A‐4
ねえ、と女の子が話しかけてきた。
振り向くと、中学生くらいで白いワンピースを着た子がじっとこちらを見ていた。
髪は日本人にもいそうな黒に近い茶髪だけど、目は綺麗な青色だ。
海とも空とも思えるその目が僕を映す。
「君がBの言ってた女の子?」
「うん。」
「どうしてここにいるの?あ、もしかして僕らと同じ境遇だったりする?」
「違うよ。」
女の子は淡々と質問に答える。
あまり他人と話すのが得意ではないので、すぐに2人とも黙ってしまった。
気まずい、と何か話題を探していると、あちらから話しかけてきた。
「これ、あげる。」
「え、あ、ありがとう。」
渡されたのは見たことのないパッケージが赤いフィルム。
裏返してみると、真ん中に九〇式と書いて…。
「九〇!?」
こんなに強いのがあったのか!と手元から顔をあげると、目の前にいたはずの女の子は姿を消していた。
同時に世界が白み始める。まるで霧がかかっていくみたいだ。
完全に白くなった瞬間、目が覚めた。
「あれ…。」
倒れた体をゆっくりと起こした。
目をこすってぼやけた視界をクリアにする。
さっきは確かあの女に遭遇して…逃げられなくて…。
そこからは覚えていないので、意識が飛んだのだろう。
ここはさっきの場所ではない。
少し熱くて、地面には灰色の砂が落ちている。
幸い倒れていたところには無いので服の中には入っていない。
そして、手には先ほどもらった九〇式フィルムを握っていた。
「さっきのはいったい…。」
呟きながら辺りを見回すと、少し離れたところに何かが落ちているのを見つけた。
近づいて拾うと、日記と書いてある。
誰のだろうと、失礼して開いた。
今日は儀式の日だ。
少し不安だけど、私ががんばればこの村はずっと平和になるんだ。
最後にあの人の姿を見たかったけど、もう他の村に行ってしまったみたい。
もっとお話しがしたかった。
あの指輪、大切にしてくれるだろうか。
視界が白黒になる。
また映像が流れるんだと身構えると、すぐ目の前、ここの中心にあの女が立っていた。
人形のように白い服を着ていて、顔には黒い布を巻いている。
上から太鼓の音が聞こえてきた。
今まで目を向けていなかったので気づかなかったが、ここは大きな穴のようだ。
上は明るい。松明だろうか。
太鼓の音が速くなるとともに人が、穴に落ちるギリギリのところに立った。
液体と、あの人形と、何か白い布にくるまれたものが投げ込まれた。
それは、小さな女の子、例えば玄関でBとDを追いかけていた子達のような形に見える。
「……。」
絶句しながら見ていると、次に矢を持った男たちが出てきた。
先端には火がついている。
ハッとして女を見る。
着ている服は人形と全く一緒だ。
ということは、あの服にも油がしみ込んでいるはずだ。
ならば、この後…。
再び上を見ると、男たちが構えていた。
照準は女だ。
まだ速くなる太鼓はまるで僕の鼓動を表しているようだ。
「やめろおおおおおおおおお!!!」
火が放たれた。
女が勢いよく燃える。
目が離せない。
こちらに手を伸ばした。
助けを求めているのだろうか。
映像はそこで途切れた。
だが女はそのまま中心に立っている。
さっきのように僕に手を伸ばしてきた。
背中からあのドロドロとしたものが現れた。
戦闘開始だ。
「A!!!」
上から降りてきた檻のようなものの中から、Bが叫んだ。




