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ギフト持ち

━ 一年後と二日先の12月27日 猫屋高校近く商店街━


「えっ?俺に質問?」


「まあいいけど‥。」


千草は、猫屋高校の帰り道、突然知らない奴から話しかけられた。

が、見た目は自分と同じくらいの歳の高校生に見えたためそこまで警戒はしなかった。


今日は平日の夕方ということもあってかなり多くの人が商店街に訪れていた。

夕飯を買いに来ている親子。小銭を小さな手で持っておやつを買いに来る小学生の子供達、さまざまな目的を持って訪れた人々の集まりは道で止まった千草達を避けながら通り過ぎていく。


「えっと道の端側に移動しないか?あっちで話そうぜ」


ここでは通行の邪魔になると千草は思い、道の端の方に指で示し、話しかけてきた人物に誘導を迫った。


白いパーカーに見を包んでいる人物は

この真冬にチャックを全開に開けているため見た目は寒そうだ。

その下にはオレンジの薄めの長袖の服を着ているようだ

が、彼はまるで、寒さを感じてないとばかりに話しかけてくる。


「うんそうだね!良かった!断られたらどうしようかと思ったんだ!」


彼はニコニコしながら初めて会うはずの俺に、友達のように話しかけてきた。違和感を感じつつも、千草はそれを顔に出さずに対応した。


「質問って何?」


「そうそう!君の友達に犬っているよね?」


「風宮のこと?」


「それそれ!最近どうしてる?」


つい質問されて答えてしまったが、最近どうしてるかと聞かれて

初対面の彼に風宮のことをベラベラと話してしまっていいのだろうか?


「えーとお前は風宮の友達?」


堪忍のため千草は二人の関係を聞いたが、それを聞かれて彼はにこりと笑っただけだった。


「あのー?」


質問に答えない彼に千草は、どう対応していいか分からなくなってしまった。

その反応を見て彼は、逆に千草にどこか寂しそうな表情で質問してきた。


「犬は今も友達たくさんいる?」


「えっ?ああ、うんいるけど」


(なんなんだろこいつは?悪いやつには見えないんだけどな)


「俺らと仲いいよ」


(てか俺らって言っても分かんないか)


俺らと仲がいいと言っても、こいつは山や水達を知らないだろうし。

それとは別にそれを聞いた彼はほんの少し、目を見開き意外そうな顔をした。

まるで、風宮がしない様なことをしているかのような目で。

が、その後に少し安心したような表情を見せた。


「そっか〜!やっぱり君達が今の犬と一番中がいいんだね!犬も学習したってことかな」


(やっぱり?)


まるで、犬の回り人間のことを知っているかのように話す彼に不自然さを覚える。だからか千草は彼が犬の何なのか聞いた。

だけどなんだ?この気の悪さは。


「えっと‥お前は風宮の何なの?」


先程、答えてくれなかった質問と同じようなことを聞き返す。

これで答えてくれなかったら、これ以上風宮のことを話すのはやめておこうと思っていた。


「あーごめんね!僕ばっか話してしまって。僕は犬と中学の時の同級生なんだ。名前は羽野山諦等!(はのやまあきら)犬の友達は僕の友達!仲良くしようね」


「‥‥‥俺は千草嵐(らん)


突然の友達宣言に何を言い返せばいいのか分からなかったがとりあえず、自分の名前を名乗った。

すると彼は不思議なことを言った。


「あーらんって読むんだね。てっきり(あらし)って名前だと思ってたよ。」


(何でこいつは俺の名前を前から知ってたみたいに言ってるんだ?)


知ってるはずのないことを彼は知っていた。

俺はは顔にはまだ出してないが諦等を警戒した。が、少し遅すぎたかもしれない。

そもそも考えてみれば、たまたま自分に話しかけてきたわけがないのだから。諦等は明らかに千草だから話しかけたのだ。


(こいつ…ひょっとしてたまたまここを通ったんじゃなくて俺を探していたのか?)


