ると、女の背負っていたものの一部が消えた。
まるでかじり取られたようだ。
Dが汗を拭うのが視界の端に見えた。
シャッターを切っていくと、枚数に合わせたように一部ずつ消えていく。
それとともに女の手も下がっていく。
「最後。」
Cが少し息を詰め、ゆっくりとボタンを押した。
悲鳴を上げながら女が顔を抑えた。
とても長い悲鳴だった。
それとともに半透明の体が、不安定な体が、はっきりとした輪郭を帯びていく。
パシャッという雰囲気にそぐわない軽い音がして、これまで通り、1枚の写真が撮れた。
女が、燃えている写真だった。
「何で…。」
Dの泣きそうな声が、静まり返った空間に響いた。




