A‐1
死んではいなかったが、できればここ以外のところで目覚めたかったものだ。
現実世界なら万々歳だが…。せめてもうちょっと明るい場所をチョイスしてほしかった。
おそらくここも異世界なのだろう。風景自体は日本にもあるだろうが、どこか違和感を感じる。
一言で言うと、不気味だ。
…うん。
「今度はどんな世界だろう?」
「人の気配がしねえな。」
「………。」
「…D?」
普段からあまりしゃべる奴ではないが、明らかに様子がおかしい。
いつもなら眠そうな目でうなずいたりと何かしらの反応があるのだが。
顔色もあまりよくないし。
「大丈夫?」
尋ねてみると慌てたように首を縦に振る。本当に平気だろうか?
しきりに周りを気にしているのが気になる。
「まずは探索してみるか。」
というわけでCと一緒に建物を調べることになった。
あまり数はないので、時間はかからないだろう。
試しに近くの古民家に入る。中は荒れていて、床や天井、壁がところどころ抜けている。生活感は全くない。
「Aー。」
声の聞こえた方に行ってみると、本棚が立ち並んでいた。書庫のようだ。
Cは一冊の本を手にしている。
「研究者が使ってたみたいだな。この村のこと調べに来た…って書いてある。」
「勝手に見ちゃっていいのか?」
「知らね。でも住んでなさそうだしいんじゃね?」
悪いとは思うが、とりあえず情報が欲しいので読み進めることにする。
この日記?によればこの村は1年に1回とある儀式を行っていたらしい。詳しくはわからないが、行わずにいれば、災いが村を襲い大変なことになるそうだ。村を見る限りそれが起こってしまったようだが…。
「その儀式をやってたっていう屋敷に行ってみるか。地図で言うと中央だな。」
日記をしまって外に出ようとした時、
「お?」
Cが何かを見つけた。
「かなり古式だな…。」
「使い方わかるの?」
「もち。」
「さすが。」
カメラだ。
とても古くて、僕にはどう使えばいいのかわからない。
不思議とこれだけはほこりを被らずに綺麗なままだ。
「撮れる?」
「………。」
「?」
視線をCに移すと、前を向いたまま目を見開いて固まっている。
何事かと思い振り返ってみると…。
「!?」
真後ろに白っぽい男が立っていた。