だとしたら、猫屋高校の近くにいたのも辻褄が合う。

てことは俺らがこの学校に所属しているのも知ってたってことか。


千草の驚いたような敵意のある表情に変わったことに気づいた諦等は、それを見てニコリとまた笑った。


「何で初対面なのに名前を知ってるんだ!って感じかな?そうだね答えるならばさっき言ったとうりだよ。

犬の友達は僕の友達!友達の友達の名前を覚えるのは当然だろ?ほかにも山くんや水くん!最近は山崎君だっけ?君らのグループに加わったよね!家はあそこの道沿いを行って左に行った先のコンビニが近くにあるところに山くんでしょ?それからそのすぐ近くには水くんの家があるよね。山崎くんの家はまだ調べてないんだけど、明日までには覚えようと思ってるよ。」


(やっぱり…‥けど田中は覚えてもらえてないんだな)


その後俺らの家も住所をペラペラと目の前で喋り出した諦等に

恐怖というよりは身の毛がよだつような気分に陥った。

自分はどこで間違えたのか。話しかけられた所からもう、ダメだったのかもしれない。


何をビビっているのかと思うがこの時、

千草にしかわからない威圧感がのしかかっていた。

千草がその時思ったことといえば、この場からは離れたいということだけだろう。

それほどまでに千草は諦等の危険な雰囲気を感じ取った。


その時俺は多分、目の前にいるこいつを危険な物を見るような目で見ていたのかもしれない。

それでも諦等は普通なら知るはずもない彼らの個人情報を話していく。

「そー警戒しないでよ。プライベートまではそんなに知らないからさ」


その様子に千草は固まるしかなく、

胃が熱くなってきて今にも吐きそうな感じがした、

そして体の中から生まれた緊張が貯まっていく


(不審者とか殺人犯に会った時ってこんな気分なんだろうな)


このまま話してたら自分はどうなってしまうのか?何もなく終わる気がせず、このまま話は続くのだろうと思ったその時、

話を、遮ったのは諦等の方だった


「千草君の家はここから少し遠いいよね?そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?話しかけたのは僕の方なんだけどさ」


そう言われて千草は慌てて頷いた。


「そ、そうなんだ。今日塾あるからそろそろ帰るよ」


「あっでも、一つだけ聞きたいんだけど」



立ち去ろうとする千草を引き止め、質問をしようとする諦等に、千草は速く諦等から離れたくて仕方がなかった。


「な、何?」


「諦等は君達と特に仲が良いみたいだけど、ほかに仲の良い子とかいないの?」


それを言われ、思い当たるふしは無い…といえば嘘になる。

どういう糸の質問か分からなかったが、確かに前までは彼の言うとうり自分たちとだけと言っていいほど、主に千草達とだけ接していた。

が、最近は他の奴らとも関わりがあるようで昼休みには他のグループの友達とかなりといっていいほど仲良くしていた。


(途中参加でよくあそこまで打ち解けられるよな)


もう高校三年の冬、女子が仲のいい子とグループを作るように、男子も仲の良い友達とよくつるむ。それに突然飛び込むということはそのグループの場の空気を壊しかねない。

あまり話したことのないような人間が突然、自分たちに話しかけてくる。それは意外と不自然に感じるものなのだ。

それを犬は平然と成し遂げていた。

彼はもう千草たちの所へは戻ってこないだろうと思うくらいにだ。

結果的に犬はどちらとも、仲良くしているのだが。

そのことを千草はオブラートに包んで教えた。


「前は俺らとばっかつるんでたけど、最近は他の奴らともつるんでるみたいだけど‥‥そんくらいかな。」


それを聞いた瞬間、諦等から突然笑顔が消えた。


「へぇ」


が、すぐにニコリとまた先ほどのフレンドリーな笑顔になる。


「‥‥‥‥‥‥そっか。」


「じゃ、じゃあ、俺帰るわ」


今日は塾なんて無かったが、この場から速く離れたいという気持ちが強く、嘘をついてまで走って帰っていった。

足を動かしながら先程のことを考える。


(何なんだよ最後のあの表情は‥)


さっきまで本当の友達のように接してきた諦等は犬が他の友達ともつるんでると聞いた時、口元は微笑んでいるのに千草を、正確には千草達を見下したような目で見ていた。


(このことをあいつらに話すのはやめておこう。あいつとは関わらせちゃいけない気がする。けど、犬には話しとくべきか)


