D-4
今までの生活で、異世界でもまともに暮らしていけるということがわかった。なかなか楽しかったし、これで娯楽があれば完璧なんじゃないか。
ただこの景色はいただけない。世界が崩れていくとかそういうのがあまり好きじゃない。救いがないだろ?何でもハッピーエンドが好きなんだ。
「竹田城行きたかった…。」
Cが残念そうな声でつぶやく。こんな状況だもんな。これで生きてたら奇跡。生まれ変われたら一緒に行って写真撮ろう。
語尾がフェードアウトしていることからおそらく寝てしまったのだろう。ついに1人か…なんとなく不安になってしまう。まだ眠くないし、おれだけなぜ意識がはっきりしているのか。
「この世界はどうだった?」
あの女の子の声がした。姿は見えない。
みんな寝てしまったからおれに話しかけているんだろう。
「たのしかったよ。」
「良かった。」
「なんでおれたちをここによんだの?」
「…内緒。」
「そう。」
やっと重くなってきたまぶたを抗うことなく閉じる。女の子が近くに来た気がするけどもう確認する気力はない。
「ありがとね。」
「え?」
楽しかったよ、うん。おれは作業が好きだから、この世界を十分楽しめた。こっちの猫も羊も豚もかわいかった。こんな夢を見せてくれた君はきっと、例えば神様よりも素晴らしい存在なんだろうね。
目の前に広がる銀河もまた、目にしたことのない景色だ。
科学館の遠足を休まなければ、プラネタリウムでこれを見れたのかもしれない。今更見に行くこともできないけど。
思い出に浸っていると、景色が収縮し始めた。真ん中に向かってどんどん小さくなっていく。ここが崩れるよりも圧倒的に早いスピードだ。
「死に際って、こんな感じなんだな…。」
ついにすべての星が吸い込まれた。
「D、起きて。」
「いつまで寝てんの!」
「落書きしちまうぞー。」
非情な仲間の声に慌てて目を開け飛び起きる。
少し嬉しそうな3人の顔の後ろにキレイな月が見えた。丸い。
「「「生きてるぞ!!」」」
おれが寝ていたのは、古い民家が立ち並ぶ暗い村だった。