B-1
村にしては戸数が少ないと思ってたから、ここを見つけてもそんなに驚かなかった。
3本並んだ赤鳥居の先には、さっきより多くの家がある。比べてみると、こっちの家の方が広いみたい。
中央の方に1番大きな屋敷があった。
「あのさー…。」
「……なに?」
「もうちょっと離れてくれない?」
「……ごめん。」
さっきからDが俺にべったりとくっついて離れない。
女の子なら構わないんだけどね。
「もしかしてD、お化けとか苦手?」
「そんなことない!」
離れながら一生懸命に否定する。
出来心で俺とは反対側の肩をばれないように叩いてみるとひっ!とまた俺にくっついてきた。
「…。」
「…いまのはむしゃぶるいだから。」
「いや無理だよね!完璧に怖がってるよね!?」
「ち、ちがうから、ぜんぜんちがうからっ!!」
珍しくDが焦っている。いつも眠そうな目はしっかりと開かれていて、声も幾分か大きい。
これは絶対に強がっている。
「大丈夫だって!兄ちゃんが守ってやるからさ!!」
「うるせえ!こどもあつかいするな!」
肩を組みながら末の弟に泣きつかれた時のセリフを使ってみる。さすがにかっけえ兄ちゃんとは返ってこなかった。
「何で隠すの?別にバカにしたりしないよ?」
「……ほんと?」
「うん。ほんと。」
「…わかった。信じる。」
ありがとーと満面の笑顔を見せると、Dも安心したみたいで小さく笑った。
とりあえずAとCにメールを送って屋敷に入ってみることにした。
ケータイが使えてよかった。連絡が取れないと多少困るからね。充電も切れないし、そういうとこは便利。
返信を確認して、Dを促す。
深呼吸して意を決したように前を向いた。
「行こっか。」
「おう。」
大きな扉を開けて中に入る。
薄暗くて、やっぱり生活感はない。
それまでの家と違うのは、床や天井、柱などがしっかりしていること。いくつも部屋があること。そして、2階と奥へとつながる渡り廊下があることだ。
近くの襖を開けみると、布団が数組並んでいた。
枕や敷布団には血痕がついている。
「なにかあったのかな。」
「今度は武器とか防具はないし、気をつけよね。」
後ろの方で子供たちの声が聞こえた気がした。