そうは思いながらもそれ以上考えるのはやめてしまった。

家に帰ってから考えよう。今は考えるよりあそこから離れたい。

さっきまでの感情を捻じ伏せるように、考えるのをやめ、千草は真っ直ぐ家に帰っていった。






千草が立ち去った後、諦等は千草が走って行った方向を見ていた。


「やっぱり犬は変わってないね」


「同じことをまた繰り返さなきゃいいけど」


そうつぶやくと千草が行った道とは反対の方向に歩き出し、人混みに紛れていく。


「あっそういえば!」


周りを歩いていた人々が少し振り返ってしまうほどの大きな声で

何かを思い出したかのように諦等は立ち止まった


「塾、明日じゃなかったっけ、千草君?」


今はその場にいない千草に、話しかけるようにしてそう言う。

その光景は何も知らない人々から見れば異様だった。

だが、ニコリとまた笑い、また歩き出す。

そうして人混みに消えていった。






丁度二人がわかれた頃、他の場所で犬は人を待っていた。


犬が居るのは40階建てのビルの屋上

風が少し強く吹いているため男子にしては長めの髪が靡いている

屋上には死との境界線のフェンスがあり、そこ側に寄りかかっている状態だ。


(もう約束の時間5分も過ぎてるんだけどなぁ)


端末(スマホ)で、時間を確認しつつ、相手の端末に電話をかけようとしていた。が、丁度屋上のドアが開く音がした。

ドアが開くと、同時に見慣れた人影が現れた。


「遅いですよ」


「あー、ごめんごめん。ていっても5分しか過ぎてないじゃん」


「今、6分過ぎました」

 

端末の時間を見ながら答える犬に対し、あとから来た男は、ケラケラと笑いながら『細かい男はモテないよ?』と言い犬のいる所に歩いてくる

。男の名前は小包三木(こづつみ みき)犬より3歳、歳上の21歳だ。


歳上ということもあって犬は彼に対し敬語で話している

チャラリとした格好をしていて、冬だというのに半袖のダウンを着ている。下は黒地の半袖のTシャツだが、灰色の下は長ズボンだ。

髪の毛は母親が外国人のため金髪で、歳よりは若く見えてくる。


「小包さんはある意味モテそうですよね」


「まあね〜。ハーフだと結構モテるよ」


ドヤ顔でそういう小包は確かに見た目はなかなかの容姿で

整った顔に、母親譲りの青い目と金髪にどこかに感じる日本人らしさは、見た目から見てモテないほうが不思議に思えてくる。


「あの、さっきから気になっているんですけど」


「何ー?」


先程から屋上のドアの隙間からこちらを覗いてきているそれを指摘する。


「あそこにいるのは何ですか?」


ドアの影からこちらをそっと見ている人影について指摘すると、小包はオデコに手を当ててやってしまったかとポーズをとった。


「あちゃーもう見つかっちゃったか。あれはね最近、俺が預かってる新米君だよ!そろそろと思って連れてきてあげたんだ。」


「小包さんの仕事に後輩なんているんですか?」


「まあ、あの子も来たくてこの仕事についちゃったわけじゃないしね。おーい!見つかっちゃったからこっちにおいで!」


小包がドアに向かってそう言うと、ドアはゆっくりと開き、犬よりも少しだけ小さな少年が小包の元まで走ってきて

そのまま犬にペコリと礼をした。


「はじめまして‥野山静流(のやま しずる)です。」


すこし気まずそうに小さな声でそう言った。

跡付けで、静流についての説明を小包が付け加えてくれた。


「静流ちゃんはねこう見えても16歳なんだよ。色々あって俺のとこで下働きなんだよ」


色々とはどんなことなのかと聞いてみたいが、あまり良いことではなさそうだったため、そこは追求せず見た目についての質問をした。


「随分、身長高いね。」


「最近170になりました」


(僕で174㌢だから、あと数年もすれば抜かされちゃうかもな)


「ギフトは持ってるの?」


「一応持ってます。」


「そうなんだ。どんなギフトなの?」


「えっ、えっとその…」


言葉を濁すように静留は返答に困っていた。


(あまり人には言いたくないのかな?)


「話を割るようです悪いけどそろそろ本題に入っていいかな?」


全く悪く思ってなさそうに

二人の会話を遮るようにして小包が会話に入ってきた。

静流はそう言われると慌てて、すみません。と言い小包の後ろに隠れてしまう。

その様子が少し微笑ましく感じた犬は、ほんのり笑顔を浮かべた。


(怒られた人に隠れてどうするのさ)

いえのじじょうで

「やっぱり若者同士は気が合うのかな?いいよね若いって。」


(あんたも十分若いだろうが)


二人の様子を見て

うんうんと腕を組み頷く小包を少しウザくも感じたが、いつものことなのでいい加減慣れないとな、と心の奥にイラつきをしまっておく。


「にしても2日ぶりだねー。2日前のクリスマスに頼んだ仕事どう?やれそう?」


「その件はギリギリのところだったんで、やるかどうか迷ったんですけどね」


犬のその台詞を聞くと小包は抑えきれずニタァ〜と笑う。


「引き受けてくれるんだね!」


両手を大きく開き、そのまま、犬を抱きしめようとするが、スッをそれを犬は避けていく。

犬はその様子に呆れるように言葉を言い放った。


「まだそうは言ってませんよ‥‥。」


「じゃあどっちなの?」


口元に右手の人差し指をあて、首を可愛らしく傾げながら聞いてくる小包をスルーし、ため息混じりに質問にだけ犬は答える。


「引き受けますよ。」


「おお〜!太っ腹ぁ~!」


欲しかった玩具を買ってもらえると分かったかのような子供のように喜ぶ小包に、犬はこれから先敬語で彼に話すか迷った。

だが、唐突に喜ぶのを止め、頭に?マークを浮かべる小包。


「けど、どーして引き受ける気になったの?8割型断られるかと思ってたよ今回は」


「確かに今回の依頼は今の日常にギリギリに踏みとどまっているような僕のような普通の人間が関わるには危険なものです。

けど、契約書を使えるごく稀な機会には変わりありませんから」


(あ~やっぱそっちがお目当てなのね。まあ引き受けてくれればそれでいいんだけどね)


「まあね、あれを取り扱ったってだけでかなり良い広告になるし君の様な仕事をしている人間ならば一度は使ってみたいだろうね」


「あの〜…‥」


二人の会話に恐る恐るという感じで手を小さく上げながら静流が耐えきれず会話に入ってきた。


「ん?どうしたの?」


「お二人が言ってる契約書って、なんですか?」


そっかこの子はまだこっちの事についてほとんど何も知らないんだ。

それを思うと少し気の毒にも思った。

僕は自分からこの仕事を始めたけどこの子は関わりたくて関わってるんじゃないんだもんな。


「契約書っていうのはねこっちで言う専門用語って感じかな」


その返答を、あまりよく理解できなかったらしく静流は首を傾げるばかりだった。その様子を見ていた小包はしょうがないとばかりに会話に入ってくる。


「契約書はペーパーポリスっていうグループが売ってる物のことだよ。契約書に記した決まりや、ルールは絶対で、破るとそのグループが罰を与えるわけ。ギフトを持っている人達にとっての警察みたいなものかな。」


「普通と違うといえばペーパーポリスの契約書を、使えるのはグループだけなんだ。」


「グループって何の‥ですか?」


「はぁ…ほんとに何も教えてもらってないんだね。」


呆れてものも言えないとはこのことだ。


チンプンカンプンのお手本のような表情に、小包はもう少しいろんなことを教えておくベきだったと思ったが今話せばいっか☆

とは軽いのりで今から説明をすることにした。


「この際、色々と説明しちゃおっか!まずはグループについて」


仕事の話はほったらかしにし小包は静流に彼らが関わっている、また静流がこの先関わることになる普通とはかけ離れた世界の説明を始めた。


「静流君も持っているギフトがあるよね?

ギフトっていうのは前言ったとうり、クリスマスに突然配られる物のことなんだけど、そうやって配られた人間が集まって出来てるのがグループだよ。」


「ギフトの説明がざっくりすぎじゃないですか?」


「説明できるようなもんでもないでしょ?」


だったら君が説明してよと言われそうだったのでそれ以上ケチをつけるのは止めた。

確かに説明しようとしても説明できるものじゃない。

ギフトと呼ばれているのは、こちらも僕らの周りでは専門用語で、

クリスマスに配られる異質のもののことだ。

自分も去年のクリスマスに、異常ともいえる反射神経を貰ったのだ。

今は随分、この反射神経にも慣れたが、はじめは扱いがとても大変だった。


誰がくれたかもわからない。

何故自分に配られたのかももちろん分からない。

だから犬や多くのギフト持ちはそれをルールだと思っている。

法則というべきか、こうして毎年冬が来るようにギフトも同じようにして毎年配られていく。

原理はどうであれ、クリスマスにはギフトが無差別に配られているのだ。

もっともそのギフトが入っていたボックスは中身を確認するとボックスごと消えてしまうのだが。


「グループができるキッカケはたくさんあってね。

ただその場にいたからだとか、目的が一緒だとかその場のノリって感じで出来ることもあるよ。できたグループには名前がつくし、

有名になればそのグループ名はほかのブループにも知られていく。

なかにはギフトを持ってなくてもグループにいる人もかいるけどね。

でね!

で、グループにも、いざこざはあるわけ!喧嘩とか取引とか!まるでヤクザの麻薬の取引みたいにね。

そんでもって大切な取引の時にペーパーポリスが発行してる契約書を使うんだ。」


「なる…ほど」


静流は熱心に小包の話を聞いているが理解できたのは半分くらいだろう。僕は飽きたので少し離れたところで端末をいじっていた。


「放置されてるなう(^ω^#)っと」


ともわれペーパーポリスが独自に発行している契約書は高額な代わりに、絶対的な信頼と信用を勝ち取っていた。

特にそれを魅せつけたのはある取引の時に用いられた時だ


契約書には必ず、取引の時の互いの条件と、互いに約束を破った時の代償を契約書に記し、成立する。


その契約所を使った二つのグループ、

《ジーザス》と《道の橋》という名前のグループがあった。

そのころは契約書にはそこまでの知名度もなく契約書の値段もそれほど高くはなかった。


2つのグループがする取引はお金の貸し借りだった。

《道の橋》が《ジーザス》に高額なお金貸すという内容だった。

だがしかしグループの規模がそれほど大きくない《道の橋》からしてみればかなり高額な額だったらしい。

そのため、必ず返してもらいたかったのだが、《シーザス》というグループはそれほど評判の良くないギルドだった。


要するに約束を守らないグループだった。

なぜそんなグループに《道の橋》がお金を貸すのかといえば、

《シーザス》というグループを恐れていたからだ。

《シーザス》には人材も力も十分にあり、無理に逆らえ取り引き額なんかよりも大きな被害が出る恐れがある。

そうやって《シーザス》は自分より、力の弱いグループと、取引を重ねていた。


そこで《道の橋》は最後の抵抗のつもりで最近出来た契約書を使ってみることにしたのだ。相手の《シーザス》もそれを、承諾した。

2つのグループとも契約書には半信半疑というところだったからだ。

なんせ契約書には条件道理にすると書かれているのだから

つまりは取引の約束を破られれば、ほとんど、どんなことでもしてやるということだ。


《道の橋》は契約書に相手が期間以内にお金を返さなかった場合の代償をグループ《シーザス》壊滅とリーダーの命、貸したお金のの回収と記した。それを見てそこまでする必要があるのかと《シーザス》に反感を買ったが、ちゃんと返せばいい事だと《道の橋》側の主張で、それ以上は何も言ってこなかった。


「いいんですか?一宮さん?破ったら殺されるかもしれないんですよ?ここは書き直してもらうべきじゃないですか?」


「そんなもんあるわけねーだろ。ほっとけ、よし殺しに来たら返り討ちにしてやるよ」


そもそも契約書を《シーザス》側は信用していなかった。

もし本当にグループを壊滅させに来たとしても返り討ちにしてやるつもりだったらしい。


そのまま取引は、その条件で行われた。そして《シーザス》は借りたお金を全てを使い切り、期間内に返すことはなかった。


《シーザス》は約束を守らなかったのだ。

《道の橋》は返せと要求するが全く取り合ってくれなかった。

それどころか見せしめに仲間を一人半殺しにして届けに来たくらいである。


「どうするんですか!あの金を返してもらえなきゃ俺らもう終りですよ!?」


「…………契約書を使ってみよう」


「あんなの形だけの紙切れじゃないか!」


「その紙切れにすがりたいほどやばいんだよ!このまま金が帰ってこなかったら何人破産すると思ってんだ!」


「それは……」


仕方なくダメ元でペーパーポリスに問い合わせると、

ペーパーポリスからは信じられないな反応が帰ってきた。


「今、手は打っている」


そう言われたのだ。

数日後のこと《道の橋》に貸した分の金額を持った男がやって来た。

グループのメンバーがその様子に驚いていると、

更に男は《シーザス》を壊滅させたと男は言い、《シーザス》のリーダーを殺したと報告してきたのだ。


「報告は以上です。またの利用お待ちしています」


深々と紳士のような礼をし男は帰っていった。

そして、そのことが他のグループにも知れ渡り、試しにと利用するグループが増えていった。


一年もしないうちにペーパーポリスの契約書は絶対のものとなっていった。

何よりの宣伝となったのが、約束を破られればどんな指定された条件も実行されるということだ。


「たとえそれが人の命であっても。ペーパーポリスの契約書は破れば、条件道理に人を平気で殺すだろうね。…ふぅ。」


小包はひと通り静流にコチラ側の常識をしゃべり終え、

わざとらしく額の汗を拭うふりをする。

静流は静流で、メモをし、難しい表情をしていた。


「で!取引には殆どと言っていいほど仲介人が用意されるんだ。取引には無関係の人間がね。」


「赤の他人ってことですか?」


「まあ、そんな所だよ。どこのグループにも所属してないような人間だね。これは取引を平等に進めるためにあるんだ。

まあ、グループに所属してても仲介人はできるけど、

少なくともその取引するグループ同士、どちらとも関係がない人間が仲介をするんだよ。

知り合いが仲介をすると贔屓(ひいき)が起こってしまうことがあるからね。

でね!その仲介人っていうのが、風宮くんってわけ!彼は今、どのグループにも、入っていないソロのギフト持ちなんだよ」


「で、俺らはグループやギフト関係の仕事を持っていく仕事売りね」


自分の説明が始まったことに犬は端末を、いじるのをやめ、

二人のそばに歩み寄ってゆく。


「えーと、改めてよろしくね。静流君、これから先会うことも多くなるだろうし。」


「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


「そんなに改まらなくてもいいよ」


カッチコチの返答に対して優しく対応する犬、それをみて小包は見た目は兄弟みたいだなぁーと思ったが、口に出すと風宮が怒るだろうなと思い口には出さない。


「風宮君はね〜、とりかく人と話すのが上手なんだよ。

彼がこなす仲介はすっごくスムーズだし、誰とだって仲良くなれちゃうんだよ。まるで魔法みたいにね。

とっても、とぉーってもお喋り上手さんなんだよ。」


「魔法‥?」


わざとらしく両手を広げながら言う小包に対して、風宮は笑いながらも小包を睨みつけて「お世辞はやめてくださいよ」と言う

それを、全く気にせず笑顔の小包。

二人の張り詰めた雰囲気に半泣きであわあわと両手を降って、どうしたものかと静流は困ってしまった。


「そろそろ暗くなってきちゃったし、今日はこの辺で帰ろっかな。

契約書今渡すけど、すっごい高い物だから無くさないでよね。

本当なら取引するグループのどっちかに持っててもらいたいんだけどね。

相手が信用ならないからってこっちに押し付けられちゃったんだ。ほんとに気をつけてね。それじゃあ僕らはこれで」


契約書を手渡しられると犬はそれを丸くたたみショルダーバックの隠しポケットにしまっていく。 


その後夕食がまだな二人は先に帰っていってしまった。

少したつとビルの下から『ラーメン奢ってあげよっか?』『ホントですか?!』と二人の声が聞こえてくる


(仲の良ろしいことで)


しまったものの、

どんなものかとまた取り出してマジマジと見てしまう

契約書はB4ほどの大きさで、黄色っぽい色をしている

賞状のように紙の周りに植物のイラストがついていて、記入欄がいくつかある。


(これ一枚で今は何百万だもんなぁー。)


自分は今、好きな物がいくらでも買える程の、価値があるものを持っていると思うと、緊張とその雰囲気の楽しさに、浸ってしまう。

契約書の代償を書く欄に人の命がかかる場合、契約書の値段は跳ね上がる。この契約書ではそこまでの取引は、できないが、取り立てくらいはしてくれるだろう。


主にB4のサイズの契約書は物やお金の交換や、売り買い、貸渡しをするものだ。

人を殺したり、犯罪に手を染めることのできる契約書は、噂では

折り紙くらいのサイズしかなく特殊な方法でしか記入されている文字を見ることはできないらしい。


(一度見てみたいけど、さすがに犯罪に関わるわけにはいかないからどうしようもないな。下手をすれば今回の仲介で僕が犯罪者になるかもしれないわけだし)


もう一度同じところに契約書をしまい、周りに誰もいないか、念のため確認し、家へ向かう。

警戒をしつつ、人道りの多い道を選んでいく。


一応自分は今、何百万もするものを持ち歩いているのだ、

グルーブ関係の人間がもし知ったら自分からそれを奪おうとするかもしれない。

それほどまでに契約書は価値あるものになっていた。


帰っているとショルダーバックが振動しているのに気づいた。

それが、端末の電話を知らせるものだと知り、すぐに取り出す。

知り合いからだったためできるだけ早く家に戻りたかった犬は出るか迷ったが、今回は出ることにした。


何故なら表示されていた名前が千草だったからだ。

しょうもないメールはよく来るが、意味のない電話はしてきたことはなかった。


(あいつから電話なんて珍しいな。殆どメールでやりとりするのに)


「もしもし?」


「よう。今どこ?」


どこか元気のない千草の声に違和感を感じた。


(何かあったのかな?)


「町田らへんだよ。ドーナッツ屋の近くを歩いてる。

何かあったの?電話なんて珍しいじゃないか」


「今日の帰りにさ、お前の友達だって奴が話しかけてきたんだよ」


「えっ?」


高校に入り、犬は仲の良い人間は千草達だけにしていた。

最近は、仲介の仕事のため情報が必要になり、

ほかの人間とも関わりを持ったが、自分から友達だと名乗るような知り合いがいただろうか?


(いや…一人いたな)


「そいつの名前は分かる?」


なんとなく答えは分かっていたが、一応聞いてみる。

できればそうであっては欲しくないと思いながら。


『確か…羽野山諦等(はのやまあきら)っていってたな。

なんつーのかな、変なやつだったよ。

初対面なのに俺らの名前とか知ってるし』


「‥‥そう。ああ、今はもうそこまで関わりはないよ」


予想道理の答えを返され、嫌な気分になるが、

それを悟らせないように言葉を返す。


「それじゃあ。気をつけてね。」


「お前こそ気おつけろよな」


「うん、ありがと。じゃあ学校で」


ピッと電話を切り人混みの中でに立ち止まる

千草が電話を掛けてきた理由は、犬が心配だったからだ。

正確には回りくどくそいつとは関わらないほうがいいと言う忠告でもあったのだが、

その話を聞いて犬は全くその思いを聞き入れない行動をした。


端末に前に、電話帳から消した電話番号を入力していき

しばらくしてプルルルルという音が右耳に響いた。

その時彼の口元は笑っていなかった。

怒っているのか、何を思っているのかはわかならなかったが、

犬に今話しかけようものならば、ただじゃすまない、

ともいえるほど殺気立っているのは誰でもわかった。

少しして、相手が電話に出た音がした


「もしもし?僕だけど」


「やあ!久しぶり!数年ぶりじゃない?!どうたの電話なんて?」


相手の電話の主は犬の声を聞くなりテンションMAXで応答してくる

一方犬は冷静に、そして少し怒ったように話していた


「僕の‥‥知り合いにちょっかいを出したんだって?」


「知り合い、ねぇ?(笑)友達じゃぁないのかい?」



「質問かに答えて」


苛立つように答える犬に、電話の相手は陽気な対応を続ける。

そして、一つ違和感が生まれる

まるで、声が近づいてきているような気がするのだ。


「そー怒らないでよ。久しぶりの再開だよ」


「今、何処にいるの?」


(耳元からの声と違う方向からの声が聞こえる)


その声は後ろから聞こえていた。

犬が電話越しに声のした後ろに振り返るとそこには

今、電話を、しているはずの声主がいた

そして声主を睨みつけるようにして話しかける 


「久しぶりだね諦等」


「やあ!久しぶりだね犬!」

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